空室が続くと、家賃が入らないだけでなく、何から手をつければよいのかも分からなくなります。値下げか、リフォームか、広告料の上乗せか、迷います。買った物件も、建てた物件も、相続した物件も、迷うところは同じです。
順番さえ間違えなければ、費用はほとんどかかりません。原因を3つに切り分け、募集の出し方、部屋の状態、条件、家賃の順に手を打ちます。いちばん最後に家賃を下げます。
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1. 空室が1か月延びるたびに、家賃1か月分が消える
感覚ではなく、金額で見ます。架空のモデルで確かめます。
【モデル事例】家賃7万円の部屋が8戸あるアパート。満室なら年間の家賃収入は 7万円 × 8戸 × 12か月 = 672万円です。物件と金額は架空です。
1戸が空くと、年間の家賃収入はこう変わる

満室年間の家賃収入は672万円になります
8戸すべてに入居者がいる状態です。ここが比べるときの基準になります

1戸が3か月空く年間の家賃収入は651万円になります
満室との差は21万円になります。1か月空くだけでも665万円まで下がり、差は7万円になります
空室が1か月延びるたびに、この物件では7万円ずつ減ります。ここに、退去のたびの原状回復と募集の費用が乗ります。金額は部屋の傷み方と地域で変わるので、直近の実績を管理会社に出してもらいます。
2. 原因を3つに切り分ける
空室が長引く理由は、大きく3つに分かれます。どれに当たるかを、上から順に見分けます。
募集が届いていない

問い合わせが、ほとんど来ません
やり方掲載されているポータルサイトの数、写真の枚数、募集図面の記載を、自分で検索して見ます。
注意反響がほぼゼロのまま家賃だけ下げても、そもそも見られていないので何も変わりません。
内見で選ばれていない

問い合わせや内見はあるが、申込に至りません
やり方同じ家賃帯の競合物件を、実際に見に行きます。見送られた理由を管理会社に聞きます。
届いているかを先に確かめ、届いているのに決まらないなら選ばれているか、そこも問題がなければ家賃、という順に降りていきます。
3. 募集の出し方、部屋、条件、家賃の順に手を打つ
着手の順番は、費用が軽く、元に戻せるものからです。
空室に手をつける順番
先に2章で原因を切り分けてから動きます
この3つをやり切ってから、家賃を見直します。写真は居室だけでなく、水回り、収納の中、玄関、共用部、建物の外観まで撮ります。写真の無い場所は、見せられない場所と受け取られます。案内の前には窓を開けて換気し、全室に電球を入れ、各排水口に水を流しておきます。しばらく使っていないと封水が切れ、下水の臭いが上がってきます。
4. 家賃の値下げは、いちばん最後に回す
影響が1部屋にとどまらないので、値下げは最後に回します。近隣の成約家賃を調べた結果、自分の募集家賃が明らかに高いと分かったなら、下げるべきです。
一度下げた家賃は戻しにくい

次の募集も、下げた水準から始まります
問題値上げに転じるには、入居者の入れ替わりか、周辺の家賃相場が上がるのを待つことになります。
既存の入居者との差ができる

同じ間取りが、自分の家賃より安く募集されています
問題値下げの申し出や、退去のきっかけになります。募集の条件は、住んでいる人にも見えています。
収益で見た資産価値が下がる

買い手は、家賃収入から物件の値段を逆算します
例月3,000円の値下げは、年36,000円の減収です。利回り8%で評価する買い手から見れば、36,000円 ÷ 8% = 45万円の評価減にあたります。
5. 管理会社からは、4つの数字で報告を受け取る
賃貸住宅管理業者には、管理業務の実施状況などを定期的に委託者へ報告する義務があります(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律20条)。この報告を、感想ではなく数字で受け取ります。
| 聞く項目 | わかること |
|---|---|
| 掲載しているポータルサイトの名前と数 | 募集が見込み客に届く経路の広さ |
| 期間ごとの問い合わせ件数 | 募集の段階で止まっているかどうか |
| 期間ごとの内見件数 | 写真と図面が実物と合っているか |
| 申込件数と、見送られた理由 | 部屋で負けたのか、条件で負けたのか |
この4つがそろうと、2章の3つの原因のどれかに絞れます。募集には出しています、だけの報告では、次に何を直せばよいかが決まりません。数字が返ってこない状態が続くなら、管理の任せ方そのものを見直す段階です(「管理を任せるか自分でやるかは、手取りで比べる」)。
まとめ
- 空室1か月の損は、家賃1か月分に原状回復と募集の費用が乗った額になり、固定資産税と保険料と返済は止まりません
- 原因は、募集が届いていない、内見で選ばれていない、家賃が合っていないの3つに分かれ、上から順に確かめます
- 手を打つ順番は、募集の出し方、部屋の状態、条件、家賃の順になり、費用が軽く戻せるものから着手します
- 家賃の値下げは最後にし、戻しにくく、既存の入居者との差ができ、収益で見た資産価値も下がります
- 管理会社からは、掲載先、問い合わせ、内見、申込を数字で受け取ります
まず、今日できること
- 空いている部屋をポータルサイトで自分で検索し、掲載先の数と写真の枚数を数えます
- 直近3か月の問い合わせ件数、内見件数、申込件数を管理会社に出してもらいます
- 近隣で同じ家賃帯の部屋が何日で決まっているかを、成約家賃と合わせて聞きます
出典
- 宅地建物取引業法46条(報酬)
- 「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年10月23日建設省告示第1552号、最終改正 令和6年6月21日国土交通省告示第949号)第四・第十一
- 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律20条(委託者への定期報告)
- 国税庁タックスアンサー No.1370(不動産収入を受け取ったとき(不動産所得))
※確認日:2026年9月3日。空室の原因と有効な対策は、物件の立地・築年数・周辺の競合によって変わります。本記事の金額は架空のモデルです。広告料の扱いと募集の委託範囲は契約の内容によって違い、設備投資の税務上の区分も工事の内容ごとに判断が分かれます。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務相談ではありません。契約書と見積りをそろえたうえで、税理士にご確認ください。
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