家賃の入金日を過ぎても、振込がない。催促は気が引けるし、もう少し様子を見ようか。ここで2週間、3週間と過ぎていきます。
滞納で損を小さくする動き方は決まっています。最初の2週間で、保証会社の確認と本人への連絡と記録まで済ませます。買った人も、建てた人も、相続した人も、同じ手順が当てはまります。
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1. まず契約書を開いて、保証会社が付いているかを見る
入居者に電話をかける前に、賃貸借契約書を開きます。家賃保証会社が付いているかどうかで、最初の連絡先が変わります。
保証会社が付いている

最初の連絡先は、入居者ではなく保証会社になります
やり方保証委託契約の書類で報告の期限を確かめ、気づいたその日のうちに連絡します。以後の督促は保証会社が進めてくれることが多く、大家の負担は大きく減ります。
注意報告の期限を過ぎると、立て替え払い(代位弁済)を受けられないことがあります(「家賃保証会社は、連帯保証人の代わりに滞納した家賃を立て替える」)。
保証会社が付いていない

連帯保証人の連絡先を確かめてから動きます
やり方契約書の連帯保証人の欄と、そこに書かれた住所と電話番号がいまも生きているかを確かめます。
解決以後の連絡と督促は、大家か管理会社が自分で進めます。次の章から、その流れを説明します。
2. 動き方は、2週間、1か月、3か月で変わる
滞納の対応は時間との勝負です。全体の流れを先に置きます。
滞納に気づいてからの3つの区切り
この期間は目安です。本人と連絡が取れて支払いが再開すれば、途中で止めます。逆に、連絡が取れないまま日が過ぎるほど、回収も明渡しも遠のきます。
3. 最初の2週間で、連絡と支払日の約束と記録を済ませる
最初の連絡は、滞納に気づいた翌日までに入れます。うっかり忘れならその場で片づきますし、きちんと見ている物件だと伝われば、次の滞納の抑えにもなります。
2週間でここまで進める
口調は責めずに事務的にする。「入金の確認が取れていません。お忘れではないでしょうか」で足りる
約束の日を過ぎても入金がなければ、書面での督促に切り替えます。この時点では普通の督促状で足ります。連帯保証人がいれば、あわせて状況を知らせ、支払いを求めます。
4. 1か月を過ぎたら内容証明を送る。鍵の交換は違法になる
連絡を無視されます、約束が繰り返し破られます。そうなったら、回収と並行して契約解除の準備に入ります。
内容証明郵便で催告する

滞納額と対象月、支払期限、解除する旨を書いて送ります
やり方契約を解除するには、原則として支払いを求める通知(催告)が要ります(民法541条)。内容証明は、その催告をした証拠になります。
解除には信頼関係の破壊が要る

1か月や2か月の滞納では、解除は認められにくいです
理由判例は、貸主と借主の信頼関係が壊れたと言えるまで賃貸借を解除できないと考えています。実務では3か月分以上が1つの目安とされています。
鍵の交換と荷物の運び出しは違法になる

裁判を経ずに実力で部屋を取り戻すと、賠償を負います
注意契約書や保証会社の約款に「無催告で解除できる」「明け渡したものとみなす」と書いてあっても頼れません。この種の条項を無効とした最高裁の判断があります(令和4年12月12日判決)。
訴訟まで進むときは、目的で手段を使い分けます。住み続けている入居者に退去を求めるなら、明渡し訴訟を使います。少額訴訟は60万円以下のお金の請求で、原則1回の審理で判決が出ます。支払督促は金額の上限がなく書類審査で速く進みます。相手が異議を出すと通常訴訟に移ります。どちらもお金の判決が出るだけで、部屋は返ってきません。
5. もらっていない家賃にも、税金がかかる
不動産所得は、実際の入金ではなく、契約で決めた支払日を基準に収入を数えます。滞納している家賃も、その年の収入として申告します。
滞納中の家賃も、その年の収入になる

入っていなくても、支払日が来れば収入に数えます
やり方計上する時期は、契約で定めた支払日です(所得税基本通達36-5)。
5棟10室以上なら、貸倒損失にできる

回収できないと確定した額を、必要経費にできます
やり方おおむね5棟10室以上の事業的規模なら、貸倒損失として経費に落とせます(所得税法51条2項)。
それ以外の規模なら、計算し直す

収入に数えた金額を、なかったものとして計算し直します
やり方事業的規模でなければ、この扱いになります(所得税法64条1項)。判定は「5棟10室基準とは」で説明しています。
まとめ
- 最初に保証会社の有無を確かめます。付いていれば、その日のうちに報告します
- 本人への連絡は翌日までに事務的にします。支払う日を決めてもらい、やり取りを記録します
- 1か月をめどに内容証明郵便で催告し、契約解除の準備に入ります
- 解除の目安は滞納3か月分になります。鍵の交換や荷物の運び出しは違法で、逆に賠償を負います
- 滞納家賃も支払日基準で収入になります。回収不能が確定したら貸倒れの処理で取り戻します
まず、今日できること
- 入金の状況を通帳で確かめ、入っていない部屋の番号と月を書き出す
- その部屋の契約書を開き、保証会社の有無と、滞納したときの報告の期限を確かめる
- 連絡した日時、話した内容、相手が答えた支払日を書くメモの形を決めて、1件目から使う
次に読む:入居中のトラブルは、記録を残してから直す。直した費用は経費とは限らない/家賃保証会社は、連帯保証人の代わりに滞納した家賃を立て替える
出典
- 民法541条(催告による解除)
- 民事訴訟法368条以下(少額訴訟)、382条以下(支払督促)
- 所得税法51条2項(貸倒損失)、64条1項(回収不能の場合の所得計算の特例)、所得税基本通達36-5(不動産所得の収入計上時期)
- 最高裁令和4年12月12日判決(家賃債務保証業者の無催告解除条項等を消費者契約法10条により無効と判断)
※確認日:2026年9月3日。「3か月」などの期間は判例と実務からの一般的な目安で、個別の事情によって判断は変わります。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務・法務相談ではありません。契約解除と訴訟の進め方は弁護士の領域です。貸倒れの税務処理は税理士にご確認ください。
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