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相続登記は3年以内が義務に——過料10万円と、間に合わないときの相続人申告登記

公開 2026.07.26 相続対策 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)

親名義のままの実家。祖父名義のままの土地。「いつかやらないと」と思いながら、何十年もそのままになっている登記があります。

2024年4月1日から、相続登記は義務になりました。期限内にしないと、10万円以下の過料の対象になります。しかも、施行前に起きた相続もさかのぼって対象です。

不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する(不動産登記法76条の2)
——施行日より前の相続は、2027年3月31日までが期限です。

※本記事の人物・金額はすべて架空のモデル事例です。一般的な仕組みを解説するもので、個別の税務・法務相談ではありません。

→ 全体像は 相続対策 完全ガイド、工程順の一覧は 相続対策の工程マップ。この記事は工程10「遺産を分割する」のあとに来る手続きです。

この記事でわかること


期限は3年。ただし数え方が2つある

場面 期限
相続で不動産を取得したことを知ったとき その日から3年以内
遺産分割が成立して取得が決まったとき 成立の日から3年以内(76条の2第2項)
2024年3月31日以前に起きた相続 2027年3月31日まで(知った日から3年のほうが遅ければ、そちら)

つまり、亡くなってすぐに分割がまとまるなら3年以内に1回。分割が長引いたなら、まとまってからさらに3年という数え方になります。

いちばん見落とされるのが3行目です。10年前、20年前に亡くなった親や祖父の名義のままになっている不動産も、2027年3月31日が期限です。

まとまらないときは「相続人申告登記」

3年以内に遺産分割がまとまらないことは、珍しくありません。そのために用意されたのが相続人申告登記です(不動産登記法76条の3)。

ただし、これは権利の登記ではありません。登記簿には「相続人である」ことが記録されるだけで、所有権が移ったことにはなりません。売ることも、担保に入れることもできません。過料を避けるための応急処置です。

そして、あとで遺産分割が成立したら、その日から3年以内に本来の相続登記をする義務が改めて生じます。

過料10万円は、いきなり来ない

正当な理由がないのに申請を怠ったときは、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法164条1項)。

ただし、期限を過ぎた瞬間に通知が届くわけではありません。運用では、登記官が義務違反を把握したうえで相当の期間を定めて催告し、それでも申請がない場合に裁判所へ通知する、という流れとされています。催告に応じて登記すれば、過料には至りません。

「正当な理由」があるとされる例としては、次のようなものが挙げられています。

「忙しかった」「知らなかった」は入りません。まとまらないなら、相続人申告登記だけでも出しておくのが確実です。

放置すると、相続人が増えていく

義務化より前から、登記を放置する本当の代償はここにありました。

祖父が亡くなり、土地は祖父名義のまま。
その後、相続人だった父が亡くなる。父の相続人である母と子3人が加わる。
さらに叔父が亡くなり、その配偶者と子2人が加わる。
——気づくと、1つの土地に十数人の権利者がいることになります。

これが数次相続です。分割協議には全員の合意と印鑑証明書が要るので、面識のない親族を探して連絡を取ることから始まります。一人でも所在不明なら、家庭裁判所の手続きが必要になります。

時間が経つほど、費用と手間は増えます。登記は「そのうち」が最も高くつく手続きです。

大家にとっては、経営が止まる

賃貸そのものは続けられますが、次の一手が全部止まります。引き継いだ物件でまずやることは、賃貸借契約書の確認と、この相続登記です。

費用と、免税になる場合

費目 目安
登録免許税 固定資産税評価額 × 0.4%
戸籍・住民票などの取得費 通数による
司法書士報酬 依頼する場合

登録免許税には免税の措置があります(租税特別措置法84条の2の3)。

放置された土地を整理するための措置です。使えるかどうかは、申請の際に確認します。

住所変更登記も義務になります

相続とは別に、所有者の住所・氏名の変更登記も義務化されます。施行は2026年4月1日で、変更から2年以内が期限です。引っ越すたびに登記が要ることになるので、こちらも頭の隅に置いておく場所です。

いらない土地は手放せるか

使い道がなく、売れもしない土地については、相続土地国庫帰属制度(2023年4月27日開始)があります。審査を経て、10年分の管理費相当額を負担金として納めることで、国に引き取ってもらう制度です。

建物が建っている土地、担保が付いている土地、境界が争われている土地などは対象外です。「いらないから放棄する」ほど簡単ではありませんが、選択肢としては増えました。

まとめ

分け方そのものは 不動産は分けられない——4つの分け方と税金、期限の全体像は 相続が起きたら、まず何を?期限カレンダー にまとめています。

10
相続対策の12工程

工程10 遺産を分割する

税額より先に「誰が何を取るか」で家族は止まります。不動産は、分けられません。

この工程の記事

12工程の全体像を見る

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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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