ホーム賃貸経営 › 賃貸経営の次の一手は、増…

賃貸経営の次の一手は、増やす、法人にする、売るの3つ

書類をそろえ、空室を埋め、家賃を回収し、申告まで終える。ここまで来ると、賃貸経営は一巡します。そのあと何もしないでいると、手取りは少しずつ減っていきます。

次の一手は、増やす、法人にする、売る。手取り・残債・築年数の3つの数字で決めます。買った人も、建てた人も、相続した人も、同じ3つが当てはまります。

この記事でわかること
  1. 01
    まず、3つの数字を並べる
  2. 02
    何もしないと、手取りが減る
  3. 03
    増やす。減価償却をもう一度作る
  4. 04
    法人にするなら、所得1,000万円が目安になる
  5. 05
    売る。5年の線で税率が変わる

1. まず、3つの数字を並べる

次の一手は、数字で決めます。3つを並べます。

手取り

閉じた長財布と、その横の硬貨の小さな山の線画

最後に手元に残る額で、帳簿の利益ではありません

やり方家賃収入から、経費、借入の返済、税金を引きます。

理由帳簿の利益が黒字でも、返済の元金は経費にならないので、現金の増減は利益の額と違います。

残債

天秤の左に家の模型、右に書類の束が載っている線画

借入の残りと、今売ったらいくらかを見ます

やり方借入の残高証明と、査定の額を並べます。

理由売って返しきれるかどうかが、売る道を選べるかの基準です。

築年数

外壁にひびの入った古びたアパートの模型の線画

あと何年、減価償却を経費にできるかを見ます

やり方木造は22年、鉄筋コンクリートは47年が法定耐用年数です。相続した物件は、亡くなった人の経過年数を引き継ぎます。

理由償却が終わる年が、2章の基準になります。

この3つを1枚に書き出すと、選べる手はだいたい絞られます。数字の出し方は「大家の所得税は、家賃から経費を引いた不動産所得にかかる」で説明しています。

2. 何もしないと、手取りが減る

持っているだけで、手取りが減る仕組み(デッドクロス)

砂の大半が上の球に残っている砂時計の線画

買った当初は減価償却が多いです

建物の償却が経費になり、税金が軽いです。返済は利息の割合が高く、利息は経費になります

砂が全部下に落ちきった砂時計の線画

10年、15年後償却が終わる

現金は出ていかないのに、経費だけが消えます。返済は元金の割合が増え、元金は経費になりません。帳簿の利益は増え、税金だけが増えます

減価償却と元金返済の線が入れ替わる時点を、デッドクロスといいます。ここが見えたら、次の一手を考える時期です。

【モデル事例】佐藤さんは、築15年の木造アパートを持っています。家賃収入は変わっていないのに、7年前より手取りが年80万円ほど減りました。調べると、建物の減価償却がほぼ終わり、返済の元金の割合が上がっていました。人物と金額は架空です。

3. 増やす。減価償却をもう一度作る

買い増す

アパートの模型が2つ並び、新しい右側の屋根だけが金茶の線画

新しい減価償却が始まります

やり方物件を買い増すと、新しい償却が始まります。空室のリスクが分散し、規模が大きくなれば管理も委託しやすくなります。

注意おおむね5棟10室を超えると事業的規模になり、青色申告特別控除65万円などが使えます(「5棟10室基準とは」)。

借りられるかは、帳簿で決まる

帳簿の上に通帳と万年筆が重なっている線画

銀行は、いまの物件の収支と、自分の所得を見ます

問題今ある物件の帳簿がきれいでないと、次は借りられません。

解決日々の帳簿づけが、そのまま次の一手の準備です(「自主管理の帳簿づけ」)。

4. 法人にするなら、所得1,000万円が目安になる

所得で見る

小さなビルの模型と、その足元の金茶の箱の線画

不動産所得がおおむね1,000万円を超えたら、検討に入ります

やり方個人の所得税は所得が増えるほど税率が上がり、法人税はほぼ一定です(法人税法66条)。900万円あたりから、個人の税率が法人を上回り始めます。

注意所得で見ます。売上の額は関係ありません。給与や事業の所得と合算されるので、それも含めて見ます。

社会保険まで含めて比べる

留め具だけが金茶の白い救急箱の線画

法人にすると、社会保険の負担が新しく出ます

注意役員報酬を取ると、健康保険と厚生年金の保険料が、会社と本人にかかります。税金だけで比べると判断を誤ります。

解決手取りで比べます(「法人化が得になるのは、所得がいくらからか」「大家の社会保険」)。全体は「不動産法人化の全体像」に続きます。

5. 売る。5年の線で税率が変わる

売却は、いちばん大きく数字が変わる一手です。売却では、所有期間の長さで税率が変わります。

所有期間で、税率がこう変わる(租税特別措置法31条・32条)

起点買った日相続した物件は、亡くなった人が買った日を引き継ぐ
売った年の1月1日で5年以下短期譲渡。所得税と住民税で39.63%
売った年の1月1日で5年超長期譲渡。20.315%

買った日から5年ではなく、売った年の1月1日で数えます。年末に売るか年明けまで待つかで、税額が倍近く変わることがあります。

相続した物件を売るなら

古びた表紙の冊子を、片方の手からもう片方の手へ渡している手元の線画

買った値段と日付は、亡くなった人のものを引き継ぎます

やり方譲渡所得は、亡くなった人が買った値段と日付で計算します(所得税法60条)。

注意買った値段が分からないと、売値の5%で計算することになり、税金が増えます(「買った値段がわからないと、取得費は売値の5%になる」)。

解決相続税の申告期限の翌日から3年以内に売れば、払った相続税の一部を取得費に足せます(租税特別措置法39条)。売る手順は「不動産売却の全体像」に続きます。

まとめ

要点

まず、今日できること

  1. 物件ごとに、去年1年の手取り(家賃−経費−返済−税金)を出します
  2. 借入の残高と、建物の未償却残高を確かめます。償却が終わる年を書きます
  3. 売る道が候補なら、売った年の1月1日で所有5年を超えるのがいつかを出します

次に読む:不動産法人化の全体像不動産売却の全体像賃貸経営の全体像

出典

※確認日:2026年9月3日。税率は復興特別所得税を含みます。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務相談ではありません。どの道を選ぶかは、物件の数字を見たうえで税理士にご確認ください。

公開 2026.08.07 / 更新 2026.09.07 賃貸経営 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)
全10STEPの全体像を見る

「賃貸経営」の入口は2つあります

MONITOR 無料モニターを募集しています

筆者(宍倉)が、オンライン90分の無料モニターを募集中です。事前のヒアリングをもとに資料をこちらで用意し、当日は一緒に眺めながら話します。

参加費は無料です。枠が埋まり次第、受付を終了します。

記事を読んでも判断に迷うときは、
個別にご相談いただけます。
宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

STEP 8 名義を変えて、経営を引き継ぐ相続した不動産の名義変更は、3年以内が義務
上に戻る