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空室が埋まらない原因は3つ。家賃を下げるのは最後

空室が続くと、家賃が入らないだけでなく、何から手をつければよいのかも分からなくなります。値下げか、リフォームか、広告料の上乗せか、迷います。買った物件も、建てた物件も、相続した物件も、迷うところは同じです。

順番さえ間違えなければ、費用はほとんどかかりません。原因を3つに切り分け、募集の出し方、部屋の状態、条件、家賃の順に手を打ちます。いちばん最後に家賃を下げます。

この記事でわかること
  1. 01
    空室が1か月延びるたびに、家賃1か月分が消える
  2. 02
    原因を3つに切り分ける
  3. 03
    募集の出し方、部屋、条件、家賃の順に手を打つ
  4. 04
    家賃の値下げは、いちばん最後に回す
  5. 05
    管理会社からは、4つの数字で報告を受け取る

1. 空室が1か月延びるたびに、家賃1か月分が消える

感覚ではなく、金額で見ます。架空のモデルで確かめます。

【モデル事例】家賃7万円の部屋が8戸あるアパート。満室なら年間の家賃収入は 7万円 × 8戸 × 12か月 = 672万円です。物件と金額は架空です。

1戸が空くと、年間の家賃収入はこう変わる

すべての窓にカーテンが掛かった2階建てアパートの模型の線画

満室年間の家賃収入は672万円になります

8戸すべてに入居者がいる状態です。ここが比べるときの基準になります

アパートの模型の窓のひとつが点線で空っぽに見え、手前に硬貨がある線画

1戸が3か月空く年間の家賃収入は651万円になります

満室との差は21万円になります。1か月空くだけでも665万円まで下がり、差は7万円になります

空室が1か月延びるたびに、この物件では7万円ずつ減ります。ここに、退去のたびの原状回復と募集の費用が乗ります。金額は部屋の傷み方と地域で変わるので、直近の実績を管理会社に出してもらいます。

空室でも止まらない支出があります。固定資産税と都市計画税、火災保険料、共用部の電気代と水道代、借入金の返済です。家賃が入らない月も、同じ額だけ出ていきます。なお、募集している間も、固定資産税・火災保険料・建物の減価償却費・借入金の利息は、原則として不動産所得の必要経費として扱います(「大家の所得税は、家賃から経費を引いた不動産所得にかかる」)。

2. 原因を3つに切り分ける

空室が長引く理由は、大きく3つに分かれます。どれに当たるかを、上から順に見分けます。

募集が届いていない

受話器を置いたままの黒電話と、無地の間取り図が1枚置かれている線画

問い合わせが、ほとんど来ません

やり方掲載されているポータルサイトの数、写真の枚数、募集図面の記載を、自分で検索して見ます。

注意反響がほぼゼロのまま家賃だけ下げても、そもそも見られていないので何も変わりません。

内見で選ばれていない

開いたドアから光が差し込む、家具のない部屋の線画

問い合わせや内見はあるが、申込に至りません

やり方同じ家賃帯の競合物件を、実際に見に行きます。見送られた理由を管理会社に聞きます。

家賃が相場と合っていない

机に並べた2枚の無地の間取り図のうち、手前の1枚にだけ付箋が貼られている線画

申込は入るが、条件の交渉で流れます

やり方近隣で実際に決まった家賃を出してもらいます。募集家賃ではなく、成約家賃を見ます(「家賃はいくらにするか」)。

届いているかを先に確かめ、届いているのに決まらないなら選ばれているか、そこも問題がなければ家賃、という順に降りていきます。

3. 募集の出し方、部屋、条件、家賃の順に手を打つ

着手の順番は、費用が軽く、元に戻せるものからです。

空室に手をつける順番

先に2章で原因を切り分けてから動きます

1募集の出し方を直す掲載先、写真、募集図面。1社にしか出していないなら、契約書で募集の範囲を確かめる
2部屋を見られる状態にする清掃、臭い、照明、共用部。数万円と手間で済むことが多い
3条件で間口を広げるフリーレント、初期費用、入居できる人の幅。家賃の水準は保てる

この3つをやり切ってから、家賃を見直します。写真は居室だけでなく、水回り、収納の中、玄関、共用部、建物の外観まで撮ります。写真の無い場所は、見せられない場所と受け取られます。案内の前には窓を開けて換気し、全室に電球を入れ、各排水口に水を流しておきます。しばらく使っていないと封水が切れ、下水の臭いが上がってきます。

広告料(AD)は、報酬とは別枠のお金です。宅地建物取引業者が受け取れる報酬の額は、国土交通大臣が定めて告示することになっています(宅地建物取引業法46条1項・3項)。その告示では、貸借の媒介で依頼者の双方から受け取れる報酬の合計は借賃1か月分の1.1倍が上限で、居住用の建物では、承諾を得ている場合を除き、一方から受け取れる額は借賃1か月分の0.55倍までとされています。告示にはこれとは別に、「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額」が書かれています。どの媒体に、どんな内容の広告を、いくらで出すのかを先に決めて書面に残します。

4. 家賃の値下げは、いちばん最後に回す

影響が1部屋にとどまらないので、値下げは最後に回します。近隣の成約家賃を調べた結果、自分の募集家賃が明らかに高いと分かったなら、下げるべきです。

一度下げた家賃は戻しにくい

2段の階段の下の段に硬貨が1枚置かれ、その段の縁だけが金茶の線画

次の募集も、下げた水準から始まります

問題値上げに転じるには、入居者の入れ替わりか、周辺の家賃相場が上がるのを待つことになります。

既存の入居者との差ができる

同じ大きさの木の升が2つ並び、右の升だけ硬貨が少ない線画

同じ間取りが、自分の家賃より安く募集されています

問題値下げの申し出や、退去のきっかけになります。募集の条件は、住んでいる人にも見えています。

収益で見た資産価値が下がる

硬貨の山が2つ並び、右の山が半分の高さの線画

買い手は、家賃収入から物件の値段を逆算します

例月3,000円の値下げは、年36,000円の減収です。利回り8%で評価する買い手から見れば、36,000円 ÷ 8% = 45万円の評価減にあたります。

設備を入れるかどうかは、人気設備の順位表ではなく、自分の物件の回収年数で決めます。回収年数は、投資額 ÷ 1年あたりに取り戻せる金額です。15万円かけて家賃を月2,000円上げられたなら、年間で24,000円になります。15万円 ÷ 24,000円 = 約6.3年になります。この建物をあと10年使う予定なら検討の余地があります。5年後に建て替えるなら見送ります。工事の代金が修繕費になるか資本的支出になるかで、その年の経費にできるかも変わります(「構築物・附属設備・修繕費の分け方」)。

5. 管理会社からは、4つの数字で報告を受け取る

賃貸住宅管理業者には、管理業務の実施状況などを定期的に委託者へ報告する義務があります(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律20条)。この報告を、感想ではなく数字で受け取ります。

聞く項目わかること
掲載しているポータルサイトの名前と数募集が見込み客に届く経路の広さ
期間ごとの問い合わせ件数募集の段階で止まっているかどうか
期間ごとの内見件数写真と図面が実物と合っているか
申込件数と、見送られた理由部屋で負けたのか、条件で負けたのか

この4つがそろうと、2章の3つの原因のどれかに絞れます。募集には出しています、だけの報告では、次に何を直せばよいかが決まりません。数字が返ってこない状態が続くなら、管理の任せ方そのものを見直す段階です(「管理を任せるか自分でやるかは、手取りで比べる」)。

まとめ

要点

まず、今日できること

  1. 空いている部屋をポータルサイトで自分で検索し、掲載先の数と写真の枚数を数えます
  2. 直近3か月の問い合わせ件数、内見件数、申込件数を管理会社に出してもらいます
  3. 近隣で同じ家賃帯の部屋が何日で決まっているかを、成約家賃と合わせて聞きます

次に読む:家賃はいくらにするか/家賃保証会社は、連帯保証人の代わりに滞納した家賃を立て替える

出典

※確認日:2026年9月3日。空室の原因と有効な対策は、物件の立地・築年数・周辺の競合によって変わります。本記事の金額は架空のモデルです。広告料の扱いと募集の委託範囲は契約の内容によって違い、設備投資の税務上の区分も工事の内容ごとに判断が分かれます。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務相談ではありません。契約書と見積りをそろえたうえで、税理士にご確認ください。

公開 2026.02.06 / 更新 2026.09.07 賃貸経営 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)
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工程10 空室対策

家賃を下げる前にできることがあります。埋まらない原因を、切り分けます。

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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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