『不動産書類の整理術』集めるべき書類も詳細解説

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不動産書類、本当に多いですよね。

賃貸借契約書、固定資産税の通知書、登記簿謄本、売買契約書、毎月の入金明細に経費の領収書……。

さらに、業者や役所から様々な書類が送られてきます。「あれ、あの書類どこへ行ったっけ?」と探しているうちに時間が過ぎていく。そんな経験、ありませんか?

今回は、多くのオーナー様が悩んでいる「書類の整理・ファイリング」について、私が実務で行っている方法をお話しします。

「整理整頓は苦手で……」という方も安心してください。特別なスキルは必要ありません。

一度整理してしまえば、あとは決まった場所に書類を入れるだけのシンプルな仕組みです。

最初だけ少し手間はかかりますが、この準備をしておくだけで、日々の不動産経営が驚くほどスムーズになります。


なぜ、不動産のファイリングが必要なのか?

具体的な整理方法の前に、なぜ私がこれほど「書類の整理」を推奨するのか、その理由をお伝えします。

単に部屋が綺麗になるから、ではありません。

1. 現状把握ができなければ対策もできない

不動産経営において、書類が整理されていない状態は、地図を持たずに歩いているようなものです。

自分の資産が今どうなっているのか。

どこに境界があり、どんな契約で貸していて、収益はどうなっているのか。

書類という「証拠」がないと、自分の立ち位置(現状)すら把握できなくなってしまいます。

自分が状況を把握できていなければ、当然、改善策も打てません。

さらに心配なのは、オーナーであるあなた自身が現状をわかっていなければ、残されたご家族はもっとわからないということです。

「ここってうちの土地だっけ?」

「契約書がないけど、この入居者さんはどんな条件で住んでいるの?」

もしもの時、ご家族が途方に暮れてしまわないよう、ファイリングで**「現在地を示す地図」**を作っておくことが大切です。

2. 書類がないと「損失」につながる

もう一つ、税理士・不動産オーナーとして痛感しているのは、**「書類の紛失=実害」**という事実です。

  • 税金が高くなる(契約書の紛失)将来、物件を売却する際、「購入時の売買契約書」がないと取得費を証明できず、税金が大幅に高くなることがあります。紙が1枚ないだけで、手元に残るお金が数百万円単位で変わってしまうのです。
  • 機会損失のリスク(検査済証の紛失)「ここにクリニックを入れたい」などの良い話があっても、建物が適法であることを証明する**「検査済証(けんさずみしょう)」**がないと、コンプライアンスの観点で契約できないケースがあります。

書類が整理されていないだけで、こうした「見えない損失」を被る可能性があるのです。


【ステップ1】家の中を捜索!なくてはならない「必須書類」

まずは、今お手元(自宅や事務所)にあるはずの書類を集めましょう。

これらは再発行が難しいものも含まれるため、非常に重要です。まずは「ある」か「ない」かを確認してください。

権利証(または登記識別情報通知)

いわゆる「権利証」です。平成17年以降は**「12桁の英数字が書かれた目隠しシール付きの書類(登記識別情報)」**に変わっています。

  • 注意点: これがないと、売却や借入の手続きがスムーズに進みません。
  • 保管について: ※目隠しシールが貼られているタイプや、用紙の下部が袋とじのように折り込まれているタイプがあります。 シールは剥がさず(袋とじは開けず)、番号を他人に見られないようにしてください。
  • ※重要※ この書類は「実印」と同じくらい重要です。普段使いのファイルには入れず、コピーをとったら原本はすぐに金庫等の安全な場所へ戻してください。 今回作るファイルには「コピー」を綴じます。

不動産売買契約書・重要事項説明書

物件を購入した時の契約書と説明書です。

  • 重要性: 先述の通り、これは税務上の**「取得価格」を証明する証拠**です。絶対に捨ててはいけません。
  • 活用法: 「重要事項説明書」には土地のルールや禁止事項が書かれています。近隣トラブルが起きた際、事実確認をするための重要な資料になります。

建物図面・建築確認済証・検査済証

建物が法律を守って建てられたことの証明書セットです。

  • 重要性: 特に**「検査済証」**が重要です。これがないと銀行融資がつきにくくなり、将来の売却時に不利になることがあります。
  • 設備図面: もしあれば「電気・ガス・水道などの配管図」も探してください。水漏れなどのトラブル時、これがあるだけで修理対応がスムーズになります。

固定資産税の課税明細書

毎年春ごろに役所から届く書類です。

  • 使い道: 単なる請求書ではなく、**「役所による物件の評価額」**が記載されています。
  • 保管について: 振込用紙だけでなく明細書も保管しましょう。コスト管理や確定申告の基礎データになります。

【ステップ2】調査資料を自分で揃える

手元の書類が揃ったら、次は不足している情報を集めます。

不動産の情報の多くは、誰でもネットや役所で数百円程度で取得可能です。一度自分で取得し、公的な記録を確認しておくことをおすすめします。

1. ネットで取得できる「法務局」関係の書類

法務局に行かなくても、**「登記情報提供サービス」**を使えばPDFで即時取得できます。

全部事項証明書(登記簿謄本)

土地と建物の「履歴書」です。

  • ポイント: 日本の不動産は「土地」と「建物」が別扱いです。戸建て等の場合は必ず両方取得してください。「乙区(おつく)」欄を見て、古い抵当権などが残っていないか確認しましょう。

公図(こうず)

土地の形や位置関係を示した地図です。

  • ポイント: 実際の見た目と公図の形がズレていることは珍しくありません。境界を確認するための基礎資料です。

地積測量図(ちせきそくりょうず)

土地の正確な面積や辺の長さが書かれた図面です。

  • ポイント: これが法務局に備え付けられている物件は、境界が明確であるため、売却時などに好材料となります。

2. 周辺環境を知るための「地図」関係の書類

法務局の図面だけでなく、市販の地図もあると便利です。

住宅地図・ブルーマップ

  • 住宅地図: 建物の名前や居住者名が入った地図。
  • ブルーマップ: 住宅地図に**「地番(ちばん)」**や用途地域を重ね合わせた地図。
  • メリット: 法務局で書類を取るには住所ではなく「地番」が必要です。ブルーマップがあれば、自宅や隣地の地番が一目でわかります。
  • 入手方法: ネット(ゼンリンのサービス等)やコンビニのマルチコピー機で、必要なエリアだけを1,000円〜2,000円程度で購入できます。

3. 役所で確認すべき書類

市役所や水道局などで確認できる資料です。

建築計画概要書・台帳記載事項証明書

もし「検査済証」が見つからなかった場合、役所の建築指導課などでこれらの書類を取得してください。検査済証の代わりとして、建物が適法であることを示す補完資料になります。

上下水道・ガス埋設管図

地面の下の配管図です。古い物件での水漏れトラブル等の際、これがあると無駄な掘削工事を防ぎ、修理費を抑えられる可能性があります。

都市計画図・前面道路図面

エリアの建築制限や、目の前の道路の種類(公道・私道など)を確認します。建て替えができるかどうかの判断に直結する重要な情報です。

4. 資産価値を確認する書類

自分の物件の評価額を知るための資料です。

路線価図(ろせんかず)

国税庁のサイトで見られます。相続税や贈与税を計算する基準となる価格です。

公示価格・地価公示の資料

国土交通省のサイトなどで確認できます。近隣の地価の目安として、資産価値を把握する参考になります。


【ステップ3】スッキリ整う「1物件1ファイル」の法則

資料が揃ったら、これらを整理します。 ここで一つ、鉄則があります。

「ファイルに入れるのは、すべて『コピー』です」

特に「権利証(登記識別情報)」や「売買契約書の原本」は、万が一ファイルごと紛失した時のリスクが大きすぎます。 原本は金庫へ。ファイルにはコピーを。 これを徹底した上で、以下の道具を用意してください。 …

不動産の書類はサイズがバラバラ(A3、B4、A4など)になりがちなので、以下の方法で統一することをおすすめします。

1. 用意するもの

  • A4リングファイル(厚手で丈夫なもの)
  • 透明なポケットリフィル
  • インデックスシール

書類に穴を開けず、全て「ポケット」に入れます。これなら図面も折って収納でき、小さな領収書も紛失しません。

【整理のヒント】

背表紙だけでなく、中のポケット一枚一枚にも「売買契約書」「固定資産税」などのラベルシールを貼っておくと便利です。目次代わりになり、取り出した書類を戻す場所も迷いません。

2. ルール:「1物件につき、1つのファイル」

複数の物件を1冊にまとめると混乱の原因になります。

「Aマンション」「Bアパート」「C駐車場」と、物件ごとにファイルを分けて作成してください。

3. 並べ方のルール:時系列で整理する

私が実践しているのは、**「基本→過去→現在→お金」**という順番です。

  • 第1章:基本情報(表紙の次)
    • 物件概要書、最新のレントロール、全部事項証明書(最新)、地図類
    • ここを見れば「現在の物件の姿」がすぐにわかります。
  • 第2章:過去(取得時の書類)
    • 売買契約書(コピー)、重要事項説明書(コピー)、建築確認済証(コピー)
    • ※権利証や契約書の原本は金庫へ。普段使いのファイルにはコピーを入れておきます。
  • 第3章:現在(運営・維持管理)
    • 賃貸借契約書、リフォーム履歴・見積書、保険証券
  • 第4章:お金(税金・評価)
    • 固定資産税通知書、路線価図、公示価格資料、決算書のコピー

このように並べておけば、税理士や銀行担当者との打ち合わせでも、必要なページをすぐに開くことができます。


まとめ:整理整頓は、経営の大切な基礎

不動産の書類整理は、単なる事務作業ではありません。

ご自身の資産を守り、リスクに備えるための大切な経営の基礎です。

  1. 家の中の重要書類を確保する
  2. 役所やネットで最新情報を補完する
  3. 1物件1ファイルで見やすくまとめる

まずは今週末、1つの物件だけで構いませんので、このファイルを作ってみてください。

情報が整理されることで、今まで見えていなかった物件の課題や価値に気づくきっかけになるかもしれません。

「昔の書類が見つからない」「書類の見方がよくわからない」といったことがあれば、お気軽にご相談ください。

同じオーナーという立場からも、現状の整理をお手伝いさせていただきます。


【著者のプロフィール】

宍倉(ししくら)

税理士・不動産会社代表・現役不動産オーナー。

「知識がないことで損をする人をゼロにする」をモットーに、難解な税務と不動産実務を、初心者にもわかりやすく翻訳して伝える専門家。自らも物件を保有・運営しているため、オーナーの悩みと痛みを誰よりも理解している。

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