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うちは相続税がかかる?まず「3,000万+600万×人数」で確かめる

公開 2026.07.24 相続対策 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅建士/自主管理大家)

「うちに相続税って、かかるんでしょうか?」——相続の相談で、いちばん最初に聞かれる質問です。

結論から言うと、この問いは、たった一本の式で最初のあたりがつきます。

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

財産の合計がこの金額以下なら、相続税は原則かかりません。超えた分にだけ、相続税がかかります(根拠:LS-13 基礎控除/相続税法15条)。

※本記事の人物・金額はすべて架空のモデル事例です。一般的な仕組みを解説するもので、個別の税務相談ではありません。

→ 相続対策の全体像は 相続対策の進め方(12工程)。この記事は工程9「相続税がかかるか判定する」です。まず「かかるかどうか」を確かめ、かかりそうなら概算まで進みます。

この記事でわかること


1. まず、基礎控除を超えるかどうか

相続税は、亡くなった人(被相続人)の財産すべてにかかるわけではありません。「基礎控除」という非課税の枠があり、財産の合計がこの枠に収まれば、相続税はかかりません。

法定相続人の数 基礎控除の額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円
5人 6,000万円

人数が1人増えるごとに600万円ずつ枠が広がります。

たとえば——

【モデル事例】 田中さん(仮)は、東京郊外に自宅と賃貸アパート1棟を持っていました。相続人は妻と子ども2人の合計3人。基礎控除は 3,000万円+600万円×3人=4,800万円。財産の合計がこの4,800万円を超えるかどうかが、最初の分かれ目になります。

「うちは現金はそんなにない」という人でも、自宅や賃貸物件などの不動産を持っていると、あっさり超えることがあります。不動産は現金と違って金額が見えにくいので、ここで「かからないと思っていたのにかかった」が起きます。

土地の評価額の出し方は難所なので、別記事にまとめています。→ 実家の土地は相続税でいくら?路線価と倍率のはなし(工程8)


2. つまずきやすい「法定相続人の数」

基礎控除は人数で決まるので、「法定相続人が何人か」を間違えると、判定そのものがずれます。ここは細かいルールがあります。

誰が法定相続人になるか

基礎控除の人数で、とくに注意する3点

論点 基礎控除の人数への影響
相続放棄した人 放棄しても、人数には数える(放棄はなかったものとして計算)(相続税法15条2項)
養子 実子がいれば 1人まで、実子がいなければ 2人までしか数えられない(同項)
代襲相続の孫 代襲して相続人になった孫は、その分数える

「孫を養子にして人数を増やせば節税になる」という話を聞くことがありますが、基礎控除に数えられる養子の人数には上限があり、行き過ぎた養子縁組は否認されることもあります。節税だけを狙った形式的な縁組にはリスクが伴います(根拠:LS-04 総則6項)。

法定相続人の数え方だけを詳しく整理した記事も用意しています。→ 法定相続人の数え方(養子・代襲・放棄)


3. 「財産の合計」に足すもの・引くもの

基礎控除と比べる「財産の合計」は、通帳の残高や不動産の評価額を足すだけではありません。相続税では、これを 課税価格 と呼びます。ざっくり、次の足し算・引き算です(根拠:LS-03 相続財産の範囲)。

内容
+ 本来の財産 現金・預貯金・不動産・有価証券・自社株など
+ みなし相続財産 生命保険金・死亡退職金(それぞれ非課税枠を超えた分)
+ 生前贈与の一部 亡くなる前一定期間の贈与を持ち戻す
− 非課税財産 墓地・仏壇、保険金や退職金の非課税枠など
− 債務・葬式費用 借入金・未払い金・葬儀費用

ここで効いてくるのが、次の2つです。

この足し引きをした後の課税価格が、基礎控除を超えるかどうか。それが判定です。


4. 超えていたら、税額をざっくり出す

課税価格が基礎控除を超えていたら、次は「いくらくらいか」です。相続税の計算は少し独特で、いったん法定相続分で分けたと仮定して総額を出し、それを実際の取り分で割り振るという順番になります(根拠:LS-13 相続税の総額計算/相続税法16〜17条)。

手順

  1. 課税価格 − 基礎控除 = 課税遺産総額
  2. 課税遺産総額を、法定相続分で分けたと仮定して各人に振る
  3. 各人の金額に速算表をあてて税額を出し、合計する(=相続税の総額)
  4. 総額を、実際に取得した割合で割り振る
  5. 各人の事情(配偶者の税額軽減など)を加減する

相続税の速算表(相続税法16条)

法定相続分に応じた取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

【モデル事例のつづき】 田中さん(仮)の課税価格が8,000万円だったとします。基礎控除4,800万円を引くと、課税遺産総額は3,200万円。これを法定相続分(妻1/2・子1/4ずつ)で仮に分けると、妻1,600万円→「15%−50万円」で190万円、子は各800万円→「10%」で80万円ずつ。合計 350万円 が相続税の総額の目安です。ここから、実際の分け方や配偶者の税額軽減を反映して、各人の負担が決まります。

配偶者には「1億6,000万円か法定相続分まで非課税」という大きな軽減があります。ただし、ここで配偶者に寄せすぎると、次に配偶者が亡くなったとき(二次相続)に跳ね返るという落とし穴があります。→ 配偶者の税額軽減の使い方(工程11)/一次・二次の合計で考える(工程12)

また、自宅の土地は小規模宅地等の特例で評価が最大8割下がることがあり、これを使えるかどうかで税額が大きく変わります。→ 小規模宅地等の特例(工程11)


5. 「かからない」でも油断できない — 申告が必要なケース

最後に、間違えやすい点を1つ。

「基礎控除以下だから申告しなくていい」は、いつも正しいとは限りません。次のような場合は、税額がゼロでも申告が必要です。

これらの特例は、「申告することが適用の条件」になっているためです。「特例を使えば0円だから申告不要」と考えて申告しないと、特例そのものが受けられなくなることがあります。

判定の結果、微妙なライン(基礎控除の前後)にいる人ほど、専門家に一度あたりを確認してもらうのが安全です。


まとめ

次に読む:実家の土地は相続税でいくら?(工程8)法定相続人の数え方小規模宅地等の特例(工程11)相続税対策・完全ガイド(総論)

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出典

※基礎控除・速算表・非課税枠は本記事執筆時点(2026年7月)の制度です。生前贈与加算の7年化は令和6年1月以後の贈与から段階的に適用されます。特例の適用可否や具体的な税額は、財産の内容と分け方で変わります。判定が微妙な場合や特例を使う場合は、税理士にご確認ください。

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宍倉奎次郎
税理士 × 大家(宅建士・自主管理)
宍倉 奎次郎

宅建免許を持つ管理会社を自ら経営し、賃貸物件を自主管理。この記事も自分の実務手順をそのまま書いています。※一般的な情報提供であり、個別の判断は専門家にご相談ください。

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