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不動産管理ってなにをするの?「建物」と「お金」を守るための全知識

公開 2026.01.21 / 更新 2026.07.27 賃貸経営 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)

「不動産管理」と聞いて、どんな仕事を思い浮かべますか?「廊下の掃除」や「電球の交換」でしょうか?もちろんそれも大切ですが、実はもっと奥が深い世界です。

不動産管理の本当の目的は、「入居者に気持ちよく住んでもらい、大家さんの手元に残るお金を最大化すること」です。管理の質が低ければ空室率が上がり、建物の劣化が進み、資産価値は下がる一方。逆に、管理を徹底すれば物件は長持ちし、家賃も維持でき、安定した不動産所得が続きます。

私は税理士として多くのオーナー様の確定申告を見てきましたが、「管理をしっかりやっている物件」と「放置気味の物件」では、10年後の収益に驚くほどの差が出ます。管理費をケチった結果、大規模修繕で数百万円の赤字を出す方も珍しくありません。

今回は、不動産管理の全体像を「ソフト面(PM)」と「ハード面(BM)」の2軸で徹底解説します。初心者の方でも全体像がバッチリ掴めるよう、情報の抜け漏れなくお伝えします。


1. 不動産管理の「2つの柱」を理解する

不動産管理は大きく2つの役割に分かれます。これを理解するだけで頭がスッキリ整理されます。

区分正式名称役割例え
ソフト面PM(プロパティマネジメント)入居者対応・集金・募集・契約管理経営代行・マネージャー
ハード面BM(ビルマネジメント)建物の点検・清掃・修繕建物のお医者さん

この2つが車の両輪のように機能して、初めて健全な賃貸経営が成り立ちます。どちらか一方が欠けると、経営は確実に傾きます。

💡 ポイント

管理会社選びの際は「PM(賃貸管理)に強いか」「BM(建物管理)に強いか」を見極めましょう。中にはPMしかやらない会社、BMは外注丸投げの会社もあります。契約前に「具体的に何をしてくれるのか」を書面で確認することが重要です。


2. ソフト面の管理(PM):お金と人を動かす仕事

PM(プロパティマネジメント)の主役は「入居者」と「お金」です。ここが直接的に収益に影響します。

① 入居者募集(リーシング)

空室が出た時、ただネットに掲載するだけでは決まらない時代です。プロの管理会社は以下の施策を組み合わせます。

⚠️ 注意

管理会社に募集を任せきりにしていませんか?「いつからネットに掲載されたか」「写真は何枚掲載されているか」「問い合わせ件数は何件か」を定期的にオーナー自身が確認してください。掲載写真が暗い、枚数が少ない、コメントが使い回しなど、手抜きの募集は空室長期化の直接原因です。

② 契約・更新・退去の手続き

トラブルを防ぐための書類仕事ですが、ここが最も揉めやすいポイントです。

フェーズ主な業務注意点
入居審査収入証明・在籍確認・人柄チェック保証会社の審査だけで安心せず、管理会社としての判断も必要
契約締結賃貸借契約書・重要事項説明書の作成特約事項(退去時クリーニング・ペット条件等)の記載漏れに注意
契約更新更新料の請求・火災保険の更新・家賃改定交渉物価上昇局面では家賃値上げ交渉のチャンス
退去精算原状回復費の算定・敷金返還国交省ガイドラインに準拠した精算が必須

③ 入居者対応と家賃管理

💡 ポイント

管理委託料の相場は家賃収入の3〜5%です。月額家賃6万円×10室の物件なら、月3〜3万円。この費用で空室対策・家賃回収・クレーム対応・法的手続きまですべて代行してくれるなら、費用対効果は非常に高いと言えます。ただし「安かろう悪かろう」の管理会社もあるので、価格だけで選ばないでください。


3. ハード面の管理(BM):建物を守る仕事

BM(ビルマネジメント)の主役は「建物」と「法律」です。法律で義務付けられている点検を怠ると、罰則だけでなく、万が一の事故時にオーナーが個人として責任を問われる可能性があります。

① 法定点検(やらなければ法律違反)

点検項目頻度根拠法令費用目安
消防設備点検年2回(機器点検+総合点検)消防法第17条の3の33〜10万円/回
エレベーター点検毎月+年1回法定検査建築基準法第12条月3〜5万円
貯水槽清掃・水質検査年1回水道法第34条の23〜8万円
特定建築物定期調査3年に1回程度建築基準法第12条10〜30万円
電気設備点検月1回+年1回精密検査電気事業法月1〜3万円

⚠️ 注意

「管理会社に任せているから大丈夫」と安心していませんか?消防点検の報告書は消防署に提出されていますか?エレベーターの法定検査済証は最新版ですか?オーナーには管理会社の業務を「監督する義務」があります。年に1回は点検記録の実物を確認してください。

② 清掃(物件の「第一印象」を決める)

③ 修繕計画(最大の出費を「想定内」にする)

修繕は「突発修繕」と「計画修繕」の2種類があります。

種類内容費用目安
突発修繕(日常)電球交換・蛇口パッキン・給湯器故障数千円〜20万円
計画修繕(5〜10年)給湯器交換・エアコン更新・内装リフォーム10〜50万円/戸
大規模修繕(10〜15年)外壁塗装・屋上防水・鉄部塗装数百万〜数千万円

💡 ポイント

大規模修繕に備えて、家賃収入の5〜10%を毎月「修繕積立金」として別口座にプールしておきましょう。10年後に突然数百万円の出費を迫られても、積み立てがあれば慌てません。税務上は積立金自体は経費になりませんが、実際に修繕を実施した年に修繕費として経費計上できます。


4. 一歩先の「経営戦略」(アセットマネジメント)

ただ維持するだけでなく、積極的に資産価値を高め、利益を増やすための考え方です。PMとBMの上位概念としてAM(アセットマネジメント)と呼ばれます。

バリューアップ工事

退去が出た部屋をただ原状回復するだけでなく、人気設備を導入して家賃アップを狙います。

収益の見える化

出口戦略


5. 自主管理 vs 委託管理:どちらを選ぶべきか

比較項目自主管理委託管理
コスト管理費ゼロ家賃の3〜5%
手間24時間365日対応の覚悟が必要基本おまかせ
専門知識法律・設備・税務すべて自分で学ぶプロのノウハウを活用
空室対策自分で営業・募集が必要業者ネットワークを活用
おすすめの人物件が近く、1〜2棟の小規模オーナー遠方物件・複数棟所有・本業が忙しい方

💡 ポイント

「自主管理でコストを抑えたい」という気持ちは分かりますが、夜中の水漏れ対応や入居者間のトラブル仲裁は精神的負担が大きく、本業に支障をきたすケースも多いです。管理委託費は「時間と精神の余裕を買う費用」と考えてください。その分、物件の選定や経営判断に集中できます。


6. 知っておくべき最近のルール変更

最後に、最近の法改正で不動産管理に影響する重要ポイントを3つお伝えします。

① 賃貸住宅管理業法(2021年施行)

200戸以上を管理する業者は、国土交通大臣への登録が義務化されました。未登録業者に管理を任せると、トラブル時にオーナーが不利になる可能性があります。管理会社の登録番号を確認してください。

② インボイス制度(2023年10月開始)

事務所・店舗など課税対象の賃貸物件を持っているオーナーは、インボイス(適格請求書)の発行登録が必要になる場合があります。住宅用賃貸は非課税なので影響なしですが、テナント物件を持つ方は税理士に相談してください。

③ 民法改正(2020年施行)

連帯保証人の極度額明記義務、敷金返還ルールの明文化、原状回復の基準(通常損耗は貸主負担)が法律で明確になりました。古い契約書のまま運用していると法的リスクが生じます。

⚠️ 注意

法改正に合わせて契約書のひな形を更新していますか?特に「連帯保証人の極度額」「原状回復の負担区分」「敷金返還のルール」について、最新の法律に準拠した契約書を使っているか確認してください。古い契約書のままでは、退去時のトラブルで不利になります。


7. 税理士の視点:管理コストの税務処理

税理士として、不動産管理に関連する税務のポイントを整理しておきます。


まとめ:管理は「守り」ではなく「攻め」の経営

不動産管理の仕事は、一言でいうと「入居者の満足」と「大家さんの利益」の両方を守ることです。

管理を「コスト」と見るか「投資」と見るかで、10年後の資産価値は大きく変わります。「管理会社は何をしてくれているのか」と疑問に思ったら、このチェックリストを見返してみてください。


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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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