更新料は、法律で「払いなさい」と決められた金銭ではありません。賃貸借契約書に定めがあって初めて請求できるお金です。だから、更新料をめぐる問題はほとんどが契約書の書き方の問題に行き着きます。有効性の判断、法定更新になったときの扱い、収入に計上する時期まで、順に確認します。
※本記事は一般的な仕組みを解説するものです。登場する事例・金額はすべて架空のモデルです。個別の税務・法務相談ではありません。
→ 賃貸経営の全体像は 賃貸経営の全体像 にまとめています。
この記事でわかること
- 更新料の根拠は契約書だけで、法律に定めはないこと
- 更新料の条項がどこまで有効か(最高裁平成23年7月15日判決と消費者契約法10条)
- 合意更新と法定更新の違いと、法定更新になると次の更新日が来なくなる理由(借地借家法26条)
- 更新料と更新事務手数料の違い。誰が受け取り、誰が負担するのか
- 更新料をいつの年の収入にするか(所得税基本通達36-6)
- 満了前の段取りと、更新料を交渉材料に使うときの考え方
1. 更新料に法律の定めはない
民法にも借地借家法にも、更新料についての規定はありません。つまり、更新料は法律上当然に発生する金銭ではなく、賃貸人と賃借人の合意によって生まれるものです。
結論はここから出ます。賃貸借契約書に「契約を更新するときは、更新料として賃料の◯か月分を支払う」と書いてあって、初めて請求できます。書いていなければ、更新のたびに入居者と個別に交渉して合意を取るしかありません。更新の時期に「そういえば書いていなかった」と気づいても、その場から一方的に請求することはできません。
金額の水準についても、全国共通の相場はありません。地域差が大きく、慣行としてほとんど取らない地域もあります。自分の物件がある地域の募集条件がどうなっているかを見て決めることになります。周辺が更新料を取らない地域で自分だけ取ると、募集の段階で不利になります。
2. 更新料の条項はどこまで有効か
契約書に書いてあれば必ず有効か、というとそこには線があります。入居者が個人の場合、賃貸借契約は消費者契約法の適用を受けます。同法10条は、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合と比べて消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項であって、民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効とする、と定めています。
この点について、最高裁判所第二小法廷は平成23年7月15日、次のように判断しました。
賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料の支払を約する条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない。
最高裁判所第二小法廷 平成23年7月15日判決(平成22年(オ)第863号)の裁判要旨から。
実務に落とすと、押さえる点は2つです。
- 一義的かつ具体的に書く──「更新料として新賃料の1か月分」のように、金額の決まり方といつ払うのかが読んで一通りに定まる書き方にする
- 高額に過ぎない水準にする──賃料の額と、更新までの期間に照らして判断されます。更新の間隔が短いほど、同じ金額でも重く見られる方向に働きます
裏を返すと、書き方があいまいな条項や、賃料と期間に見合わない高額な設定は、争いになったときに持ちこたえられない可能性があります。金額を上げる方向の見直しを考えるときほど、契約書の文言と一緒に専門家に見てもらってください。
3. 合意更新と法定更新──期間の定めがなくなる
更新には2つの形があります。
| 合意更新 | 法定更新 | |
|---|---|---|
| 成立の仕方 | 期間満了の前に、賃貸人と賃借人が合意して新しい期間を定める | 更新をしない旨の通知がないまま満了日を迎え、法律の規定で更新したものとみなされる |
| 更新後の期間 | 合意した期間(2年など) | 定めがないものとされる |
| 書面 | 更新契約書や覚書を取り交わす | 取り交わさない |
借地借家法26条1項は、期間の定めがある建物賃貸借について、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知(または条件を変更しなければ更新をしない旨の通知)をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす、と定めています。そして、そのただし書が重要です。「その期間は、定めがないものとする」とされています。
期間の定めがなくなると、次の満了日が来ません。満了日が来ないということは、「期間満了ごとに更新料を支払う」という書き方の条項は、次に発動する場面がなくなります。ここが、法定更新になったときに更新料を請求できなくなりうる理由です。
契約書に、法定更新した場合の更新料の扱いを書いておく対応が実務では取られます。ただし、書けば必ず通るわけではありません。借地借家法30条は、更新等に関するこの節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは無効とすると定めており、結局は条項の書き方と金額が争点になります。
そもそも更新のない契約にしたいなら、定期借家という選択肢があります(借地借家法38条)。ただし、書面での契約と事前の説明が要件になっており、途中から切り替えるには入居者の合意が必要です。違いは 普通借家と定期借家、どちらで貸すか にまとめています。
4. 更新料と更新事務手数料は別物
更新のときに動くお金には、名前の似た2つがあります。混ざったまま管理会社に任せていると、思っていた額が入ってきません。
| 名目 | 受け取る人 | 定める書面 |
|---|---|---|
| 更新料 | 賃貸人(オーナー) | 賃貸借契約書 |
| 更新事務手数料 | 管理会社 | 管理委託契約書(オーナーが払う場合)、または賃貸借契約書や覚書(入居者が払う場合) |
名目・受け取る人・根拠になる書面の3点で切り分けます。
確認することは2つです。1つは、管理委託契約書に更新業務の対価がいくらと書かれているか。もう1つは、入居者が払う更新料のうち、いくらがオーナーに送金されるかです。「更新料1か月分をもらっているつもりが、送金されるのは半分だった」という食い違いは、この2つを読み合わせていないと起きます。
5. 税務──いつの年の収入になるか
更新料は不動産所得の収入金額に入ります。家賃と同じ扱いです。迷いやすいのは、いつの年の収入にするかです。
所得税基本通達36-6は、不動産等の貸付け(貸付契約の更新を含みます)に伴い一時に収受する頭金、権利金、名義書換料、更新料等について、収入すべき時期を次のとおり定めています。貸付けに係る資産の引渡しを要するものは引渡しのあった日、引渡しを要しないものは貸付けに係る契約の効力発生の日です。
継続して住んでいる入居者の更新では、あらためて部屋を引き渡すわけではありません。したがって、更新の効力が生じた日の属する年の収入になるのが原則です。入金日ではありません。
【モデル事例】12月20日に更新の効力が生じ、更新料の入金は翌年1月10日だったとします。この更新料は、入金の年ではなく、更新の効力が生じた年の不動産所得の収入に入れます。入居者の希望で2回に分けて受け取った場合も、収入にする年は変わりません。
消費税については、住宅として貸している部屋の更新料は、住宅の貸付けの対価にあたる部分として非課税になるのが原則です。店舗や事務所として貸している場合は課税されます。住宅と事業用で扱いが分かれる話は 大家の消費税 にまとめています。不動産所得の計算全体の流れは 大家の所得税 です。
6. 更新の段取りと、更新料をめぐる判断
更新は、満了日に向けて逆算して動きます。何か月前に何をするかは契約書の定めによって変わるので、まず自分の契約書を読むところから始めます。
満了に向けた段取り
- 1契約書を読み直す満了日、更新料の定め、更新の手続き、通知の期限。契約ごとに違うので毎回確認する
- 2更新の案内を出す更新後の条件、更新料の額、支払期限、更新事務手数料の有無を書面で示す
- 3合意書を取り交わす更新契約書か覚書に署名をもらう。期限までに返送がなければ連絡して追う
- 4入金と、あわせて確認するもの火災保険の更新、家賃保証会社の保証契約の更新、連帯保証人の状況の変化
手続きを放置したまま満了日を過ぎると法定更新になり、第3章で見たとおり期間の定めがなくなります。返送がないときに追いかける手間を惜しまないのは、そのためです。なお、賃貸人から更新を拒む通知を出す場合の時期は、満了の1年前から6か月前までの間と法律で決まっています(借地借家法26条1項)。更新の案内を出す時期そのものは契約書の定めによるので、自分の契約書の期限に合わせてください。
更新料を交渉材料に使うとき
更新料は、必ず満額を受け取るべきものではありません。周辺に空室が多い時期や、長く住んでいて滞納のない入居者が退去を検討しているときは、減額して住み続けてもらう判断もあります。退去されると、原状回復の費用と募集の費用がかかり、次が決まるまで家賃が入りません。更新料の額と、退去したときにかかる費用と空室期間を並べて比べてください。空室が埋まるまでの負担は 空室対策の進め方 にまとめています。
ただし、一度減額すると次の更新でも同じ扱いを求められやすくなります。今回限りの取り扱いにするなら、その旨を合意書に書いておきます。減額の理由と適用範囲を書面に残すことが、次の更新でもめないための備えになります。
まとめ
- 更新料に法律の定めはない。賃貸借契約書に書いてあって初めて請求できる
- 条項は、一義的かつ具体的に記載され、賃料と更新期間に照らして高額に過ぎない限り、消費者契約法10条によって無効とはいえない(最高裁平成23年7月15日判決)
- 法定更新になると期間の定めがなくなり(借地借家法26条1項ただし書)、次の満了日が来ないため、更新料の条項が発動しなくなりうる
- 更新料はオーナーが受け取るもの、更新事務手数料は管理会社が受け取るもの。根拠になる書面が違う
- 収入にする年は、入金日ではなく更新の効力が生じた日で決まるのが原則(所得税基本通達36-6)。相殺せず両建てで記帳する
- 満期の管理を放置すると法定更新になる。減額して住み続けてもらう判断もあり、その場合は今回限りである旨を書面に残す
出典
- 借地借家法26条(建物賃貸借契約の更新等)・28条(更新拒絶等の要件)・30条(強行規定)・38条(定期建物賃貸借)
- 消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
- 最高裁判所第二小法廷 平成23年7月15日判決(平成22年(オ)第863号、民集第65巻5号2269頁)
- 所得税基本通達36-6(頭金、権利金等の収入すべき時期)
- 国税庁タックスアンサーNo.1376「不動産所得の収入計上時期」
- 消費税法6条1項・別表第二第13号(住宅の貸付け)
- e-Gov法令検索・裁判所・国税庁ウェブサイト(確認日:2026年8月7日)
※更新料の条項が有効かどうか、法定更新後に請求できるかどうかは、契約書の文言と金額、更新の経緯によって個別に判断が分かれます。本記事は一般的な仕組みの解説です。契約書の見直しや更新時のトラブルについては、契約書を揃えたうえで専門家にご相談ください。
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