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相続が起きたら、まず何を?期限カレンダー保存版(7日・3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月)

公開 2026.07.24 相続対策 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅建士/自主管理大家)

親が亡くなった直後は、悲しむ間もなく手続きに追われます。「何から動けばいいのか分からないのに、期限だけが迫ってくる」——これがいちばんつらいところです。

結論から言うと、相続の手続きは”締め切りの順番”で覚えるのが、いちばん迷いません。大きな期限は、次の4つです。

7日 → 3ヶ月 → 4ヶ月 → 10ヶ月
(死亡届 → 相続放棄の判断 → 準確定申告 → 相続税の申告・納付)

この4つを軸に、間の細かい手続きをぶら下げていけば、全体像がつかめます(根拠:LS-11 相続発生後の期限一覧)。

※本記事の人物・金額はすべて架空のモデル事例です。一般的な仕組みを解説するもので、個別の税務・法務相談ではありません。

→ 相続対策の全体像は 相続対策の進め方(12工程)。この記事は工程7「相続発生直後に動く」です。まず時系列の全体像をつかみ、各手続きは詳しい記事へつなぎます。

この記事でわかること


1. まず、全体像を1枚のカレンダーで

細かい手続きは山ほどありますが、法律で期限が切られている「動かせない締め切り」は限られています。まずはこの表を保存してください。

期限 起算日(いつから数えるか) やること 根拠
7日以内 死亡を知った日から 死亡届の提出・火葬許可の取得 戸籍法86条
2週間前後 すみやかに 年金の受給停止・未支給年金、世帯主変更、公共料金等の名義変更 各制度の手続き
3ヶ月以内 自己のために相続開始を知った時から 相続放棄・限定承認をするか判断 民法915条
4ヶ月以内 相続開始を知った日の翌日から 準確定申告(対象者のみ) 所得税法124・125条
10ヶ月以内 相続開始を知った日の翌日から 相続税の申告・納付 相続税法27条
(3年以内) 相続で不動産取得を知った日から 相続登記(2024年から義務化) 不動産登記法(工程12)

ポイントは、起算日が手続きごとに少しずつ違うこと。「死亡を知った日から」「知った時から」「知った日の翌日から」と、数え方がバラバラです。厳密な日付は個別に確認が要りますが、まずは「7日・3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月」の4つを体に入れておけば、大きな締め切りを落としません。

【モデル事例】 東京郊外に自宅と賃貸アパート1棟を持っていた父を亡くした田中さん(仮)。相続人は母と、田中さんきょうだい2人の計3人です。父には不動産所得があり、自宅と賃貸物件という不動産が中心の財産構成でした。この田中さんが実際にたどる流れに沿って、以下を見ていきます。


2. 7日以内 — 死亡届・火葬許可と、静かに進む「口座凍結」

死亡届は7日以内(戸籍法86条)

最初の期限が、死亡届です。死亡の事実を知った日から7日以内に、市区町村へ提出します(根拠:戸籍法86条)。実務では、この死亡届の受理とあわせて火葬許可証が交付され、葬儀へと進みます。

届出そのものは葬儀社が代行してくれることが多く、ここで悩む人は多くありません。本当に気をつけたいのは、この裏で静かに進む「口座凍結」のほうです。

金融機関が死亡を把握すると、口座は凍結される

金融機関が名義人の死亡を把握すると、その口座は凍結され、入出金ができなくなります。引き落としも止まります。「葬儀費用を親の口座から出そうと思っていたのに、お金が動かせない」——直後にいちばん多いつまずきです。

ここで使えるのが、預貯金の仮払い制度です。遺産分割が終わる前でも、相続人が一定額までなら単独で引き出せます(根拠:LS-11/民法909条の2)。1つの金融機関につき上限150万円までという枠がありますが、当面の葬儀費用や生活費をしのぐ手段になります。

→ 詳しい引き出し方と上限の計算は 口座が凍結された・葬儀費用が払えないときの仮払い制度 にまとめています。


3. 2週間前後 — 「止める」手続きと「請求する」手続き

7日の山を越えたら、次は期限が長め、または明確でないけれど早めに動くべき手続きが続きます。大きく「止める」ものと「請求する」ものに分かれます。

年金を「止める」・未支給分を「請求する」

年金を受け取っていた場合、受給を止める届出(受給権者死亡届)が必要です。目安として、厚生年金は死亡から10日以内、国民年金は14日以内とされます。止めずに受け取り続けると、あとで返還を求められます。

一方で、亡くなった月分までの年金で、まだ受け取っていないもの(未支給年金)は、生計を同じくしていた遺族が請求できます。「止める」と「もらう」がセットになっているのがこの手続きです。(マイナンバー連携により、届出の一部が省略される場合もあります。正確な扱いは年金事務所でご確認ください。)

生命保険金を「請求する」

被相続人が生命保険に入っていたら、受取人が保険会社へ請求します。請求しないと支払われず、請求権には時効(3年)があります(根拠:保険法95条)。生命保険金は、相続税では「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を持つ大切な財産でもあります。→ 生命保険の非課税枠500万円という一手(工程5)

名義変更・公共料金

公共料金、携帯電話、各種契約の名義変更・解約も、このあたりで進めます。不動産・預貯金・株式・自動車などの名義変更(相続手続き)は、後述の遺産分割が決まってから本格化しますが、何がどこにあるかの洗い出しは今すぐ始めておくと後が楽です。→ 相続財産のヌケ・モレ防止チェックリスト(工程8)

遺言があるか、まず確認する

そして忘れがちなのが、遺言の有無の確認です。遺言があるかないかで、この先の分け方の進め方がまるごと変わります。

自筆証書遺言(法務局に預けていないもの)が見つかったら、勝手に開封せず、家庭裁判所の「検認」を受けます(根拠:民法1004条)。公正証書遺言や、法務局の保管制度を使った自筆証書遺言は検認が不要です。この検認や遺言をめぐる手続きは法務(弁護士・司法書士)の領域なので、当事務所では税務の判断を担当し、検認・登記などの手続きは提携の専門家へおつなぎする線引きにしています。


4. 3ヶ月以内 — 相続するか、放棄するか(民法915条)

ここからが、動かせない法定期限の本番です。

相続放棄・限定承認は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に、家庭裁判所へ申述しなければなりません(根拠:LS-11/民法915条)。この3ヶ月を何もせず過ぎると、原則として単純承認——つまりプラスの財産もマイナスの借金も、まるごと引き継いだものとして扱われます(民法920条)。

選択肢 中身 根拠
単純承認 プラスもマイナスも全部引き継ぐ(何もしなければ原則これ) 民法920条
限定承認 プラスの財産の範囲でだけ借金を引き継ぐ(相続人全員で申述) 民法922条
相続放棄 一切引き継がない(各自で申述できる) 民法915条ほか

「借金や連帯保証があるかもしれない」ときほど、この3ヶ月は重い期限になります。放棄は一度すると撤回できず、生前に放棄しておくこともできません。判断のためには、プラスの財産だけでなく、借入・保証債務まで含めた洗い出しが3ヶ月以内に必要です。

この放棄・限定承認の判断そのものは法務の領域です。当事務所は税務面から全体像を整理しつつ、放棄・限定承認の申述は提携の専門家と進めます。→ 判断のポイントと手続きは 相続放棄すべき?3ヶ月の期限と単純承認・限定承認 で詳しく解説しています。


5. 4ヶ月以内 — 見落とされやすい「準確定申告」

3ヶ月の次にやってくるのが、もっとも見落とされやすい期限です。

被相続人に一定の所得があった場合、相続人が代わりに確定申告をします。これが準確定申告で、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内が期限です(根拠:LS-11/所得税法124・125条)。

たとえば次のような人が対象になります。

モデル事例の田中さんの父は、賃貸アパートの不動産所得がありました。この場合、亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、4ヶ月以内に準確定申告が必要です。通常の確定申告(翌年3月15日)とは締め切りが違うため、「来年でいい」と思っていると期限を過ぎてしまいます。

→ 対象になる人・必要書類・還付されるケースまでは 準確定申告とは?4ヶ月の期限と対象になる人 にまとめています。


6. 10ヶ月以内 — 相続税の申告・納付(相続税法27条)

そして、相続の締めくくりが相続税の申告・納付です。相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、申告と納税(原則は現金一括)まで済ませます(根拠:LS-11/相続税法27条)。

「10ヶ月もあるなら余裕」と感じるかもしれませんが、実際にはギリギリになりがちです。相続税の申告までには、次のステップを踏む必要があるからです。

  1. 財産・負債をすべて洗い出す(工程8)
  2. 土地などの財産を評価する(工程8)
  3. 相続税がかかるかを判定し、税額を試算する(工程9)
  4. 誰が何を取るか、遺産分割協議をまとめる(工程10)
  5. 申告書を作り、納税資金を用意して納付(工程11)

とくに遺産分割がまとまらないと、税額を大きく下げる特例(小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減)が使えず、いったん高い税額で申告することになります。10ヶ月から逆算すると、遅くとも半年前には財産の評価と分割の話し合いを始めたい——これが実務の感覚です。

まずは「そもそも相続税がかかるのか」の判定から。→ うちは相続税がかかる?基礎控除で最初に確かめる(工程9)が次のステップです。


7. その先も期限がある — 相続登記の義務化(3年)

10ヶ月ですべてが終わるわけではありません。2024年(令和6年)から、相続登記が義務化されました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記しないと、過料の対象になり得ます。

登記は司法書士の領域ですが、「亡くなってから何年も名義をそのままにしておく」ことができなくなった点は、直後の段階でも頭に入れておきたい変化です。→ 詳しくは 相続登記の義務化(3年以内)の要点(工程12)で扱います。


まとめ

次に読む:口座凍結と仮払い制度準確定申告4ヶ月相続放棄と3ヶ月の期限相続税がかかるか判定(工程9)相続税対策・完全ガイド(総論)


出典

※期限の起算日は手続きごとに異なり(「死亡を知った日から」「知った時から」「知った日の翌日から」)、個別の事情で変わります。本記事は一般的な流れの整理です。相続放棄・限定承認・遺言の検認・相続登記などの法務手続きは弁護士・司法書士の領域であり、当事務所は税務の判断を担当し、手続きは提携の専門家へおつなぎします。年金・保険の届出期限は制度改正やマイナンバー連携で扱いが変わることがあるため、年金事務所・各保険会社にご確認ください。準確定申告・相続税申告の要否や税額は、財産の内容と分け方で変わります。判断に迷う場合は税理士にご相談ください。

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宍倉奎次郎
税理士 × 大家(宅建士・自主管理)
宍倉 奎次郎

宅建免許を持つ管理会社を自ら経営し、賃貸物件を自主管理。この記事も自分の実務手順をそのまま書いています。※一般的な情報提供であり、個別の判断は専門家にご相談ください。

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