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不動産オーナー必読!売却時の「譲渡所得税」完全ガイド【計算式から特例、経費の落とし穴まで】

公開 2026.02.03 / 更新 2026.07.27 不動産売却 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)

こんにちは。 不動産投資や賃貸経営の最終的なゴール(出口戦略)となる「売却」。 しかし、高く売れたからといって、そのすべてが手元に残るわけではありません。そこで大きく立ちはだかるのが「譲渡所得税」です。

今回は、不動産オーナーが売却前に必ず頭に入れておくべき税金の知識を、計算の仕組みから税率、経費の範囲、そして節税に直結する特例まで、可能な限り具体的に網羅して解説します。

知っているかどうかで手残り金額が数百万円変わることも珍しくありません。ぜひ最後までチェックしてください。


1. 課税の基本構造と計算式

まず大前提として、不動産を売って利益(譲渡所得)が出た場合にのみ税金がかかります。 給与所得や事業所得とは合算せず、切り離して計算する「分離課税」という方式です。

💡 ポイント

基本の計算式はこうです。
譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額
税額 = 譲渡所得 × 税率
売れた金額から、「買った時の値段(取得費)」と「売るための経費(譲渡費用)」を引き、さらに使える「特例(特別控除)」を引いた残りが課税対象となります。

具体的な計算例

例えば、2,000万円で購入した物件を3,500万円で売却した場合:

項目金額備考
売却価格(譲渡価額)3,500万円
取得費(購入価格−減価償却累計額)▲1,500万円償却で500万円減少
譲渡費用(仲介手数料等)▲120万円
譲渡所得1,880万円
長期譲渡の税額(20.315%)約382万円
短期譲渡の税額(39.63%)約745万円約363万円の差!

同じ利益でも、所有期間によって税額が約2倍違うのがお分かりいただけるでしょう。


2. 税率は「所有期間」で倍ちがう(1月1日判定の罠)

譲渡所得税の税率は、その不動産をどのくらいの期間持っていたかで大きく変わります。

⚠️ 注意

最も注意すべきは、「売却した年の1月1日時点」で5年を超えているかどうかで判定される点です。実際の所有期間ではありません。例えば、2020年4月に購入した物件を2025年5月に売却しても、2025年1月1日時点では4年9ヶ月。「短期譲渡」として39.63%の税率が適用されます。5年超の長期譲渡にするには2026年1月以降に売却する必要があります。

区分所有期間税率内訳
短期譲渡所得5年以下39.63%所得税30%+復興税0.63%+住民税9%
長期譲渡所得5年超20.315%所得税15%+復興税0.315%+住民税5%
10年超所有の軽減(居住用のみ)10年超14.21%(6,000万円以下部分)3,000万円控除と併用可

3. 税金を下げるカギ「取得費」の正体

計算式にある「取得費」が高ければ高いほど、利益が圧縮され、税金は安くなります。 しかし、単に「買った時の値段」を引けばいいわけではありません。

① 建物の減価償却

建物については、所有期間中に経費計上してきた「減価償却費」の合計額を、購入価格から差し引く必要があります。つまり、買った時よりも取得費(簿価)は下がっているため、想定よりも利益が出やすくなります。

② 取得費に含まれるもの

💡 ポイント

取得費にできるものは「漏れなく加算」することが節税の鉄則です。購入時の仲介手数料や登記費用の領収書をなくしていませんか? 振込履歴や登記簿から金額を復元できる場合もあります。税理士に相談して、取得費を最大化しましょう。

③ 取得費が不明な場合(5%ルール)

先代からの相続などで契約書がなく、いくらで買ったか不明な場合は「売却価格の5%」を取得費とみなします。

⚠️ 注意

5%ルールが適用されると、売却価格のほぼ全額が「利益」とみなされ、税額が非常に高額になります。例えば3,000万円で売却した場合、取得費はたった150万円。譲渡所得が約2,730万円となり、長期でも約555万円の税金がかかります。購入時の契約書・領収書は絶対に保存してください。


4. 引ける経費・引けない経費(譲渡費用)

「譲渡費用」として計上できるのは、売るために直接かかった費用のみです。維持管理費などは含まれません。

費用計上可否備考
仲介手数料売却時のもの
売買契約書の印紙代
立退料入居者に支払った場合
建物解体費用更地渡しの場合
測量費売却のために行ったもの
抵当権抹消登記費用×ローンの精算に過ぎない
引越し費用×
売却までの固定資産税・修繕費×維持管理費は対象外

5. マイホーム(居住用財産)の強力な特例

オーナー自身が住んでいた自宅を売却する場合には、大きな優遇措置があります。

① 3,000万円特別控除

所有期間に関係なく、利益から最大3,000万円を引くことができます。つまり、利益が3,000万円以下なら税金ゼロです。

② 軽減税率の特例(10年超所有)

所有期間が10年を超えている場合、6,000万円以下の部分の税率が14.21%まで下がります。3,000万円控除と併用可能です。

③ 買換え特例

売却益への課税を、将来その買い換えた物件を売るときまで「繰り延べ」できます(免税ではありません)。

💡 ポイント

3,000万円特別控除と買換え特例は併用できません。どちらが有利かは、売却益の金額と買換え物件の価格によって異なります。必ずシミュレーションを行い、有利な方を選択しましょう。

居住用特例の適用条件まとめ

特例所有期間主な要件控除額・効果
3,000万円控除制限なし現に居住 or 退去後3年以内最大3,000万円控除
軽減税率10年超同上6,000万円以下の部分14.21%
買換え特例10年超売却年の前後1年以内に買換え課税繰延べ

6. 空き家・相続物件の特例

相続した実家などを売るケースで使える特例です。

空き家の3,000万円特別控除

相続税の取得費加算の特例

⚠️ 注意

「空き家の3,000万円控除」と「相続税の取得費加算」は選択適用です。相続税をいくら払ったか、譲渡所得がいくら出るかによって有利不利が変わります。必ず両方のシミュレーションを行ってください。


7. 事業用・投資用不動産の買換え特例

投資用物件のオーナーが知っておくべきは、いわゆる「9号買換え」などの特例です。

💡 ポイント

「課税の繰り延べ」は「免税」ではありません。将来、買い換えた物件を売却する際に、繰り延べていた税金が課税されます。しかし、その間のキャッシュフローを確保し、より大きな物件へ組み替えるためには非常に有効な戦略です。


8. 売却損が出た場合(損益通算)

残念ながら売却して赤字(譲渡損失)が出た場合、原則として他の所得(給与や事業所得)との相殺(損益通算)はできません

ただし、例外としてマイホームの売却で損失が出た場合に限り、一定の要件を満たせば損益通算および最大4年間の繰越控除が認められます。

特例名要件効果
居住用財産の買換え等の譲渡損失の特例マイホームを売却して買い換え損益通算+3年繰越
特定居住用財産の譲渡損失の特例ローン残高以下で売却損益通算+3年繰越

9. 売却前にやるべき「税金シミュレーション」チェックリスト

売却活動を始める前に、以下の項目を確認しておくことで、手残り金額を最大化できます。


まとめ

不動産売却にかかる税金は、所有期間の判定や特例の適用可否、そして領収書の有無によって数百万円単位で変わります。 「手元にいくら残るのか」を正確に把握するためにも、売却活動を始める前に一度シミュレーションを行っておくことを強くおすすめします。

特に重要なポイントを最後に整理しておきます。


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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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