ホーム › 不動産売却の全体像
不動産売却

不動産売却の全体像

玄関先で鍵を手渡す2人の手元と、奥に一戸建ての輪郭が薄く見える鉛筆の線画

押すと、その章に移動します読む目安 約11分・制度は2026年7月時点

はじめての方へ。このページに出てくる言葉(12語)
譲渡所得
不動産を売って出た利益。売った金額から、買ったときの費用(取得費)と、売るためにかかった費用(譲渡費用)を引いた残りです。
分離課税
給与や家賃の所得と合算せず、切り離して税額を計算するやり方。不動産を売った利益はこちらで計算します。
取得費
その不動産を買ったときの金額と、買うためにかかった費用の合計。建物は、使った年数の分を差し引きます。
譲渡費用
売るために直接かかった費用。仲介手数料や印紙代は入り、修繕費や固定資産税は入りません。
長期譲渡・短期譲渡
売った年の1月1日で所有期間が5年を超えていれば長期、5年以下なら短期。税率が2倍近く違います。
媒介契約
不動産会社に売却の仲介を頼むときに結ぶ契約。一般・専任・専属専任の3種類があります。
レインズ
不動産会社どうしが物件情報を共有する仕組み。専任で頼むと、会社には登録する義務があります。
登記識別情報(権利証)
その不動産の名義人であることを示す書類。決済の日に必ず要ります。再発行はできません。
固定資産税の精算金
引渡日を境に、その年の固定資産税を日割りで買主から受け取るお金。税金の精算ではなく、売買代金の一部として扱われます。
減価償却
建物の価値が、使った年数の分だけ減っていく計算。取得費は、この減った分を引いた金額になります。
概算取得費
買った値段がわからないときに使う決め方。売った金額の5%だけを取得費とみなします。
取得費加算
相続した財産を売るとき、納めた相続税の一部を取得費に足せる特例。相続税の申告期限の翌日から3年以内に売るのが条件です。

0売った金額より、手元に残る金額を先に見る不動産を売った税金は、給与と別に計算し、5年で税率が2倍変わる

家の模型と、硬貨の量が違う2枚の小皿が並んでいる線画

不動産を売るとき、多くの人はまず「いくらで売れるか」を気にします。手元に残る金額は、売値からいくら引かれるかで決まります。

売値から、まず仲介手数料などの費用が引かれます。そのあと譲渡所得税がかかります。この税額は、売った時期と、買ったときの資料が手元にあるかどうかで、同じ売値でも2倍近く変わります

売値を見て決める

  • 高く買う業者を探す
  • 早く売れるほうがいい
  • 税金は売れてから考える
  • 買ったときの資料は探さない

手取りを見て決める

  • 費用と税を引いて比べる
  • 年をまたぐかどうかを先に見る
  • 税額は売る前に概算する
  • 資料探しから始める

同じ物件・同じ売値でも、手取りは数百万円変わります。

税額はこうやって計算する

譲渡所得税は、給与や不動産所得とは切り離して計算します(分離課税)。譲渡所得は、次の式で計算します。

計算式

譲渡所得 = 売った金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除

この式のうち、売主が変えられるところ

増やせるもの取得費・譲渡費用・特別控除
動かせないもの売った金額

注意 このガイドの章5から7は、すべて売値から引ける金額を増やす話です。売値を上げる交渉より、引ける金額を増やすほうが確実に手取りが増えます。

1いくらで売れるかを調べるいくらで売れるかは、成約価格、公的な価格、査定の3つで確かめる

やること

成約価格で相場を調べます。査定額と売出価格は基準にしません

家の模型に虫眼鏡をかざしている線画

まず相場を調べます。査定額は売れる値段ではないので、相場の基準には使いません。

査定額は「この値段で売り出しましょう」という提案です。媒介契約を取りたい会社ほど高い数字を出すことがあります。高すぎる値段で売り出すと、問い合わせが来ないまま数か月が過ぎ、結局は値下げします。

見るべき3つの数字

成約価格基準にする

開いた台帳の上に家の模型が載っている線画

実際に売れた値段

どこで国土交通省の不動産情報ライブラリ、レインズ・マーケット・インフォメーション

売出価格

掲示板に3枚の紙が画鋲で留められている線画

いま売りに出ている値段

どこで不動産ポータルサイト

公的な価格

無地の証明書1枚と、その脇に置かれた角印の線画

いちばん低い目安

どこで路線価、固定資産税評価額

成約価格を基準にします。売出価格は売主の希望額で、実際に売れた値段とは違います。

賃貸中の物件は、値段の付き方が違います。買うのは投資をする人で、立地や間取りよりも利回りで判断します。空室が多い状態で売ると、利回りが下がるので値段も下がります。

2いつ売るかを決める売却の手取りは、売値から取得費、費用、税金、残債を引いて決まる

やること

売る年の1月1日で所有期間が5年を超えるか確かめます。超えないなら年をまたぎます

卓上カレンダーの紙を1枚めくる手元と、脇に置かれた家の模型の線画

売ると決めたら、次は時期を決めます。売る時期で、手取りがいちばん大きく変わります

譲渡所得の税率は、所有期間が5年を超えているかどうかで大きく変わります。

税率が変わる条件

所有期間が5年を超えているか

売った年の1月1日時点の所有期間は

5年を超える20.315%(長期譲渡)
5年以下39.63%(短期譲渡)

注意 所有期間は、売った年の1月1日で判定します。取得日から5年を超えていても、その年の1月1日時点で5年以下なら短期になります。内訳は長期=所得税15%・住民税5%、短期=所得税30%・住民税9%(いずれも復興特別所得税を加算)。

1月1日で判定した例

たとえば2021年6月に買った物件を2026年8月に売ったとします。買ってから5年2か月が経っています。ところが判定するのは2026年1月1日時点で、その日ではまだ4年7か月です。短期譲渡になります

この物件を2027年に売れば長期です。同じ売買で、税率は39.63%から20.315%に下がります。譲渡所得が2,000万円なら、税額の差はおよそ390万円です。

要点
  • 売った年の1月1日で判定します
  • 取得日は原則として引渡日です。契約日を使える場合もあります
  • 相続で取得した物件は、亡くなった人の取得日と取得費を引き継ぎます(所得税法60条1項)
  • 年末に売る話が出たら、まず所有期間を確かめます

相続した物件は所有期間を引き継ぐので、親が長く持っていたなら相続直後に売っても長期になります。ただし相続の特例には、3年という短い期限があります(章7)。

もっと詳しく(1本)

3仲介を頼む契約を選ぶ仲介を頼むときは、媒介契約の3種類を知ってから決める

やること

3種類から選びます。専任にするならレインズの登録証明書を受け取ります

握手する2人の手元と、脇に立つ無地の小さな看板の線画

不動産会社に仲介を頼むときは、媒介契約を結びます。3種類あり、他社にも頼めるかどうかと、会社側の義務が違います。

1社だけに任せる契約ほど、会社の報告とレインズ登録の義務は重くなります。1社に任せるなら、会社がその義務を果たしているかを自分で確かめます。

一般媒介

複数社に頼める

家の模型の手前に無地の名刺が3枚扇形に並ぶ線画
  • 自分で買主を見つけてもよい
  • レインズ登録の義務なし
  • 報告義務なし
  • 各社の本気度は下がりやすい

専任媒介

1社のみ

家の模型の手前に無地の名刺1枚と鍵1本が置かれた線画
  • 自分で買主を見つけてもよい
  • 7日以内にレインズ登録
  • 2週間に1回以上の報告
  • 契約期間は3か月以内

専属専任媒介

1社のみ・自己発見も不可

家の模型に無地の木札が紐で1枚だけ結ばれている線画
  • 自分で買主を見つけても通せない
  • 5日以内にレインズ登録
  • 1週間に1回以上の報告
  • 契約期間は3か月以内
1社に任せるときは「囲い込み」を確かめます。その会社が売主と買主の双方から手数料を取るために、他社からの問い合わせを断っていることがあります。レインズの登録証明書を受け取り、自分の物件が載っているかを確認します。

仲介手数料

売買代金が400万円を超える場合の上限は、売買代金×3%+6万円+消費税です。これは上限で、この金額より低くすることもできます。

売買代金が800万円以下の物件には、2024年7月から別の上限があります。会社は、通常の上限を超えて33万円(30万円+消費税)まで受け取れます。空き家や地方の物件を安く売るときは、会社がこの額を先に説明し、売主が合意してから契約します。

4引き渡しまで進める売買契約から引き渡しまで、売主は書類と精算を確かめる

やること

権利証と買ったときの契約書をそろえます。固定資産税の精算金は売買代金に含めて計算します

鍵と、ひもで綴じた無地の契約書の線画

買主が決まってからの流れです。売買契約を結び、手付金を受け取り、後日の決済で残代金と引き換えに登記を移します。

契約から決済までは、1か月前後あきます。その間に、書類と、住み替え先や入居者への連絡をそろえます。

そろえる書類

賃貸中のまま売る場合、貸主の立場は買主に移ります。敷金を返す義務も一緒に移るので、預かっている敷金は決済のときに買主へ渡します。

固定資産税の精算金は、税務上は売買代金の一部です。引渡日を境に日割りで買主から受け取るお金で、税金の精算ではありません。譲渡所得の収入金額に含めて計算します。

建物の消費税

個人が自宅を売る場合、消費税はかかりません。ただし賃貸事業として使っていた建物を売る場合は、建物部分が課税の対象になります。売った年の課税売上が1,000万円を超えると、原則として2年後から消費税を納める側になります。住宅の家賃だけなら消費税はかかりませんが、建物を売った年だけ課税売上が1,000万円を超えることがあります。

もっと詳しく(2本)

5取得費を確定する買った値段がわからないと、取得費は売値の5%になる

やること

買ったときの契約書と領収書を探します。見つからないと、取得費は売値の5%だけになります

開いた蛇腹式の書類ホルダーから、古い契約書を1枚抜き出している線画

ここからは税額の話です。取得費を決める資料は、売ったあとでは集められません

取得費とは、その不動産を買ったときの金額と、買うためにかかった費用の合計です。仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、印紙代なども入ります。

建物の取得費は、使った年数の分だけ減る

土地は買った値段がそのまま取得費になりますが、建物は違います。使った年数の分だけ価値が減ったものとして、減価償却費を差し引いた金額が取得費になります。土地と建物を一括で買っている場合は、契約書の内訳や固定資産税評価額の比で分けます。

資料が見つからないとき

買った値段が分からないと、取得費は売った金額の5%だけになります。3,000万円で売れた物件の取得費が150万円になると、譲渡所得は売値とほぼ同じ額になります。長期でも税額は500万円を超えます。

資料が見つからないことは、とくに親から相続した物件で起きます。相続では亡くなった人の取得費を引き継ぐので、親が何十年も前に買ったときの契約書を探します。

相続した物件なら、納めた相続税の一部を取得費に足せます(取得費加算。章7)。期限は相続が起きた日から3年10か月です。手続きの全体は相続手続きの全体像にまとめました。

見つからないときに当たる先
  • 売買契約書・領収書・住宅ローンの契約書
  • 通帳の入出金記録、住宅ローンの返済予定表
  • 購入時のパンフレット、新聞折込チラシ
  • 抵当権設定登記の債権額(借入額の手がかり)
  • 市街地価格指数などによる推計(税務署が認めない場合もある)

資料探しは、親が元気なうちにやっておくといちばん確実です。

6譲渡費用を計算する売るために直接かかった費用が、譲渡費用になる

やること

仲介手数料・印紙代・測量費・立退料など、売るために直接かかった費用の領収書を集めます

クリップで留めた無地の紙片の束の線画

譲渡費用は、売るために直接かかった費用です。入れ忘れると税額が増えます。

譲渡費用になるもの

  • 仲介手数料
  • 売買契約書の印紙代
  • 売るために行った測量費
  • 売るために建物を壊した費用
  • 入居者に払った立退料
  • より有利な条件で売るために解除した契約の違約金

譲渡費用にならないもの

  • 修繕費・固定資産税など、維持管理の費用
  • 売却代金の取立てにかかった費用
  • 抵当権抹消の登記費用
  • 引越し費用
  • 相続登記の費用(取得費に入る場合はあります)

売るために直接かかった費用かどうかで判断します。

もっと詳しく(1本)

7使える特例を調べる売却の特例は4つあり、3,000万円控除には3年の期限がある

やること

居住用3,000万円控除・空き家特例・取得費加算のどれが使えるか確かめます。相続の特例は3年で使えなくなります

4つある引き出しのうち1つだけが開いている木の整理箱の線画

譲渡所得から直接引ける特別控除があります。条件に当てはまるのに使わないと、税額はそのまま高くなります。

3,000万円の特別控除自宅

一戸建ての模型と、その前に置かれた鍵が1本ある線画

住んでいた家なら、3,000万円まで引けます

根拠租税特別措置法35条

期限住まなくなってから、おおよそ3年後の年末まで

10年超所有の軽減税率自宅

年輪の見える切り株の上に家の模型が載っている線画

3,000万円控除のあと、さらに税率が下がります

中身6,000万円以下の部分が14.21%に(同31条の3)

条件売った年の1月1日で所有期間10年超

空き家の3,000万円控除相続

雨戸を閉めた古い平屋の模型と、玄関先の箒の線画

親が一人で住んでいた家を相続して売るときに使えます

中身譲渡所得から3,000万円まで引けます(同35条3項)。条件が細かく決まっています(下の一覧)

期限相続から、おおよそ3年後の年末まで

取得費加算相続

積んだ3つの木のブロックに、4つ目を手が載せようとしている線画

納めた相続税の一部を、取得費に足せます

中身その財産に対応する分を加算(同39条)

期限相続税の申告期限の翌日から3年以内

空き家特例と取得費加算は、どちらか有利なほうを選びます。どちらも相続から約3年で使えなくなるので、相続した不動産を売るかどうかは、この期限までに決めます。

空き家特例の主な条件

主な条件
  • 昭和56年5月31日以前に建てられた家屋であること
  • 区分所有建物(マンション)でないこと
  • 亡くなった人が、亡くなる直前まで一人で住んでいたこと
  • 相続してから売るまで、住居・貸付け・事業に使っていないこと
  • 売った金額が1億円以下であること
  • 耐震基準を満たすようにするか、建物を取り壊して売ること
取り壊しの期限は2024年に変わりました。2024年1月1日以後に売る場合は、耐震改修または取壊しを売った年の翌年2月15日までに行えば足ります。同じ改正で、相続人が3人以上いる場合の控除額は1人あたり2,000万円になりました。

ここまでは、利益が出たときの話です。売って損が出たときの特例もありますが、5年を超えて持っていた自宅に限られます。買い換える場合と、売った代金でローンを返しきれない場合に使えます。損は給与などと相殺でき、引ききれない分は3年繰り越せます(措法41条の5・41条の5の2)。賃貸用の物件は対象外です。

もっと詳しく(1本)

8税金を申告して納める不動産を売ったら、翌年3月15日までに分離課税で申告する

やること

翌年2月16日から3月15日までに申告します。税額がゼロでも、申告しなければ特例は使えません

木の郵便受けに封筒を差し入れている手元の線画

不動産を売った年の翌年、確定申告をします。期間は2月16日から3月15日です。給与だけで年末調整が済んでいる人も、売った年は自分で申告します。

特別控除を使って税額がゼロになる場合でも、申告しなければ特例は使えません。税額がゼロでも申告します。

申告のときに添える主な書類
  • 譲渡所得の内訳書
  • 売ったときの売買契約書の写し
  • 買ったときの売買契約書・領収書の写し
  • 仲介手数料などの領収書
  • 特例を使うなら、その要件を示す書類(住民票、登記事項証明書など)
税金のほかに、翌年の保険料が増えます。特別控除を引いたあとの譲渡所得は、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の算定に含まれます。所得税・住民税を払い終えたあと、保険料の通知で驚くことがあります。売却した年のお金の使い道は、翌年の保険料まで見て決めます。

売却は、相続対策賃貸経営の最後の場面です。税額を決める期限は、売ると決めるより前から始まっています。章2の1月1日と、章7の3年です。この2つは早めに確かめます。

もっと詳しく(2本)

まず、今日できること

  1. 買ったときの売買契約書と領収書を探します。見つかるかどうかで、税額が数百万円変わります
  2. 買った日を調べて、売る年の1月1日で5年を超えるか確かめます。登記事項証明書か権利証に書いてあります
  3. 成約価格で相場を見ます。国土交通省の不動産情報ライブラリと、レインズ・マーケット・インフォメーションで調べられます

3つとも、売ると決める前にできます。順に読むなら1 いくらで売れるかを調べるから始めます。

この記事の前提

個人が居住用または賃貸用の不動産を売る場合を想定しています。登場する事例はすべて架空のモデルケースです。制度は2026年7月時点のものです。

宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

不動産売却の相談はこちら

読んで残った疑問を、そのまま送ってください。「自分の場合はどうか」に税理士が答えます。

上に戻る