相続税の土地の値段は、路線価に面積を掛けたところで終わりません。その土地が「どういう形で、どう道路に接し、どこまで自由に使えるか」によって、評価は下がります。下がる条件は財産評価基本通達に列挙されています。この記事では、条件ごとに「どういう土地か」と「なぜ下がるか」の2点だけを整理します。
※本記事は一般的な仕組みを解説するものです。登場する事例・金額はすべて架空のモデルです。個別の税務・法務相談ではありません。
→ 相続対策の全体像は 相続対策の全体像 にまとめています。
この記事でわかること
- 路線価かける面積は出発点にすぎず、土地の条件で補正が入る仕組み
- 形が悪い土地・間口が狭い土地・奥行が極端な土地が下がる理由
- 道路づけは下げる方向と上げる方向の両方があること。無道路地・私道・セットバックと、角地・二方路線の違い
- がけ地・高低差・騒音・災害区域といった、土地そのものの事情による減額
- 面積が大きい土地と、都市計画で使い方が制限された土地の扱い
- 自分の土地に当てはまりそうな条件を見つけるチェックリスト
1. 路線価かける面積は「標準的な土地」の値段
相続税で土地をいくらと数えるかは、国税庁の財産評価基本通達に沿って決まります。市街地なら、道路に付けられた路線価(1平方メートルあたりの価額)を使う路線価方式です。この計算のしかたは 実家の土地は相続税でいくら にまとめています。
ここで押さえておきたいのは、路線価はその道路に面する標準的な形の土地を想定した価額だということです。現実の土地は、三角だったり、間口が狭かったり、道路より2メートル低かったりします。標準との差を埋めるために、通達は補正のしかたを条文の形で並べています。
補正には方向が2つあります。
| 方向 | 代表例 | 通達の呼び方 |
|---|---|---|
| 下げる | 形が悪い、間口が狭い、道路に接していない、がけがある、面積が大きい | 補正率を掛ける(不整形地補正率・がけ地補正率・規模格差補正率など) |
| 上げる | 2つの道路に接している(角地・裏表の2面) | 加算率を足す(側方路線影響加算率・二方路線影響加算率) |
評価を動かす2つの方向(財産評価基本通達15から24-7をもとに作成)
この記事は下げる側を中心に扱いますが、上げる方向があることは先に知っておいてください。「角地は使いやすいから評価が下がるはず」という思い込みは逆です。角地は評価が上がります。
2. 形が悪いと下がる──不整形地・間口・奥行
不整形地(通達20)
どういう土地か。四角ではない土地です。三角地も含まれます。旗のように細い通路の先に敷地が広がる旗竿地、道路に対して斜めに切れている土地、途中でくびれている土地などが当たります。
なぜ下がるか。同じ面積でも、形がいびつだと建物を建てられる範囲が減り、使えない隅が出るからです。通達は、不整形の程度・位置・地積の大小に応じた不整形地補正率を掛けると定めています。補正率は、路線価図の地区区分と地積区分の組み合わせで決まります。
間口が狭い土地(通達20-4)
どういう土地か。道路に接している辺(間口)が短い土地です。奥に広くても、入口が細ければ間口が狭い土地になります。
なぜ下がるか。建築基準法などで、建物を建てるには道路に一定の長さ以上接している必要があります。間口が狭いと、建てられる建物や車の出入りが制約されます。通達は間口狭小補正率表を掛けると定めています。
奥行が長すぎる・短すぎる土地(通達15・20-4)
どういう土地か。間口に対して奥行が極端に深い土地(うなぎの寝床)と、逆に奥行がほとんどない浅い土地です。
なぜ下がるか。奥に行くほど道路から遠く、使い勝手が落ちます。浅すぎる土地は、そもそも建物が納まりません。通達は、奥行距離に応じた奥行価格補正率(通達15)と、間口に対して奥行が長い場合の奥行長大補正率(通達20-4)を定めています。
【モデル事例】同じ200平方メートルでも、間口10メートル・奥行20メートルの四角い土地と、間口4メートル・奥行50メートルの細長い土地では、後者に間口狭小と奥行長大の補正が重なります。面積が同じでも、評価額は同じになりません。
3. 道路づけで変わる──下げる側と上げる側
道路との関係は、下げる方向にも上げる方向にも効きます。まとめて見ます。
| 道路との関係 | どういう土地か | 評価への効き方 |
|---|---|---|
| 無道路地(通達20-3) | 道路に接していない土地。接道義務を満たしていない土地も含む | 下がる。通路を開設する場合の通路部分に相当する価額を、評価額の40%の範囲内で控除する |
| 私道(通達24) | 自分の土地のうち、通路として使われている部分 | 下がる。通常の評価額の30%で評価する。不特定多数の人の通行の用に供されているときは評価しない |
| セットバックが必要な土地(通達24-6) | 建築基準法42条2項の道路に面し、建て替えのときに道路敷きとして提供しなければならない部分がある土地 | 下がる。提供する必要がないものとした場合の価額から、一定の割合を控除する |
| 角地(通達16) | 正面と側方に道路がある土地 | 上がる。側方路線影響加算率を加える |
| 裏表の2面が道路(通達17) | 正面と裏面に道路がある土地 | 上がる。二方路線影響加算率を加える |
道路との関係と評価への効き方(財産評価基本通達16・17・20-3・24・24-6をもとに作成)
実務で見落とされやすいのは私道です。自宅やアパートの敷地から公道までの通路部分が自分名義になっているケースは珍しくありません。通達は、私道の用に供されている宅地は通常の評価額の30%と定め、さらにその私道が不特定多数の人の通行の用に供されているときは評価しないとしています。宅地と同じ単価で数えていると、その分だけ多く申告します。
セットバックも同じです。幅4メートル未満の道に面した古い住宅地では、建て替えのときに道路の中心線から一定の距離まで敷地を後退させる必要がある土地が多くあります。その部分は将来使えなくなるので、評価が下がります。
4. 土地そのものの事情で下がる──がけ地・高低差・騒音・災害区域
がけ地等を有する宅地(通達20-5)
どういう土地か。敷地の一部ががけになっていて、通常の用途に使えない部分がある土地です。
なぜ下がるか。その部分に建物を建てられないからです。通達は、宅地の総地積に対する、通常の用途に供することができないと認められる部分の地積の割合に応じて、がけ地補正率を掛けると定めています。がけの割合が大きいほど下がる、という作りです。
土砂災害特別警戒区域内にある宅地(通達20-6)
どういう土地か。土砂災害防止法にもとづく土砂災害特別警戒区域(いわゆるレッドゾーン)に、敷地の一部または全部が入っている土地です。
なぜ下がるか。この区域では建築物の構造規制などがかかり、自由に建てられません。通達は、区域内となる部分の地積の割合に応じて特別警戒区域補正率を掛けると定めています。指定の有無は自治体のハザードマップや都道府県の公表資料で確認できます。
利用価値が著しく低下している宅地(国税庁タックスアンサーNo.4617)
どういう土地か。付近の宅地の利用状況と比べて、利用価値が著しく低下していると認められる土地です。国税庁は次を挙げています。
- 道路より高い位置にある宅地または低い位置にある宅地で、その付近の宅地に比べて著しく高低差のあるもの
- 地盤に甚だしい凹凸のある宅地
- 震動の甚だしい宅地
- 上記以外で、騒音、日照阻害、臭気、忌み等により取引金額に影響を受けると認められるもの
なぜ下がるか。同じ路線価の道路に面していても、実際には安くしか売れないからです。この場合、利用価値が低下していないものとして評価した価額から、低下していると認められる部分の面積に対応する価額の10%を控除した価額で評価できるとされています。
5. 広さと法律の制限で下がる
地積規模の大きな宅地(通達20-2)
どういう土地か。面積の大きな宅地です。基準は地域で分かれます。
- 三大都市圏では500平方メートル以上
- 三大都市圏以外の地域では1,000平方メートル以上
ただし、次に当てはまるものは除かれます。
- 市街化調整区域にある宅地(都市計画法34条10号・11号にもとづき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域を除く)
- 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域にある宅地
- 指定容積率が400%(東京都の特別区では300%)以上の地域にある宅地
- 通達22-2に定める大規模工場用地
さらに、路線価地域にあるものについては、普通商業・併用住宅地区と普通住宅地区にあるものだけが対象です。倍率地域にあるものは、地積規模の大きな宅地に当たれば対象になります。
なぜ下がるか。広い土地を戸建て用地として売るには、道路を通したり区画を割ったりする費用と、売れない部分が出るからです。通達は、地積の規模に応じた規模格差補正率を掛けると定めています。
容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地(通達20-7)
どういう土地か。1つの敷地が、容積率の違う2つ以上の地域にまたがっている土地です。用途地域の境目にある土地で起こります。
なぜ下がるか。敷地全体で建てられる延べ面積が、正面の道路側の容積率だけで考えたときより小さくなるからです。通達は、地区区分ごとに定めた「容積率が価額に及ぼす影響度」を使って計算した割合を控除すると定めています。
都市計画道路予定地の区域内にある宅地(通達24-7)
どういう土地か。都市計画で道路を通すと決まっている区域に、敷地の一部または全部が入っている土地です。実際の工事はまだ始まっていなくても該当します。
なぜ下がるか。将来収用される前提の部分には、恒久的な建物を建てにくいからです。通達は、地区区分・容積率・その土地に占める予定地部分の割合の組み合わせで補正率を定めています。予定地に入っているかどうかは、市区町村の都市計画課や都市計画情報の閲覧サービスで確認できます。
6. 自分の土地を見直すチェックリスト
ここまでの条件を、確認しやすい順に並べます。当てはまりそうなものがあれば、その根拠になる資料をそろえて税理士に渡してください。
まず地図と図面で確認すること
- 1形はきれいな四角か三角・旗竿・くびれがあれば不整形地。公図と測量図で見る
- 2間口は狭くないか道路に接している辺の長さを測る。接道義務に足りているかも確認する
- 3間口に対して奥行が深すぎないか細長い土地は奥行長大の補正が入りうる
- 4通路部分が自分名義になっていないか私道は30%評価。不特定多数の通行に使われていれば評価しない
現地と役所で確認すること
- 1前の道は幅4メートル以上あるか2項道路ならセットバックが必要な部分がある
- 2道路と敷地に大きな高低差はないか周りの土地と比べて著しい高低差なら10%の減額を検討する
- 3がけ・急斜面で使えない部分はないかがけ地補正の対象になりうる
- 4土砂災害特別警戒区域に入っていないかハザードマップと都道府県の指定状況で確認する
- 5面積は500平方メートル以上か三大都市圏は500、それ以外は1,000が入口。用途地域と容積率も見る
- 6都市計画道路の予定地に入っていないか市区町村の都市計画図で確認する
評価が下がる条件のチェックリスト
複数当てはまることはよくあります。間口が狭くて奥行が長い旗竿地が、さらにがけを抱えている、といった重なり方をします。通達の作りは、当てはまる補正を順に掛けていく形になっています。
なお、ここまでは土地そのものの条件の話です。土地の評価には、この上に別のレイヤーが重なります。
- 使い方による減額。自分の土地にアパートを建てて貸していれば貸家建付地、他人に土地を貸していれば貸宅地として、さらに評価が下がります。→ 大家の相続税
- 評価が出たあとの特例。自宅や賃貸物件の敷地は、小規模宅地等の特例で評価額そのものを一定面積まで減額できます。→ 自宅の土地が最大8割減
順番としては、土地の条件で評価額を出し、使い方で下げ、最後に特例で下げます。自分で概算する手順は 土地の相続税評価を自分で出す にまとめています。
まとめ
- 路線価は標準的な形の土地を想定した価額。現実の土地との差は通達の補正で埋めます
- 形が悪い・間口が狭い・奥行が極端だと下がります(通達15・20・20-4)
- 道路づけは両方向。無道路地・私道・セットバックは下がり、角地と裏表2面の道路は上がります。私道は通常の評価額の30%で、不特定多数の人の通行に使われていれば評価しません(通達24)
- がけ地と土砂災害特別警戒区域は面積の割合に応じて下がります(通達20-5・20-6)。著しい高低差・騒音・日照阻害などは10%の減額ができるが、路線価が既に考慮している場合は対象外(国税庁タックスアンサーNo.4617)
- 三大都市圏500平方メートル以上、それ以外1,000平方メートル以上は地積規模の大きな宅地の入口。用途地域と容積率で除外があります(通達20-2)。都市計画道路の予定地に入っている部分も下がります(通達24-7)
- 条件を見つけるところまでが大家の仕事。補正率の当てはめは資料をそろえて税理士へ
次に読む:実家の土地は相続税でいくら/土地の相続税評価を自分で出す/自宅の土地が最大8割減/大家の相続税/相続対策の全体像
出典
- 財産評価基本通達15(奥行価格補正)・16(側方路線影響加算)・17(二方路線影響加算)・18(三方又は四方路線影響加算)
- 財産評価基本通達20(不整形地の評価)・20-2(地積規模の大きな宅地の評価)・20-3(無道路地の評価)・20-4(間口が狭小な宅地等の評価)・20-5(がけ地等を有する宅地の評価)・20-6(土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価)・20-7(容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価)
- 財産評価基本通達24(私道の用に供されている宅地の評価)・24-6(セットバックを必要とする宅地の評価)・24-7(都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価)
- 財産評価基本通達 付表1から9(奥行価格補正率表・側方路線影響加算率表・二方路線影響加算率表・地積区分表・不整形地補正率表・間口狭小補正率表・奥行長大補正率表・がけ地補正率表・特別警戒区域補正率表)
- 国税庁タックスアンサー No.4609「地積規模の大きな宅地の評価」(三大都市圏500平方メートル以上・それ以外1,000平方メートル以上、除外される宅地、対象となる地区)
- 国税庁タックスアンサー No.4617「利用価値が著しく低下している宅地の評価」(高低差・地盤の凹凸・震動・騒音等による10%の減額)
- 相続税法22条(評価の原則)、建築基準法42条(道路の定義)・52条(容積率)、都市計画法4条・8条・34条、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律9条
- e-Gov法令検索・国税庁ウェブサイト(確認日:2026年8月7日)
※補正率の数値と当てはめ方は、地区区分・地積・測り方によって変わります。財産評価基本通達は改正されることがあり、本記事で触れた要件も動く可能性があります。どの補正が使えるか、いくら下がるかは土地ごとに判断が分かれますので、個別の判断は資料をそろえたうえで税理士にご相談ください。
「相続対策」の入口は2つあります
筆者(宍倉)が、オンライン90分の無料モニターを募集中です。事前のヒアリングをもとに資料をこちらで用意し、当日は一緒に眺めながら話します。
参加費は無料です。枠が埋まり次第、受付を終了します。