書類をそろえ、空室を埋め、家賃を回収し、申告まで終える。ここまで来ると、賃貸経営は一巡します。そのあと何もしないでいると、手取りは少しずつ減っていきます。
次の一手は、増やす、法人にする、売る。手取り・残債・築年数の3つの数字で決めます。買った人も、建てた人も、相続した人も、同じ3つが当てはまります。
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1. まず、3つの数字を並べる
次の一手は、数字で決めます。3つを並べます。
手取り

最後に手元に残る額で、帳簿の利益ではありません
やり方家賃収入から、経費、借入の返済、税金を引きます。
理由帳簿の利益が黒字でも、返済の元金は経費にならないので、現金の増減は利益の額と違います。
残債

借入の残りと、今売ったらいくらかを見ます
やり方借入の残高証明と、査定の額を並べます。
理由売って返しきれるかどうかが、売る道を選べるかの基準です。
築年数

あと何年、減価償却を経費にできるかを見ます
やり方木造は22年、鉄筋コンクリートは47年が法定耐用年数です。相続した物件は、亡くなった人の経過年数を引き継ぎます。
理由償却が終わる年が、2章の基準になります。
この3つを1枚に書き出すと、選べる手はだいたい絞られます。数字の出し方は「大家の所得税は、家賃から経費を引いた不動産所得にかかる」で説明しています。
2. 何もしないと、手取りが減る
持っているだけで、手取りが減る仕組み(デッドクロス)

買った当初は減価償却が多いです
建物の償却が経費になり、税金が軽いです。返済は利息の割合が高く、利息は経費になります

10年、15年後償却が終わる
現金は出ていかないのに、経費だけが消えます。返済は元金の割合が増え、元金は経費になりません。帳簿の利益は増え、税金だけが増えます
減価償却と元金返済の線が入れ替わる時点を、デッドクロスといいます。ここが見えたら、次の一手を考える時期です。
【モデル事例】佐藤さんは、築15年の木造アパートを持っています。家賃収入は変わっていないのに、7年前より手取りが年80万円ほど減りました。調べると、建物の減価償却がほぼ終わり、返済の元金の割合が上がっていました。人物と金額は架空です。
3. 増やす。減価償却をもう一度作る
買い増す

新しい減価償却が始まります
やり方物件を買い増すと、新しい償却が始まります。空室のリスクが分散し、規模が大きくなれば管理も委託しやすくなります。
注意おおむね5棟10室を超えると事業的規模になり、青色申告特別控除65万円などが使えます(「5棟10室基準とは」)。
借りられるかは、帳簿で決まる

銀行は、いまの物件の収支と、自分の所得を見ます
問題今ある物件の帳簿がきれいでないと、次は借りられません。
解決日々の帳簿づけが、そのまま次の一手の準備です(「自主管理の帳簿づけ」)。
4. 法人にするなら、所得1,000万円が目安になる
所得で見る

不動産所得がおおむね1,000万円を超えたら、検討に入ります
やり方個人の所得税は所得が増えるほど税率が上がり、法人税はほぼ一定です(法人税法66条)。900万円あたりから、個人の税率が法人を上回り始めます。
注意所得で見ます。売上の額は関係ありません。給与や事業の所得と合算されるので、それも含めて見ます。
社会保険まで含めて比べる

法人にすると、社会保険の負担が新しく出ます
注意役員報酬を取ると、健康保険と厚生年金の保険料が、会社と本人にかかります。税金だけで比べると判断を誤ります。
解決手取りで比べます(「法人化が得になるのは、所得がいくらからか」「大家の社会保険」)。全体は「不動産法人化の全体像」に続きます。
5. 売る。5年の線で税率が変わる
売却は、いちばん大きく数字が変わる一手です。売却では、所有期間の長さで税率が変わります。
所有期間で、税率がこう変わる(租税特別措置法31条・32条)
買った日から5年ではなく、売った年の1月1日で数えます。年末に売るか年明けまで待つかで、税額が倍近く変わることがあります。
相続した物件を売るなら

買った値段と日付は、亡くなった人のものを引き継ぎます
やり方譲渡所得は、亡くなった人が買った値段と日付で計算します(所得税法60条)。
注意買った値段が分からないと、売値の5%で計算することになり、税金が増えます(「買った値段がわからないと、取得費は売値の5%になる」)。
解決相続税の申告期限の翌日から3年以内に売れば、払った相続税の一部を取得費に足せます(租税特別措置法39条)。売る手順は「不動産売却の全体像」に続きます。
まとめ
- 次の一手は、増やす、法人にする、売るの3つで、手取り・残債・築年数で決めます
- 償却が終わり、元金の返済が増えると、利益が出ているのに現金が減ります
- 法人化の目安は所得1,000万円で、社会保険まで含めて手取りで比べます
- 売るなら、売った年の1月1日で5年を超えているかを確かめます
- 相続した物件は、買った値段と日付を引き継ぎます。取得費加算は3年以内にします
まず、今日できること
- 物件ごとに、去年1年の手取り(家賃−経費−返済−税金)を出します
- 借入の残高と、建物の未償却残高を確かめます。償却が終わる年を書きます
- 売る道が候補なら、売った年の1月1日で所有5年を超えるのがいつかを出します
次に読む:不動産法人化の全体像/不動産売却の全体像/賃貸経営の全体像
出典
- 租税特別措置法31条(長期譲渡所得の課税の特例)、32条(短期譲渡所得の課税の特例)、39条(相続財産を譲渡した場合の取得費加算)
- 所得税法60条(取得費・取得時期の引継ぎ)、所得税基本通達26-9(事業的規模の判定)
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一
- 法人税法66条(法人税の税率)、健康保険法3条・厚生年金保険法9条(法人の役員は被保険者)
※確認日:2026年9月3日。税率は復興特別所得税を含みます。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務相談ではありません。どの道を選ぶかは、物件の数字を見たうえで税理士にご確認ください。
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