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財産の分け方を考える──決め方の手順と、遺言書・生命保険

公開 2026.08.04 / 更新 2026.08.07 相続対策 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)

相続でいちばん多い揉め事は、税金ではなく「誰が何を取るか」で起きます。とくに不動産は切って配ることができないので、放っておくと揉め事の中心になります。

結論はシンプルです。分け方は生前に決めて、遺言書に残す。分けるための現金が足りなければ、生命保険でつくる。この記事では、その決め方を手順で追います。

※本記事の人物・金額はすべて架空のモデル事例です。一般的な仕組みを解説するもので、個別の税務・法務相談ではありません。

→ 全体の流れは 相続対策の全体像。この記事は章3「財産の分け方を考える」の解説です。

この記事でわかること


1. 決め方の手順は4つ

  1. 財産の一覧を作る──不動産・預貯金・有価証券・保険・借入金。まず全体を1枚にします
  2. 誰に何を渡すかを割り振る──住んでいる人、継ぐ人、現金が要る人。事情に財産を合わせます
  3. 現金の過不足を確かめる──不動産に偏った人と現金の人で、金額の差が出ます。差を埋める現金があるか数えます
  4. 遺言書にする──決めた分け方は、書面にして初めて効力を持ちます

2で必ずぶつかるのが、不動産です。

2. 不動産は切れない──4つの分け方

不動産の分け方は4つしかありません。

分け方 やり方 弱点
そのまま配る(現物分割) 土地は長男、預金は次男、と物ごとに配る 金額がそろわず、不公平になりやすい
1人が取り、現金で払う(代償分割) 家を取る人が、他の相続人に現金を渡す 家を取る人に、渡す現金が要る
売って分ける(換価分割) 売って現金にしてから分ける 売った利益に税金がかかる。住む人は家を失う
全員の名義にする(共有) 売らずに全員の共有名義にする 売るにも貸すにも全員の同意が要る

共有は、決めるのを先送りにしているだけです。次の相続のたびに持ち主が増え、いずれ誰も動かせない不動産になります。4つの分け方の税金の違いは、別の記事で詳しく整理しています。→ 不動産は分けられない──現物・代償・換価・共有、4つの分け方と税金

3. 遺言書は2種類

決めた分け方は、遺言書にします。遺言書があれば、相続人どうしの話し合い(遺産分割協議)そのものが不要になります。実務でよく使うのは2種類です。

自筆証書遺言 公正証書遺言
作り方 本文を自分で手書き(民法968条。財産目録はパソコン可) 公証人が作る(民法969条)
費用 ほぼゼロ。法務局の保管制度は1通3,900円 公証人の手数料(財産額による)
弱点 形式ミスで無効になりやすい。自宅保管だと発見されない・家庭裁判所の検認が要る 手間と費用。証人2人が要る
検認 法務局保管なら不要 不要

自筆証書遺言は、法務局に預ける保管制度を使うと、紛失と検認の弱点を消せます。ただし内容が法的に有効か・遺留分を侵害していないかまでは、法務局は見てくれません。財産に不動産が多い場合は、公正証書遺言を軸に、作成段階で専門家に確認するのが安全です。

4. 遺留分だけは消せない

遺言があっても、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分という最低限の取り分が残ります(民法1042条)。

たとえば「全財産を長男に」と書いても、他の子は遺留分を現金で請求できます(遺留分侵害額請求。民法1046条)。請求されるのは財産を受け取った長男です。不動産しか受け取っていなければ、払う現金がありません。

だから遺言書は、遺留分を侵害しない配分にするか、侵害する場合は支払いの現金までセットで用意しておきます

5. 現金の不足は、生命保険でつくる

代償分割の代償金も、遺留分の支払いも、結局は現金の問題です。ここで使うのが生命保険です。

死亡保険金は受取人固有の財産として扱われ、遺産分割の話し合いの対象になりません(最高裁昭和40年2月2日判決)。「家を継ぐ長男を受取人にして、そのお金で次男に代償金を払う」という設計ができます。相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)もあります。→ 生命保険は相続対策の一手──500万円×法定相続人の非課税枠を使う

まとめ

→ 次に読む:相続税が払えるか確認──納税資金5つの出どころ(章4)


出典

※確認日:2026年8月4日。遺言書の作成・有効性の判断は弁護士・司法書士・公証人の領域です。遺留分や分け方で争いが見込まれる場合は、早めに弁護士へご相談ください。

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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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