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取得費がわからないと税金が倍になる──概算取得費5%と、買った値段の証明の集め方

公開 2026.08.07 不動産売却 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)

売却の税金は、売った金額にかかるのではありません。もうけ(譲渡所得)にかかります。そのもうけを決めるいちばん大きな数字が、買ったときの値段——取得費です。

買ったときの契約書が見つからないと、取得費は売った金額のたった5%しか認められません。3,000万円で売れば、取得費は150万円。差の2,850万円がまるごと課税の対象になります。ここが、売却でいちばん取り返しのつかない場所です。

※本記事の人物・金額はすべて架空のモデル事例です。一般的な仕組みを解説するもので、個別の税務・法務相談ではありません。

→ 全体の流れは 不動産売却の全体像。この記事は章5「取得費を確定する」の解説です。

この記事でわかること


1. 取得費に入れられるもの

取得費は「買った値段」だけではありません。買うためにかかった費用も入ります。

入れられる 入れられない
購入代金(土地・建物) 引っ越し代
購入時の仲介手数料 火災保険料
登録免許税・司法書士報酬・不動産取得税 管理費・修繕積立金
売買契約書の印紙代 賃貸に使っていた期間の、経費にした修繕費
土地の造成費・測量費、建物の取壊し費用 住宅ローンの利息(使い始めた後の分)
借主に払った立退料 固定資産税(毎年の分)

迷いやすいのが登録免許税と不動産取得税です。賃貸用として必要経費に落としていないなら、取得費に入れられます。二重に引くことはできません。

2. 建物は減価償却した後の金額になる

土地は古くなりません。建物は古くなります。だから取得費のうち建物部分は、使った年数ぶんを差し引いた後の金額を使います。

建物の取得費 = 建物の購入代金 − 減価償却相当額

売買契約書に土地と建物の内訳が書かれていないことがあります。その場合は、契約書に書かれた消費税額から建物価格を割り戻す、購入時の固定資産税評価額の比で按分する、といった方法で分けます。この按分でも税額は動くので、根拠を残しておきます。

3. 契約書がないと「5%」になる

取得費がわからないときは、売った金額の5%を取得費とみなすことが認められています(概算取得費。租税特別措置法31条の4、および同条の取扱い)。実際の取得費が5%より少ないときにも使えます。

【モデル事例】 親から受け継いだ土地を3,000万円で売却。買った当時の契約書は見つからない。
・契約書あり(取得費1,800万円)……もうけは約1,100万円、税額はおよそ220万円
・契約書なし(取得費150万円)……もうけは約2,750万円、税額はおよそ560万円
※長期譲渡(20.315%)、譲渡費用100万円として計算した概算です

紙が1枚あるかないかで、300万円以上変わることがあります。売ると決めたら、まず契約書を探す。これが章5の結論です。

4. 契約書がないときに集める証拠

いきなり5%と決めつける必要はありません。買った値段を裏づける資料が残っていることがあります。

これらを組み合わせて金額を説明できれば、5%を使わずに済むことがあります。一方、市街地価格指数などの統計から購入額を推計する方法は、認められた例もありますが、否認された裁決もあります。統計による推計だけに頼るのは危険です。使うなら事前に税理士と相談してください。

5. 相続した不動産なら——引き継ぐ取得費と、加算の特例

相続や贈与でもらった不動産は、亡くなった人(贈与した人)の取得費と取得時期をそのまま引き継ぎます(所得税法60条1項)。相続した日の時価ではありません。だから、親が数十年前に買ったときの契約書が必要になります。

さらに、相続税を払っている場合は取得費加算の特例が使えます。相続の申告期限の翌日から3年以内(=相続開始から3年10か月以内)に売れば、払った相続税のうち、その不動産に対応する分を取得費に足せます(租税特別措置法39条)。期限のある特例なので、相続した不動産を売る予定があるなら日程から逆算します。相続対策の全体像

まとめ

→ 次に読む:譲渡費用を数える(章6)/不動産売却の手取り計算


出典

※確認日:2026年8月7日。試算の税額は概算であり、実際の税額は特例の適用や他の所得により変わります。

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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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