取得費の次には、譲渡費用が引けます。取得費ほど大きくはありません。税額は100万円単位で変わります。そして、入れてはいけないものを入れると、あとで税務署に否認されます。
売るために直接かかった費用だけが、譲渡費用に入ります。持っている間にかかった費用と、売った後の自分の都合でかかった費用は入りません。ここを区別できれば、ほとんど迷いません。
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1. 売るために直接かかった費用かどうかで決まる
譲渡費用は、資産を譲渡するために直接要した費用とされています(所得税基本通達33-7)。判断は、2つの問いで足ります。
その費用が譲渡費用になるか
その売買がなければかからなかった費用か、持っている間の維持・管理のための費用か
その支出は……
維持管理のための費用は、売らなくても発生します。この一点で、迷うものの大半が片付きます。
2. 入るものと、入らないものがある
実際に出てくる費用を並べると、次のようになります。左の列は、どれもその売買のためにだけかかった支出です。
| 譲渡費用に入る | 入らない |
|---|---|
| 売却時の仲介手数料 | 売る前にした修繕・リフォーム代 |
| 売買契約書の印紙税(売主の負担分) | 固定資産税・都市計画税 |
| 貸していた人に払った立退料 | 抵当権抹消の登記費用 |
| 土地を売るための建物の取壊し費用と取壊し損失 | 引っ越し代・仮住まいの家賃 |
| 売るために行った測量費 | 遺産分割のためにかかった費用 |
| より有利な条件で売るために解除した契約の違約金 | 売却代金の取立てにかかった費用 |
| 借地権を売るときの地主への名義書換料 | 売却の申告を頼んだ税理士への報酬 |
仲介手数料、立退料、建物の取壊し費用は、金額が大きくなりやすいです。売却のために借りたお金の利子は、譲渡費用になりません(所得税基本通達33-8)。表にない支出が出てきたら、1章の2つの問いに戻します。
3. 抵当権抹消とリフォーム代は間違えやすい
この2つは、売却のためにかかったように見えます。どちらも譲渡費用には入りません。
抵当権抹消の登記費用がかかる

自分の借金を返し、権利関係をきれいにします
問題買主に渡すには抵当権を消す必要があるので、売却のための費用だと思いがちです。
理由譲渡のために直接要した費用にはあたらないとされています。金額も小さいので、無理に入れません。
売る前にリフォーム代がかかる

見栄えをよくして高く売るためでも、建物を維持・改良します
問題高く売るために直したのだから譲渡費用だ、とは扱われません。
解決その支出が建物の価値を高めるものなら、取得費(資本的支出)として計上できることがあります。捨てる前に、取得費の側で拾えないかを確かめます(「構築物・附属設備・修繕費の分け方」)。
4. 固定資産税の精算金は、引く側ではなく足す側になる
決済日に、買主から固定資産税と都市計画税の日割り分を受け取ります。これは売買代金の一部として扱い、費用にはしません。
受け取った精算金を、どちらに置くか

よくある間違い引く側に入れる
譲渡費用として引いてしまいます。収入も費用も、両方ずれます

正しい扱い譲渡収入に足す
売買代金の一部として、売った金額に加えます
毎年の固定資産税そのものも、譲渡費用にはなりません。持っている間の維持・管理の費用だからです。日割りの精算金だけが、収入に足す側に入ります。
【モデル事例】山本さんは2,500万円で自宅を売りました。仲介手数料89万円(税込)、印紙税1万円、境界確定の測量費35万円で、譲渡費用は125万円になりました。一方、売却前に張り替えた壁紙18万円と、抵当権抹消の登記費用2万円は譲渡費用に入れられませんでした。人物と金額は架空です。
入るものと入らないものは、同じ売却の中で混ざって出てきます。支払った順に並べず、入る・入らないで分けてから合計します。
5. 領収書は7年残す
譲渡費用は、支払った証拠がなければ引けません。決済が終わったら、その日のうちにまとめます。
1つの封筒にまとめる

売買契約書、領収書、請求書、精算書を1か所にまとめます
やり方印紙を貼った売買契約書の写し、仲介手数料の領収書、測量・取壊し・立退きの請求書と振込控え、司法書士からの精算書を入れます。
解決取得費の資料も同じ封筒に入れておくと、翌年の申告で探さずに済みます。
7年分を残す

申告の書類は原則5年保存し、7年残せば、どちらの期間にも届きます
やり方税務署が申告内容を更正・決定できる期間は原則5年、偽りその他不正の行為があった場合は7年です(国税通則法70条1項・5項)。
注意問い合わせは申告の1〜2年後に来ることが多いです。そこまでで捨てないようにします。
領収書がそろっていれば、税務署から問い合わせが来ても、その場で示せます。そろっていなければ、実際に払った費用でも引けません。決済の日のうち、記憶が新しいうちに集めれば、いちばん楽です。
まとめ
- 譲渡費用は売るために直接かかった費用だけで、維持・管理の費用は入りません
- 仲介手数料、印紙税、立退料、取壊し費用、測量費などが入ります
- 抵当権抹消の登記費用、売る前のリフォーム代、固定資産税は入りません
- リフォーム代は、価値を高めるものなら取得費で拾えることがあります
- 固定資産税の日割り精算金は、引く側ではなく譲渡収入に足す側になります
まず、今日できること
- 売却で支払った領収書と請求書を集め、1つの封筒に入れる
- その1枚ずつに「その売買がなければ、かからなかったか」を当ててみる
- 入らないと分かった支出は、取得費の側で拾えないかを確かめてから外す
次に読む:売却の特例は4つあり、3,000万円控除には3年の期限がある/不動産を売った税金は、給与と別に計算し、5年で税率が2倍変わる
出典
- 所得税法33条3項(譲渡所得の金額)
- 所得税基本通達33-7(譲渡費用の範囲)、33-8(借入金利子等)
- 国税庁タックスアンサー No.3255(譲渡費用となるもの)
- 国税通則法70条(更正・決定等の期間制限)
※確認日:2026年9月3日。個別の費用が譲渡費用になるかは、契約の内容によって判断が分かれることがあります。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務相談ではありません。金額の大きい支出は、申告の前に税理士にご確認ください。
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