
オーナーになった日にやること
1年の終わりにやること
押すと、その章に移動します読む目安 約13分・制度は2026年7月時点
はじめての方へ ── このページに出てくる言葉(13語)
- 敷金
- 入居者から預かっておくお金。退去のときに、滞納した家賃や入居者がつけた傷の分を差し引いて返します。売買や相続で貸主が変わっても、返す義務は新しい貸主に移ります。
- 普通借家・定期借家
- 期間が来ても自動で続く契約(普通借家)と、期間が来たら確定的に終わる契約(定期借家)。定期借家は、書面での契約と事前の書面説明が要件です。
- 管理委託・自主管理
- 募集・入金の管理・入居者からの連絡を管理会社に任せる形(管理委託)と、大家が自分でやる形(自主管理)。
- サブリース
- 管理会社が建物を一括で借り上げ、入居者に又貸しする形。「家賃保証」「一括借り上げ」と呼ばれます。
- 成約賃料
- 実際に契約が決まった家賃。募集広告に出ている「募集賃料」とは別の数字です。
- 広告料(AD)
- 部屋を決めてくれた仲介会社に、大家が仲介手数料とは別に払う費用。家賃の1か月分などで決めます。
- 原状回復
- 退去のときに部屋を元に戻すこと。普通に住んでできた傷みや、時間の経過による古さは入居者の負担になりません。
- 家賃保証会社
- 入居者が家賃を払えないときに、代わりに立て替える会社。連帯保証人の代わりに使われます。
- 極度額
- 連帯保証人が負う上限の金額。個人が保証人になる契約では、これを書面で決めていないと保証そのものが無効になります。
- 更新料
- 契約を更新するときに入居者が払うお金。契約書に定めがあってはじめて請求できます。
- 事業的規模
- 貸している規模が一定以上かどうかの判定。目安は「独立家屋おおむね5棟、貸室おおむね10室」です。
- 青色申告特別控除
- 帳簿をきちんとつけると所得から引ける枠。65万円・55万円・10万円の3段階があります。
- 免税事業者・インボイス
- 消費税を納めなくてよい事業者(免税事業者)と、消費税の請求書のしくみ(インボイス)。インボイスの登録をすると、免税事業者でも納める側になります。
0賃貸経営とは何をする仕事か賃貸経営の仕事は、お金と人の管理と、建物の管理の2つ
大家の仕事は2つです。建物を守ることと、お金を守ることです。
建物は放っておけば傷みます。お金は、入ってこない月があり、想定外に出ていく月があります。この2つを毎年まわし続けるのが賃貸経営です。買った日も、建てた日も、相続した日も、そこが終わりではありません。
よくあるやり方
- 利回りの数字で判断する
- 持ったら終わりだと思っている
- 入居者を「数」として見る
- 管理会社に任せきりにする
経営としてのやり方
- 手取りと出ていく金で判断する
- 持ってからが始まりだと考える
- 退去の理由を1件ずつ見る
- 任せても、数字は自分で見る
同じ物件でも、まわし方で手取りは変わります。
このガイドは、その1年のまわし方を起きる順に並べたものです。章3から章7までが毎年くり返す一巡で、章8で1年を数え、章9で次の一手を決めます。
- 大家の仕事は、建物を守ることとお金を守ることの2つ
- 章3から章7までが、毎年くり返す一巡になります
- 買っても、建てても、相続しても、やることは同じ
もっと詳しく(1本)
1物件の状態を書類で押さえる物件の書類は、1物件1ファイルにまとめて残す
賃貸借契約書・入居者名簿・敷金の預り一覧など9点をそろえる。登記の名義も自分に変えておく
買った人も、建てた人も、相続した人も、初日にやることは同じです。いま何がどうなっているかを、紙で押さえます。
賃貸中の物件を手に入れると、貸主の立場もそのまま移ってきます(民法605条の2)。入居者との契約は、こちらが知っていようといまいと続きます。そして敷金を返す義務も、一緒についてきます。
そろえる書類
- 賃貸借契約書(全室)賃料・期間・特約・更新条件。普通借家か定期借家か
- 入居者名簿連絡先。連帯保証人か保証会社か
- 家賃の入金履歴滞納がないか、いつから遅れているか
- 敷金の預り一覧返す義務の総額
- 管理委託契約書誰が何をやっているか。料率と解約の条件
- 図面・確認済証・検査済証建物の素性。売るときにも要る
- 修繕の履歴次にどこを直すかの手がかり
- 火災保険の証券補償の範囲と満期
- 借入の返済予定表毎月いくら出ていくか
買ったなら所有権の移転登記、相続したなら相続登記が要ります。名義が前の持ち主のままだと、売ることも担保に入れることもできません。相続登記は2024年4月から義務になり、取得を知った日から3年以内に申請します(不動産登記法76条の2)。
相続で引き継いだのなら、名義のほかにも期限のある手続きが続きます。何をいつまでにやるかは相続手続きの全体像にまとめています。
2管理を任せるか、自分でやるか管理を任せるか自分でやるかは、手取りで比べる
年間の管理料を金額で出し、自分が使う時間と比べて決める
次に、管理を委託するか自主管理にするかを決めます。管理料の相場は賃料の5%前後です。この5%を「高い」と見るかどうかは、手取りで比べてはじめて決まります。
任せる相手を選ぶときは、賃貸住宅管理業の登録がある会社かを確かめます。管理する戸数が200戸以上の会社には、国への登録が義務づけられています(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)。
管理委託
賃料の5%前後

- 募集・審査・契約を任せる
- 入金の管理と督促も
- 入居者からの連絡窓口
- 自分の時間は使わない
自主管理
管理料は出ない

- 募集は仲介に個別に依頼
- 入金の確認は自分で
- 夜中の電話も自分に来る
- 時間が費用になる
見るべき数字
率ではなく額で

- 年間の管理料はいくらか
- 自分の時間は何時間か
- 空室期間は短くなるか
- 滞納の督促を自分でやれるか
戸数が少なく近所に住んでいるなら自主管理も現実的です。逆に、遠方の物件や戸数が多い物件を自主管理にすると、空室期間と滞納で、管理料以上のお金を失います。
もっと詳しく(3本)
3空室を埋める空室が埋まらない原因は3つ。家賃を下げるのは最後
募集賃料ではなく成約賃料で家賃を決める。下げる前に、掲載・部屋・広告料の3つを先に潰す
ここから毎年の一巡に入ります。最初は募集です。
募集では、家賃をいくらにするかと、埋まらないときにどこを直すかを決めます。順番を逆にすると、直せたはずのものを家賃で埋め合わせます。
家賃を決める
基準は成約賃料であって、募集賃料ではありません。ポータルサイトに出ている金額は「その値段で出している」だけで、決まった値段ではありません。近隣で実際に成約した事例を、仲介会社から聞きます。
空室が1か月続くと、いくら減るか
空室の月も、返済や税金は出ていく
部屋がひと月空くあいだ、お金は……
注意 家賃8万円の部屋が3か月空けば24万円。この空室を、家賃を5,000円下げて埋めた場合、下げ幅は2年間で12万円です。空室期間と値下げ幅は、必ず金額で比べます。
埋まらないときの切り分け
やみくもに家賃を下げる前に、どこで止まっているかを分けます。
問い合わせが来ない

疑う掲載されていない。写真が悪い。条件で弾かれている
試す掲載状況の確認、写真の撮り直し、条件の緩和
内見はあるが決まらない

疑う部屋の状態、設備の古さ、におい
試すクリーニング、設備の入れ替え、簡単な原状回復
そもそも案内されない

疑う仲介にとって優先順位が低い
試す広告料の見直し、仲介への説明
この3つを潰してから、最後に家賃を下げます。一度下げた家賃は、次の入居者にも引き継がれます。
入居者が部屋のどこを見て決めているかを知ると、募集条件も決めやすくなります。借りる側の見方は賃貸の部屋探しチェックリストにまとめています。
もっと詳しく(1本)
4入居者を選ぶ家賃保証会社は、連帯保証人の代わりに滞納した家賃を立て替える
家賃保証会社を使う。普通借家か定期借家かを、将来の建て替え予定から決める
申込みが入りました。この入居審査で、この先1年から数年が決まります。埋めたい気持ちが強いほど、審査は甘くなります。
誰の保証で貸すかと、どの型の契約で貸すかを決めます。
家賃保証会社
いまの賃貸では、連帯保証人よりも保証会社が主流です。理由は民法の改正にあります。個人が連帯保証人になる契約では、あらかじめ極度額(上限額)を書面で定めないと保証そのものが無効になりました(民法465条の2、2020年4月施行)。
上限を決めれば、取れる金額はそこまでになります。結果として、滞納リスクを人ではなく会社に持たせる形が定着しました。
2025年10月には住宅セーフティネット法が変わり、単身の高齢者などが借りやすくなる仕組みが増えました。見守りが付いた住宅を自治体が認定する制度と、国が家賃債務保証業者を認定する制度です。年齢を理由に断る前に、これが使えるかを仲介会社に聞く手もあります。
契約の型
普通借家
- 期間が来ても自動で続く
- 更新を断るには、貸主側の正当な理由が要る(借地借家法28条)
- 入居者は長く住みやすい
- 出ていってほしくても出せない
定期借家
- 期間が来たら確定的に終わる(借地借家法38条)
- 書面での契約と、事前の書面説明が要件
- 手続きを外すと普通借家になる
- 家賃はやや下がりやすい
建て替えや自己使用の予定があるなら、定期借家を検討する場面です。
もっと詳しく(1本)
5家賃を回収する家賃の滞納は、最初の2週間で連絡と記録を済ませる
入金日の翌日に気づける仕組みを作り、日付の残る方法で督促する
毎月の入金確認と、遅れたときの最初の一手です。ここだけは、様子を見てはいけません。
滞納は、放っておくほど増えます。1か月の滞納を放っておくと2か月になり、3か月になったころには、入居者側に払う力が残っていません。回収できる金額は、動き出しが遅れるほど減ります。
- 入金日の翌日には気づける仕組みにしておく
- 保証会社があるなら、決められた期限内に通知する
- 連絡・督促は、日付が残る方法で行う
- 「そのうち払う」を口頭で受け入れない
少額訴訟でできること、できないこと
滞納家賃の請求には少額訴訟という手続きがありますが、条件があります。請求できるのは60万円以下の金銭の支払いに限られ、部屋の明渡しは対象外です(民事訴訟法368条)。
そして明渡しを求めるには、契約を解除できる程度に信頼関係が壊れていることが必要とされます。滞納が1か月あったからといって、すぐ出ていってもらえるわけではありません。だから、最初の1か月の動き方で結果が変わります。
6トラブルと修繕に対応する入居中のトラブルは、記録を残してから直す。直した費用は経費とは限らない
対応をいつ誰に何をしたかで記録に残す。直した費用は修繕費か資本的支出かを分ける
入居中に起きることへの対応です。人のトラブルも、設備の故障も、法定の点検も、放置すると退去が増えます。
どれも、起きてから調べていては間に合いません。先に手順を決めておきます。
騒音・ゴミ
入居者同士の揉めごとは、当事者の問題に見えて空室リスクに直結します。うるさい部屋があると、隣の入居者が出ていきます。対応は段階を踏み、いつ誰に何を伝えたかを記録に残します。
消防の点検
共同住宅には消防用設備等の点検と報告の義務があります。点検は半年ごとと1年ごとに行い、消防署への報告は共同住宅なら3年に1回です(消防法17条の3の3)。忘れられがちですが、火災が起きたときに責任を問われます。管理会社に任せている場合でも、周期と報告先は把握しておきます。
入居者が亡くなったとき
部屋の中の物を、大家の判断で片付けることはできません。亡くなった人の持ち物は相続人のものになるからです。国土交通省と法務省が2021年に示した「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を契約に組み込んでおくと、あらかじめ決めた人が片付けを引き受けられます。
直したときの費用は、経費か資産か
修繕では、税務上の扱いをいちばん間違えます。同じ「直した」でも、その年の経費になるものと、資産に計上して何年かに分けるものがあります。
修繕費(その年の経費)
- 元の状態に戻すための支出
- 通常の維持管理のための支出
- 1件20万円未満のもの
- おおむね3年以内の周期で行うもの
資本的支出(資産計上)
- 価値を高める支出
- 使用できる期間を延ばす支出
- 用途を変える工事
- 減価償却で少しずつ経費になる
全部を経費にしようとすると、税務署がこの区分で否認します。
どちらとも決めきれないときの目安もあります。1件60万円未満であるか、その建物の取得価額のおおむね10%以下であれば、修繕費として扱ってよいとされています(所得税基本通達37-12・37-13)。
もっと詳しく(4本)
7更新料と敷金を精算する敷金は、退去の立会いから返還まで6つの手順で精算する
入居前の状態を写真で残しておく。普通に使ってできた傷みの分は、敷金から引けない
更新と退去です。更新と退去での揉めごとは、ほとんどが敷金からいくら引くかで起きます。
引ける額は、契約書を交わした日と、鍵を渡した日で決まります。
更新料
更新料は当然にもらえるものではなく、契約書に定めがあってはじめて請求できます。取り決めがあいまいなまま何年も経つと、あとから請求しても通りません。契約書の条項は、更新の直前ではなく、オーナーになった日に確認します。
定めがあるときの有効性については、契約書にはっきり書かれていて、金額が高すぎるなどの事情がなければ有効、というのが最高裁の判断です(最高裁平成23年7月15日判決)。
原状回復と敷金
原状回復の範囲は民法に書かれています。入居者が戻す義務を負うのは自分がつけた傷や汚れであって、通常の使用でついた損耗や、時間の経過による古さは対象外です(民法621条)。
揉めないための手当ては、退去のときではなく入居のときにあります。入居前の状態を写真で残しておけば、そもそも争点になりません。
8帳簿をつけて申告する大家の所得税は、家賃から経費を引いた不動産所得にかかる
5棟10室を満たすか確かめ、複式簿記で記帳して期限内に申告する
1年が終わったら、その年のお金を数えます。帳簿をつけ、確定申告をします。
税額は、事業的規模にあたるかどうかと、消費税を納める側かどうかで変わります。
事業的規模かどうか
不動産の貸付けが事業的規模にあたるかどうかで、使える制度が変わります。判定の目安が、いわゆる5棟10室基準です(所得税基本通達26-9)。
事業的規模の目安
独立家屋 おおむね5棟 / 貸室 おおむね10室
貸している規模が、この目安に……
注意 控除の額は3段階です。複式簿記で記帳して期限内に申告すると55万円。そのうえでe-Taxで申告するか電子帳簿保存をすると65万円になります。規模を満たしても、帳簿がなければ10万円です。
消費税
居住用の家賃は消費税がかかりません(非課税)。一方、店舗や事務所の家賃、駐車場の一部は課税されます。住宅の家賃だけの大家は、消費税を納めない扱い(免税事業者)であることが多いのですが、店舗などを持つ場合や、建物を売った年は変わります。
納めるかどうかは、2年前の課税売上高で決まります。1,000万円以下なら、原則として納めなくてよい扱いです(消費税法9条)。ただし店舗や事務所を貸していると、借り手からインボイスの登録を求められることがあります。登録すると、1,000万円以下でも納める側になります。
もっと詳しく(3本)
9次の一手を決める賃貸経営の次の一手は、増やす、法人にする、売るの3つ
章8で出した手取りをもとに、増やす・法人化する・売るのどれかを決める
数え終わったら、次の一手を決めます。
どれを選ぶにしても、判断のもとは章8で出した手取りです。
増やす

いまの物件がまわっているなら、次を買います
目安判断材料は、章8で出した手取り
法人化する

家賃の受け取り先を法人に移します
目安分岐は売上ではなく所得。おおむね1,000万円
注意移すときのコストが重い。先に数えてから決める
売る

税率から売り時を逆算します
目安所有期間5年超なら、税率はおよそ39%から20%に下がる
注意判定は「売った年の1月1日時点」。年をまたぐかで税額が変わる
法人化の進め方は不動産法人化の全体像に、売り方と税金は不動産売却の全体像にまとめています。
まず、今日できること
- 賃貸借契約書と敷金の預り一覧を、部屋の数だけそろえる。足りない書類が、そのまま次の宿題になります
- 去年払った管理料を、1年分の金額で出す。率ではなく額にすると、任せ方の判断がつきます
- 空いている部屋があれば、先月の問い合わせ件数を仲介会社に聞く。件数がゼロなら、家賃ではなく募集の見せ方の問題です
ここまでが入口です。1つでも手が付けば、あとは1 物件の状態を書類で押さえるから順に進められます。
居住用の賃貸物件を持つ大家を想定しています。登場する事例はすべて架空のモデルケースです。制度は2026年7月時点のものです。
賃貸経営の相談はこちら
読んで残った疑問を、そのまま送ってください。「自分の場合はどうか」に税理士が答えます。
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