
対策はこの順に 順番を入れ替えない
配偶者がいる家庭は、もう1つ
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はじめての方へ ── このページに出てくる言葉(11語)
- 法定相続人
- 民法で決まっている、財産を受け取る人。配偶者は必ず入り、あとは子 → 親 → 兄弟姉妹の順です。
- 基礎控除
- 相続税がかからない枠。3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数。遺産がこの額を超えなければ、原則として申告も要りません。
- 家族信託・任意後見
- 判断できなくなったあとに備えて、財産の管理や売却を家族などに任せておく契約。どちらも元気なうちにしか結べません。
- 遺産分割協議
- 相続人の全員で分け方を決める話し合い。1人でも欠けるとまとまりません。
- 遺言書
- 分け方を先に決めておく書面。あれば、この話し合いそのものが要らなくなります。
- 遺留分
- 兄弟姉妹以外の相続人に必ず残る、最低限の取り分。足りない人はお金で請求できます。
- 小規模宅地等の特例
- 自宅などの土地の評価を最大8割下げる制度。使うには申告が必要です。
- 配偶者の税額軽減
- 配偶者が受け取る分は、1億6,000万円か法定相続分のどちらか多いほうまで相続税がかからない制度。
- 延納・物納
- 相続税を現金で一度に払えないときに、分割で納める(延納)/土地などの現物で納める(物納)方法。どちらも税務署の許可が要ります。
- 準確定申告
- 亡くなった人の、その年ぶんの所得税の申告。相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。
- 相続放棄・限定承認
- 借金も含めて一切引き継がない(相続放棄)/プラスの財産の範囲でだけ借金を引き継ぐ(限定承認)手続き。どちらも3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。
0相続対策とは何か全体の順番
相続対策というと、まず節税の話になります。ですが、順番が逆です。
家族が困るのは、税金の額ではありません。財産を分けられないこと、税金を払えないこと、相続人で喧嘩になることの3つです。
たとえば、財産が自宅1軒だけの家。相続税は1円もかかりません。それでも、子ども3人でどう分けるかで揉めます。売れば、住んでいる人の家がなくなるからです。
対策はこの順に
その前にまず数える。相続人は何人か、財産はいくらか
どれも、親が元気なうちにしかできません
節税が最後なのは、分け方と納税資金より先に節税から入ると、分けられない財産が増えるだけになるからです。現金を不動産に換えれば、相続税の計算上の金額は下がります。ですがその家は、3人では分けられませんし、納税のときすぐには売れません。
- 相続対策は「財産の分け方 → 納税資金 → 節税」の順
- 相続税額がゼロの家庭でも、財産が分けられなければ揉めます
- 相続税の節税だけを考えると、家族で揉めたり、財産が分けられないトラブルが増えがちです
1相続人を知る現状の把握
相続人の人数と財産の総額を数え、相続税がかかるライン(基礎控除)を超えるか確かめます
対策の前に、次を調べます。
- 誰が相続人か──戸籍をたどって確定します。前妻との間の子や養子が出てくることがあります
- 何がいくらあるか──預貯金・不動産だけでなく、生命保険金も対象です。借入金は引きます
- 基礎控除を超えるか。下の式で判定します
基礎控除額の出し方
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
遺産の総額が、この額を──
注意 特例(配偶者の税額軽減・小規模宅地等)で税額が0円になる家庭も、申告はします。申告して初めて、特例が使えるからです。
相続人が3人なら、基礎控除は4,800万円です。遺産がこの範囲におさまるなら、相続税はかからず、節税を考える必要もありません。それでも、分け方の備え(遺言と生命保険)は必要です。税金がかからない家庭でも、分け方では揉めるからです。
2認知症のリスクを考える対策できる期間
親が元気なうちに着手します。判断できなくなると、遺言も贈与も売却も止まります
3つの対策に入る前に、期限の話をします。相続対策の期限は、亡くなる日ではありません。親が認知症などで「判断できなくなる日」です。
判断できなくなると、遺言を書くことも、贈与も、不動産を売ることも止まります。代わりの人を家庭裁判所が付ける制度(成年後見)はありますが、本人の財産を守るための制度なので、相続対策のための売却や贈与は原則できません。
判断できるうち
- 遺言を書く・書き直す
- 生前贈与をする
- 不動産を売る・買う
- 家族信託・任意後見を組む
- 法人をつくる・借入をする
×
この5つが、すべて止まります
成年後見をつけても、できるのは財産を守る管理だけ。対策のための贈与や売却はできません。
この境目は、ある日突然きます。
だから、対策は親が元気なうちに始めます。備えの契約(家族信託・任意後見)も、元気なうちにしか結べません。
もっと詳しく(1本)
3財産の分け方を考える分割対策
財産をどう分けるかを決めて、必要に応じて保険を使います。遺言書は必ず書きます
3つある対策の、1つ目です。相続でいちばん多い揉め事は、税額ではなく誰が何を取るかで起きます。とくに不動産は、切って配れません。
そのまま配る現物分割

やり方土地は長男、預金は次男、と物ごとに配る
弱点金額がそろわず、不公平になりやすい
1人が取り、現金で払う代償分割

やり方家を取る人が、他の相続人に現金を渡す
弱点家を取る人に、渡す現金が要る
売って分ける換価分割

やり方売って現金にしてから分ける
弱点売った利益に税金がかかる。買い手が見つかるまで進まない
全員の名義にする共有

やり方売らずに、全員の共有名義にする
弱点売るには全員の同意が要る。次の相続で持ち主がさらに増える
分け方を決めたら、必ず遺言書にしておきます。遺言書があれば、相続人どうしの分け方の話し合い(遺産分割協議)そのものが不要になります。
家を取った人が他の相続人に現金を渡すなど、現金が足りないときに使うのが生命保険です。保険金は受取人のものとして扱われ、話し合いの対象になりません。
もっと詳しく(2本)
4相続税が払えるか確認納税資金対策
10か月以内に現金で払えるかを数え、足りない分を生命保険などで先に用意します
対策の2つ目、納税資金です。相続税は10か月以内に、現金でまとめて納めるのが原則です。
不動産オーナーが困るのはここです。財産の大半が土地と建物で、納税額に見合う現金がありません。しかも土地はすぐには売れません。
払うお金の出どころ──この順で確かめる
- 1手元の現金・預貯金まず、これで足りるかを数える
- 2生命保険金500万円×法定相続人の数まで相続税がかからない(相続税法12条)
- 3財産を売って現金にする10か月の期限に間に合うか。売った利益にまた税金がかかる
- ここから下は、税務署に認めてもらう最後の手段
- 4税務署に分割払いを認めてもらう(延納)担保を入れ、利息(利子税)を払う
- 5不動産などの現物で納める(物納)条件が厳しく、何で納めるかの順番も決まっている
生命保険が2番目なのは、非課税の枠に加えて、受取人が1人で請求でき、分け方が決まる前でも現金にできるからです。
5相続税に対策する節税対策
分け方と納税資金の目処が立ってから、生前贈与と生命保険を基本に、評価の引き下げ・法人化を検討します
対策の3つ目が節税です。基本は生前贈与と生命保険の2つ。不動産オーナーはそこに、評価の引き下げと法人化を加えます。
生前贈与基本

生きているうちに渡して、減らします
例年110万円まで非課税の贈与(暦年贈与)
注意相続人への贈与は、亡くなる前7年分が足し戻される
生命保険基本

「500万円×法定相続人の数」まで非課税です
例預金を一時払いの終身保険に換える
注意健康状態や年齢で、入れないことがある
評価を下げる+α

税金計算のもとの金額を下げます
例自宅の土地の8割減(小規模宅地等の特例)、賃貸アパート
注意条件が細かく、申告しないと使えない。買って下げる手は、2027年から5年ルールに注意(下記)
法人化+α

財産がこれ以上増えるのを止めます
例家賃収入を資産管理会社に移す
注意設立・運営のコストと時間がかかる
このほかに、お墓や仏壇を生前に買っておく手もあります(相続税のかからない財産。相続税法12条)。
2027年1月以後の相続からは、亡くなる前5年以内に買った・建てた賃貸不動産が時価で評価されます(5年ルール)。買って評価を下げる手は、取得から5年たたないと効かなくなります。
不動産に絞った節税(土地の評価・特例・贈与)は大家の相続税に、法人化の進め方は不動産法人化の全体像に続きます。
もっと詳しく(8本)
62回目の相続も考える二次相続対策
1回目と2回目の相続税を合計して、配偶者にどれだけ渡すかを決めます
配偶者が相続する分には大きな非課税の枠があり、少なくとも1億6,000万円までは相続税がかかりません(配偶者の税額軽減。相続税法19条の2)。強力なので、1回目の相続では配偶者に多く渡したくなります。
ですが、その配偶者もいずれ亡くなります。2回目の相続では相続人が1人減るぶん基礎控除も減り、この非課税の枠も使えません。1回目で軽くした分が、2回目で戻ってきます。
2回の相続を、合計で考える
1回目親の一方が亡くなる
配偶者の非課税の枠(1億6,000万円)が使えるので、税は軽くなりやすい
2回目残った親が亡くなる
配偶者の枠は使えず、相続人が1人減って基礎控除も縮む。税は重くなりやすい
1回目で配偶者に寄せて軽くした分は、2回目で戻ってきます。2回分の合計が小さくなる渡し方を選びます。
判断は1回目と2回目の合計で行います。孫に直接渡す手もありますが、孫が相続でもらうと相続税は2割増しです(相続税法18条)。
もっと詳しく(1本)
7実際に相続が起きたら期限のある手続き
3か月(相続放棄)・4か月(準確定申告)・10か月(申告と納税)の順に動きます
ここからは相続が起きた後の話です。期限順に動きます。
- 7日以内死亡届
- 3か月相続放棄・限定承認過ぎると放棄できなくなる
- 4か月準確定申告亡くなった年の所得税
- 10か月相続税の申告と納税現金一括が原則
相続した不動産の名義変更(相続登記)は2024年4月から義務です。知った日から3年以内に申請します。
いちばん急ぐのは3か月です。相続放棄を考えるなら、3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。その前に財産を売ったり使ったりすると、相続を受け入れたとみなされて放棄できなくなります(民法921条)。全体像が見えるまで、換金や名義変更に手をつけないことです。
10か月は申告だけでなく、納付の期限でもあります(相続税法27条・33条)。分け方の話し合いがまとまらなくても、期限は延びません。
ここから先は生前対策ではなく、手続きの話になります。進め方は相続手続きの全体像に、期限の順にまとめました。相続した不動産を売るところまで進むなら、不動産売却の全体像に続きます。
もっと詳しく(5本)
まず、今日できること
- 相続人が何人かを数える。戸籍は市区町村の窓口でも、郵送でも取れます
- 財産をざっくり書き出して、3,000万円+600万円×人数と比べる。超えるかどうかで、その先が変わります
- 分け方の希望を、一度でいいので言葉にする。決まっていれば、あとは順に進みます
ここまでが入口です。1つでも決まれば、残りは1 相続人を知るから順に進められます。
自宅や賃貸物件など、不動産を持つ家庭を想定しています。登場する事例はすべて架空のモデルケースです。制度は2026年7月時点のものです。
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