ホーム不動産売却 › 売却の手取りは、売値から…

売却の手取りは、売値から取得費、費用、税金、残債を引いた残り

売却では、いくらで売れるかよりも、手元にいくら残るかを知りたいはずです。ところが、売買契約の直前まで手取りを計算しないまま話が進むことがあります。

手取りは、売った金額から譲渡費用と税金を引き、ローンが残っていれば残債の返済も引いた残りです。税金は売った金額ではなく、税務上のもうけにかかります。架空のモデル事例で、電卓を叩く順に最後まで計算します。

この記事でわかること
  1. 01
    手取りは、6つの順に引いて出す
  2. 02
    取得費は、減価償却の分だけ目減りしている
  3. 03
    売り時は、売った年の1月1日で決まる
  4. 04
    手元には、約3,445万円が残る
  5. 05
    書類がないと、税額は約490万円増える

1. 手取りは、6つの順に引いて出す

計算は順番どおりに進めます。この順で数字を埋めていけば、途中で迷いません。

先に、引く金額をそろえる

先に売買契約書と、毎年の確定申告書を見ます

1譲渡収入を確定する売買契約書の売却代金を使う。固定資産税の精算金を受け取ったら、それも収入に含める
2取得費を計算する土地は買った値段を使う。建物は買った値段から減価償却費の累計を引く
3譲渡費用を集計する売却時の仲介手数料や印紙代など、売るために直接かかった費用を集める

この3つがそろわないと、税額は出せません。とくに取得費は、購入時の書類が見つかるかどうかで金額が変わります(5章)。

そのあと、税額と手取りを出す

ここから手元に残る金額が決まります

4譲渡所得を出す譲渡収入 −(取得費 + 譲渡費用)で、課税の対象になるもうけを出す
5税率を掛ける売った年の1月1日で5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%になる
6手取りを出す売却代金 − 譲渡費用 − 税額。ローンが残っていれば残債の返済も引く

下のモデル事例を、この順で最後まで計算します。

【モデル事例】高橋さんは12年前、賃貸用の中古アパートを4,000万円(土地2,000万円・建物2,000万円)で買いました。毎年の確定申告で建物の減価償却費を計上しており、その累計は1,400万円です。今年、このアパートを3,800万円で売り、仲介手数料など譲渡費用が140万円かかりました。ローンは完済済みです。人物と金額は架空です。

2. 取得費は、減価償却の分だけ目減りしている

4,000万円で買ったから取得費は4,000万円、とはなりません。土地と建物で扱いが分かれます。

土地の取得費は買った値段のまま残る

四角い土地の区画の上に、硬貨を積んだ山がそのまま載っている線画

買った値段が、そのまま残ります

やり方土地は減価償却をしません。モデル事例では2,000万円のままです。

建物の取得費は減価償却の分だけ減る

硬貨を高く積んだ山の上部4割が点線で描かれ、境目の1枚だけが金茶の線画

買った値段から、減価償却費の累計を引きます

やり方2,000万円 − 1,400万円 = 600万円。土地と合わせた取得費は2,600万円です。

理由12年間、減価償却費を経費にして所得税を減らしてきた分が、売るときに取得費の目減りとして出てきます。

譲渡費用を集める

クリップで留めた無地の紙片の束の線画

売るために直接かかった費用だけを集めます

やり方モデル事例では140万円です。中心は売却時の仲介手数料132万円で、3,800万円×3.3%+6.6万円の上限で計算した額です。

注意固定資産税や、売るためではない修繕費は入りません。入るものを引き忘れると、その分だけ税金を多く払います。

高橋さんは4,000万円で買った物件を3,800万円で売りました。それでも、税務上のもうけは1,060万円です。3,800万円 −(2,600万円 + 140万円)= 1,060万円。取得費が2,600万円まで下がっているからです。安く売ったので税金は出ないと思い込むと、賃貸物件の売却でいちばん危ない結果になります(「譲渡費用に入るのは、売るために直接かかった費用だけ」)。

3. 売り時は、売った年の1月1日で決まる

税率は2択です。所有期間で税率が分かれます。数える日は決まっています。

所有期間で、税率がこう変わる(租税特別措置法31条・32条)

起点買った日モデル事例の高橋さんは、12年前に買っている
売った年の1月1日で5年以下短期譲渡。39.63%
売った年の1月1日で5年超長期譲渡。20.315%

売った年の1月1日の時点で数えます。売り出しから引き渡しまで数か月かかるので、長期になる年の1月1日を先に出しておきます。

同じもうけ1,060万円でも、税額はここまで違う

短期譲渡(5年以下)

譲渡所得1,060万円

× 39.63%約420万円

税額約420万円

長期譲渡(5年超)

譲渡所得1,060万円

× 20.315%約215万円

税額約215万円

差は約205万円です。高橋さんは所有12年なので長期譲渡になります。いま短期に当たるなら、何年の1月1日から長期になるかを先に計算します。ただし、待つ間の空室や相場の変化もあるので、税金だけで決めません。

4. 手元には、約3,445万円が残る

長期譲渡になる高橋さんの手取りを、最後まで出します。

項目金額
売却代金3,800万円
譲渡費用(仲介手数料・印紙代など)−140万円
税額(所得税・住民税の概算)−約215万円
手取り約3,445万円
ローンが残っていれば、ここからさらに残債の返済を引きます。残債が大きい物件では、売れたのに手元にほとんど残らないこともあります。売り出す前に、残高証明書で残債を確かめます。税金は売却の翌年の確定申告で納めるので、売却代金を使い切らず、税額の分を取り分けておきます(「不動産を売ったら、翌年3月15日までに分離課税で申告する」)。

5. 書類がないと、税額は約490万円増える

ここまでの計算は、購入時の売買契約書があり、取得費2,600万円を示せる前提でした。書類がないと、同じ物件を同じ値段で売っても税額が変わります。

契約書が見つかった

開いた古い売買契約書の上に、小さな電卓が載っている線画

実際に買った値段で計算できます

やり方取得費は2,600万円です。譲渡所得1,060万円で、長期譲渡の税額は約215万円です。

見つからない

硬貨を高く積んだ山の隣に、硬貨が1枚だけ載った小皿がある線画

売却代金の5%を取得費とみなして計算します

やり方3,800万円の5%は190万円です。3,800万円 −(190万円 + 140万円)で、譲渡所得は3,470万円になります。

注意長期譲渡でも税額は約705万円になります。実額で計算した約215万円との差は、約490万円です。

契約書がなくても、示せることがある

開いた通帳と、ひもで綴じた古い借入の契約書が机に並んでいる線画

通帳の振込記録やローンの書類から、買った値段をたどります

やり方購入時の振込記録、金銭消費貸借契約書、当時の売買の資料を集めます。

解決あきらめて5%で申告する前に、税理士に相談してください(「買った値段がわからないと、取得費は売値の5%になる」)。

まとめ

要点

まず、今日できること

  1. 買ったときの売買契約書を出し、土地と建物の金額を書き写す
  2. 確定申告書の減価償却の明細から、その建物の償却費の累計を書き出す
  3. 売った年の1月1日で所有5年を超えるのは何年からか、カレンダーで確かめる

次に読む:売却を頼む相手は、媒介契約の3種類を知ってから決める不動産を売った税金は、給与と別に計算し、5年で税率が2倍変わる

出典

※確認日:2026年9月3日。本記事の計算は、端数処理や個別の特例を省いた架空のモデルによる概算です。実際の税額は、物件の買い方、減価償却の計算、特例が使えるかどうかで変わります。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務相談ではありません。売買契約の前に、税理士に試算をご依頼ください。

公開 2023.07.29 / 更新 2026.09.07 不動産売却 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)
2
不動産売却の8工程

工程2 売り時を決める

税率は所有期間で倍近く変わります。判定するのは売った日ではなく、売った年の1月1日です。

この記事は 相続対策 工程12「二次相続・活用と売却」 でも紹介しています。

8工程の全体像を見る

「不動産売却」の入口は2つあります

MONITOR 無料モニターを募集しています

筆者(宍倉)が、オンライン90分の無料モニターを募集中です。事前のヒアリングをもとに資料をこちらで用意し、当日は一緒に眺めながら話します。

参加費は無料です。枠が埋まり次第、受付を終了します。

記事を読んでも判断に迷うときは、
個別にご相談いただけます。
宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

工程3 誰に頼むかを決める売却を頼む相手は、媒介契約の3種類を知ってから決める
上に戻る