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賃貸経営の次の一手──増やす・法人化する・売る、3つの分かれ道

公開 2026.08.07 賃貸経営 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)

書類をそろえ、空室を埋め、家賃を回収し、申告まで終える。ここまで来ると、賃貸経営は一巡します。問題は、そのあと何もしないでいると、だんだん手取りが減っていくことです。

次の一手は3つしかありません。増やす・法人にする・売る。決め手になるのは、手取り・残債・築年数の3つの数字です。どれを選ぶにしても、まず自分の数字を並べるところから始まります。

※本記事の人物・金額はすべて架空のモデル事例です。一般的な仕組みを解説するもので、個別の税務・法務相談ではありません。

→ 全体の流れは 賃貸経営の全体像。この記事は章9「次の一手を決める」の解説です。

この記事でわかること


1. まず3つの数字を並べる

次の一手は、気分ではなく数字で決めます。並べるのは3つです。

この3つを1枚に書き出すと、選べる手はだいたい絞られます。→ 大家の所得税──不動産所得の計算から確定申告までの基本

2. 何もしないと手取りが減る——デッドクロス

賃貸経営には、持っているだけで手取りが減っていく仕組みがあります。原因は2つです。

この2本の線が入れ替わる時点をデッドクロスと呼びます。帳簿の利益は増えるのに、手元の現金は減る。税金だけが増えていく状態です。

【モデル事例】 築15年の木造アパートを持つ佐藤さん(仮)。家賃収入は変わっていないのに、7年前より手取りが年80万円ほど減った。調べると、建物の減価償却がほぼ終わり、返済の元金割合が上がっていた。

デッドクロスが見えたら、次の一手を考える時期です。3つの道は、どれもこれへの答えになっています。

3. 増やす——償却をもう一度作る

物件を買い増すと、新しい減価償却が始まります。空室のリスクは分散し、規模が大きくなれば管理も委託しやすくなります。

ただし、買えるかどうかは融資で決まります。銀行が見るのは、いまの物件の収支と、自分の給与や事業の所得です。今ある物件の帳簿がきれいでないと、次は借りられません。日々の帳簿づけが、そのまま次の一手の準備になります。

なお、部屋数が増えると税制の扱いも変わります。おおむね5棟10室を超えると事業的規模となり、青色申告特別控除65万円などが使えます。→ 5棟10室基準とは──事業的規模で変わる4つの税制と判定の実務

4. 法人にする——目安は所得1,000万円

個人の所得税は、所得が増えるほど税率が上がります。法人税はほぼ一定です。だから、ある水準を超えると法人のほうが軽くなります。

見るところ 目安
不動産所得 おおむね1,000万円を超えたら検討に入る
税率が交差する所得 900万円あたりから、個人の税率が法人を上回り始める
ほかの所得 給与や事業所得と合算されるので、それも含めて見る

売上ではなく所得で見るのがポイントです。また、法人にすると社会保険の負担が新しく発生します。税金だけで比べると判断を誤ります。→ 法人化はいくらから得か不動産法人化の全体像

5. 売る——5年の線で税率が変わる

売却は、いちばん大きく数字が動く一手です。ここで効くのが所有期間の線です。

買った日から5年ではなく、売った年の1月1日で数えるところが落とし穴です。年末に売るか、年明けまで待つかで税額が倍近く変わることがあります(租税特別措置法31条・32条)。→ 不動産売却の譲渡所得税──税率が2倍変わる「5年」の判定不動産売却の全体像

まとめ

→ 次に読む:不動産売却の全体像(売る道を選んだとき)/不動産法人化の全体像(法人にする道を選んだとき)


出典

※確認日:2026年8月7日。復興特別所得税を含む税率です。個別の判断は、物件の数字を見たうえでご相談ください。

「賃貸経営」の入口は2つあります

記事を読んでも判断に迷うときは、
個別にご相談いただけます。
宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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