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口座が止まっても、150万円までは引き出せる

亡くなった人の口座は、銀行が死亡を知った時点で止まります。葬儀の費用の支払いも、家賃の引き落としも、そのままではできません。

それでも、相続人1人で、1つの銀行につき150万円までは引き出せます(民法909条の2)。止まる仕組みと、引き出す手順を順に説明します。

この記事でわかること
  1. 01
    口座は、銀行が死亡を知ったときに止まる
  2. 02
    引き出せる額は、2段階の上限で決まる
  3. 03
    書類をそろえる。戸籍集めに1〜2週間かかる
  4. 04
    150万円で足りないときは、家庭裁判所を頼る
  5. 05
    家賃の口座が止まったら、先に3つ連絡する

1. 口座は、銀行が死亡を知ったときに止まる

死亡届を出したら止まる、ではありません。市区町村と銀行はつながっていないからです。銀行が死亡を知ったときに止まります。相続人からの連絡、新聞のお悔やみ欄、支店の担当者が知ることなど、きっかけはいろいろです。

取引が止まる

通帳に金茶の南京錠がかかっている線画

出金も、振込も、引き落としも止まります

問題公共料金、保険料、ローンの口座振替が落ちず、引き落とし不能の通知が来ます。キャッシュカードも使えなくなります。

解決止まる前提で、引き落としの相手を書き出しておきます(5章)。

入るけれど、出せない

投入口に硬貨が落ちかけている貯金箱に、金茶の南京錠がかかっている線画

家賃や年金の入金は入ります。でも、引き出せません

問題入金は受け付けられます。分け方が決まるまでは、自由には引き出せません。

解決当面の現金は、2章の仮払いで出します。

「知られる前に下ろしておく」は、勧めません。相続を放棄するつもりがあるなら、預金を引き出して使った時点で、相続を受け入れたとみなされるおそれがあります(民法921条1号)。くわしくは「相続放棄は3か月以内。財産に手をつけると、できなくなる」で説明しています。

2. 引き出せる額は、2段階の上限で決まる

2019年7月から、遺産分割を待たずに、相続人1人で払い戻しを受けられるようになりました(民法909条の2)。上限は2段階です。

相続人1人で引き出せる額

口座の残高 × 3分の1 × 自分の法定相続分

ただし、1つの銀行につき150万円まで

銀行が2行に分かれていれば、それぞれで150万円まで使えます。同じ銀行に口座が複数あるときは、口座ごとに計算したうえで、合計150万円で頭打ちです。

【モデル事例】相続人は妻と子2人。A銀行の普通預金に1,200万円があります。人物と金額は架空です。

妻と子で、引き出せる額はこう違う

妻(法定相続分 2分の1)

1,200万円 × 3分の1400万円

× 2分の1200万円

引き出せる額150万円

子1人(法定相続分 4分の1)

1,200万円 × 3分の1400万円

× 4分の1100万円

引き出せる額100万円

妻は計算では200万円です。上限の150万円で止まります。3人を合わせると350万円です。葬儀の費用は、この仮払いでまかなえることが多いです。

引き出した分は、遺産の一部を先に受け取ったものとして扱われ、分け方を決めるときに自分の取り分から引かれます(民法909条の2)。何にいくら使ったか、領収書とメモを残しておきます。葬儀の費用は、相続税の計算で引けます(相続税法13条)。香典返し、初七日や四十九日の法要、墓地の購入費は引けません。

3. 書類をそろえる。戸籍集めに1〜2週間かかる

戸籍をそろえる

罫線の冊子が重なり、いちばん上の隅に金茶の印影がある線画

相続人が誰かを示す書類は、全員分そろえます

やり方亡くなった人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍)、相続人全員の戸籍、引き出す人の印鑑証明書、銀行の依頼書です。

注意手続きは1人でできます。戸籍は全員分です。集めるのに1〜2週間かかります。

法定相続情報一覧図を作る

小さな家系図が印刷された1枚の証明書。隅に金茶の印影がある線画

1枚作ると、戸籍の束を何度も出さずに済みます

やり方戸籍がそろったら、法務局で法定相続情報一覧図を作ります。無料で、何通でも出せます。

理由銀行ごとの手続き、税務署、登記で、戸籍の束の代わりに使えます。

4. 150万円で足りないときは、家庭裁判所を頼る

相続税の納税や、まとまった借入の返済には、150万円では届きません。そのときは、家庭裁判所に預貯金の仮分割を求めます(家事事件手続法200条3項)。

銀行の窓口で仮払いを受ける

銀行のカウンター越しに通帳を差し出している手元の線画

急ぎの支払いは、これで

やり方上限は、残高×3分の1×法定相続分です。1つの銀行で150万円までです。銀行の窓口だけで済み、ほかの相続人の同意は要りません。

例書類がそろえば、数日から数週間で受け取れます。

家庭裁判所に仮分割を求める

柱の並んだ石造りの建物の正面。扉の上の紋章だけが金茶の線画

大口は、これで

やり方必要な範囲なら上限はありません。ただし、遺産分割の調停か審判の申立てをしていることが前提です。

注意数か月かかることもあります。争いがある前提の手続きです。

争いがないなら、遺産分割協議をまとめてしまうほうが早いことがほとんどです。分け方が決まれば、協議書で口座を解約できます。

5. 家賃の口座が止まったら、先に3つ連絡する

家賃の口座が止まる

アパートの模型の手前に開いた通帳があり、金茶の南京錠が載っている線画

入金は続きます。引き落としが落ちません

問題亡くなった人の口座に家賃が入り、そこからローンと管理料が引き落とされている形が普通です。止まると、返済と管理料が落ちず、延滞になります。

解決止まる前提で、下の順に連絡します。

注意相続人が受け取った家賃は、分け方が決まるまで、法定相続分で各自のものです(最高裁平成17年9月8日判決)。使わずに、分けて置きます。

止まる前に、この順で連絡する

先に引き落としの相手を書き出します(返済・管理料・固定資産税・火災保険)

1金融機関へ相続が起きたことを伝え、返済の取扱いを確かめる
2管理会社へ貸主が亡くなったことと、家賃の振込先が変わる時期を相談する
3引き落としを移す公共料金と保険料の口座を、相続人代表の口座へ切り替える

放置すると、延滞に加えて保険も失効します。

生命保険金は、受取人が1人で請求でき、凍結されません。当面の現金の備えになります(「生命保険は相続対策の一手」)。判断能力が落ちた時点で先に止まる場合のほうが、凍結そのものより厄介です。こちらは「親が認知症になると、相続対策も資産も止まる」で説明しています。

まとめ

要点

まず、今日できること

  1. 亡くなった人の口座を書き出し、どの口座から何が引き落とされているかを通帳で確かめます
  2. 葬儀の費用など、当面いくら要るかを出します。150万円で足りるかを見ます
  3. 戸籍を集め始めます。そろったら、法務局で法定相続情報一覧図を作ります

次に読む:相続放棄は3か月以内。財産に手をつけると、できなくなる/7日・3か月・4か月・10か月の期限カレンダー

出典

※確認日:2026年9月3日。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務・法務相談ではありません。遺産分割の争いと家庭裁判所の手続きは、弁護士の領域です。

公開 2026.07.26 / 更新 2026.09.07 相続対策 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)
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相続対策の12工程

工程7 相続発生直後に動く

亡くなった直後は期限との戦い。何から動くかを時系列で押さえます。

この記事は 相続手続き STEP 1「直後の2週間を乗り切る」/相続手続き STEP 4「相続するか、放棄するかを決める」 でも紹介しています。

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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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