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不動産を売った税金は、給与と別に計算し、5年で税率が2倍変わる

賃貸に出していたアパートを売ろうと考えたとき、いくらで売れるかは調べても、税金がいくら出るかは後回しになりがちです。売ったあとの通知で初めて額を知ると、使い道を決めていたお金が足りなくなります。

売った利益にかかる税金は、給与や家賃とは切り離して計算します。税率は、売った年の1月1日で所有期間が5年を超えるかどうかで、20.315%と39.63%に分かれます。仕組みと、引ける金額の集め方を順に説明します。

この記事でわかること
  1. 01
    売った利益は、給与や家賃と別に計算する
  2. 02
    税率は、売った年の1月1日で5年を超えるかで決まる
  3. 03
    取得費は、買った値段そのままではない
  4. 04
    買った値段を証明できないと、売値の5%になる
  5. 05
    賃貸物件に3,000万円控除は使えない

1. 売った利益は、給与や家賃と別に計算する

土地や建物を売った利益は、その年の給与や不動産所得と合算しません。切り離して税額を出します。

給与や家賃とは、別の枠で計算する

2つの浅い木の受け皿が離れて並び、左に給与袋、右に家の模型が載っている線画

売却の税金は、ほかの所得と足し合わせません

やり方売った利益にかかる所得税と住民税は、ほかの所得と分けて計算します。これを分離課税といいます(所得税法33条、租税特別措置法31条)。

理由その年の家賃収入がいくらでも、売却の税額は変わりません。売却で大きな利益が出ても、給与にかかる税率は上がりません。

税金は、売れた金額ではなく利益にかかる

硬貨を積んだ大きな山の横で、手が2枚の小皿へ硬貨を取り分けている線画

売れた金額から、取得費と譲渡費用を引いた残りに税率を掛けます

やり方譲渡所得は「譲渡収入 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除」で出します。この譲渡所得に税率を掛けて、税額を出します。

注意特別控除は、特例が使えるときだけ出てきます。賃貸物件の売却では、ふつう出てきません。

2. 税率は、売った年の1月1日で5年を超えるかで決まる

税率は2段階です。所有期間で税率が分かれます。数える日には決まりがあります。

所有期間で、税率がこう変わる(租税特別措置法31条・32条)

起点買った日ここから数え始める
売った年の1月1日で5年以下短期譲渡。所得税と住民税で39.63%
売った年の1月1日で5年超長期譲渡。20.315%

買った日から丸5年で数えるわけではありません。売った年の1月1日の時点で5年を超えているかどうかで決まります。売買契約の日でも、引き渡しの日でもありません。

長期の20.315%は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%の合計です。短期の39.63%は、所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%の合計になります。

【モデル事例】山本さんは2021年3月に賃貸マンションを買いました。2026年中に売ると、2026年1月1日時点の所有期間は4年10か月で、短期譲渡です。譲渡所得が1,000万円なら税額は約396万円になります。2027年1月1日以後に売れば長期譲渡になり、約203万円で済みます。売る年を1年ずらすだけで、差は約193万円です。人物と金額は架空です。

「買ってから丸5年たったから長期になる」と思い込んで年内に売ると、この税金でいちばん多い取りこぼしになります。売却を考え始めたら、長期になるのは何年の1月1日からかを先に確かめます。

3. 取得費は、買った値段そのままではない

取得費の出発点は、購入代金に購入時の費用を足した金額です。土地はその金額のままです。建物は所有期間の分だけ目減りします。

建物は、減価償却の分だけ減っている

家の模型は点線で消えかけ、土地の区画だけがくっきり描かれた線画

毎年経費にしてきた減価償却費の累計を、買った値段から引きます

やり方賃貸に使ってきた建物は、確定申告で減価償却費を経費にしてきたはずです。その累計額だけ、税務上の取得費は毎年下がっています。

注意買った値段と同じくらいで売れても、帳簿の上では利益が出ていることがあります。貸していた期間が長いほど、この差は開きます。

買ったときの費用は、取得費に足せる

無地の請求書と、その横の硬貨3枚の線画

購入代金のほかに、足せるものがいくつもあります

やり方購入時に払った仲介手数料、土地の測量費や造成費用、あとから資産に計上した増改築などの改良費が入ります。

買うために借りたお金の利子も、その物件を使い始める日までの期間に対応する部分は取得費に入ります。

賃貸物件では、取得費に入らない費用もある

重ねた無地の請求書の束から、1枚だけを抜き取って脇に置いている手元の線画

購入時の登録免許税、不動産取得税、印紙税は、買った年の経費になります

やり方自宅など業務に使わない資産なら、これらは取得費に入ります。賃貸物件では、買った年の必要経費として扱います。

注意同じ費用でも、物件の使い方で扱いが分かれます。迷う支出は、自分で決めずに税理士に確かめます。

4. 買った値段を証明できないと、売値の5%になる

先代から引き継いだ物件などで、いくらで買ったかを示す書類が見つからないことがあります。そのときは、売却代金の5%を取得費とみなして計算します(租税特別措置法31条の4)。

購入時の契約書があるかどうかで、税額はここまで変わります

開いた蛇腹式の書類ホルダーから、古い契約書を1枚抜き出している線画

契約書がある実際に買った値段で引けます

購入代金に購入時の費用を足し、建物は減価償却の分を引いた額が取得費になります

引き出しを開けた空の書類箱と、その手前に置かれた硬貨1枚の線画

見つからない売却代金の5%しか引けません

3,000万円で売れた土地なら、取得費は150万円になります。残りの2,850万円が丸ごと利益の扱いになり、長期譲渡でも税額は500万円を超えます

購入時の売買契約書と領収書には、数百万円の値打ちがあります。見当たらないときも、通帳の振込記録やローンの契約書から探す道があります(「買った値段がわからないと、取得費は売値の5%になる」)。

5. 賃貸物件に3,000万円控除は使えない

3,000万円の特別控除は、売却の特例で最も名前が知られています。ただし、賃貸に出していた物件は対象から外れます。

3,000万円の特別控除を使える

一戸建ての模型と、その前に置かれた鍵が1本ある線画

自分が住んでいた家を売ったときだけ使えます

やり方所有期間に関係なく、利益から最高3,000万円を引けます(租税特別措置法35条)。

注意賃貸に出していたアパートやマンションには使えません。3,000万円までは税金がかからないという思い込みは、大家には当てはまりません。

相続税の取得費加算を使える

積んだ3つの木のブロックに、4つ目を手が載せようとしている線画

相続で取得した物件なら、払った相続税の一部を取得費に足せます

やり方相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで、つまり相続開始からおおむね3年10か月以内に売ることが条件です(租税特別措置法39条)。

注意期限を過ぎると使えません。相続した物件を売るなら、この期限から先に確かめます。

どの特例も、確定申告で手続きをして初めて使えます。要件は細かく、書類も要ります。使えそうな特例が見えたら、売買契約を結ぶ前に税理士に確認してください(「売却の特例は4つ。3,000万円控除には3年の期限がある」)。

まとめ

要点

まず、今日できること

  1. 買ったときの売買契約書と領収書を探し、1か所にまとめます
  2. 確定申告書から、その建物の減価償却費の累計額を書き写します
  3. 売った年の1月1日で所有5年を超えるのは何年からか、カレンダーで確かめます

次に読む:いくらで売れるかは、成約価格、公的な価格、査定の3方向で挟む売却の手取りは、売値から取得費、費用、税金、残債を引いた残り

出典

※確認日:2026年9月3日。税率と特例の内容は、税制改正で変わります。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務相談ではありません。取得費の集め方や特例が使えるかどうかは、物件の買い方と使い方で結論が変わります。売買契約の前に税理士にご確認ください。

公開 2026.02.03 / 更新 2026.09.07 不動産売却 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)
7
不動産売却の8工程

工程7 特例を確かめる

当てはまるのに使わないと、そのまま税額になります。多くの特例に期限があります。

この記事は 相続対策 工程12「二次相続・活用と売却」不動産法人化 工程6「土地を手当てする」賃貸経営 工程12「出口・法人化・規模拡大」 でも紹介しています。

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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

工程3 誰に頼むかを決める売却を頼む相手は、媒介契約の3種類を知ってから決める
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