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譲渡費用に入るのは、売るために直接かかった費用だけ

取得費の次には、譲渡費用が引けます。取得費ほど大きくはありません。税額は100万円単位で変わります。そして、入れてはいけないものを入れると、あとで税務署に否認されます。

売るために直接かかった費用だけが、譲渡費用に入ります。持っている間にかかった費用と、売った後の自分の都合でかかった費用は入りません。ここを区別できれば、ほとんど迷いません。

この記事でわかること
  1. 01
    売るために直接かかった費用かどうかで決まる
  2. 02
    入るものと、入らないものがある
  3. 03
    抵当権抹消とリフォーム代は間違えやすい
  4. 04
    固定資産税の精算金は、引く側ではなく足す側になる
  5. 05
    領収書は7年残す

1. 売るために直接かかった費用かどうかで決まる

譲渡費用は、資産を譲渡するために直接要した費用とされています(所得税基本通達33-7)。判断は、2つの問いで足ります。

その費用が譲渡費用になるか

その売買がなければかからなかった費用か、持っている間の維持・管理のための費用か

その支出は……

その売買のためにだけ、かかった譲渡費用になる仲介手数料、印紙税、立退料、取壊し費用、測量費など
売る売らないにかかわらず、かかる譲渡費用にならない固定資産税、修繕費、管理費など。持っている間の維持・管理の費用

維持管理のための費用は、売らなくても発生します。この一点で、迷うものの大半が片付きます。

2. 入るものと、入らないものがある

実際に出てくる費用を並べると、次のようになります。左の列は、どれもその売買のためにだけかかった支出です。

譲渡費用に入る入らない
売却時の仲介手数料売る前にした修繕・リフォーム代
売買契約書の印紙税(売主の負担分)固定資産税・都市計画税
貸していた人に払った立退料抵当権抹消の登記費用
土地を売るための建物の取壊し費用と取壊し損失引っ越し代・仮住まいの家賃
売るために行った測量費遺産分割のためにかかった費用
より有利な条件で売るために解除した契約の違約金売却代金の取立てにかかった費用
借地権を売るときの地主への名義書換料売却の申告を頼んだ税理士への報酬

仲介手数料、立退料、建物の取壊し費用は、金額が大きくなりやすいです。売却のために借りたお金の利子は、譲渡費用になりません(所得税基本通達33-8)。表にない支出が出てきたら、1章の2つの問いに戻します。

3. 抵当権抹消とリフォーム代は間違えやすい

この2つは、売却のためにかかったように見えます。どちらも譲渡費用には入りません。

抵当権抹消の登記費用がかかる

申請書の左上に、金茶の収入印紙が1枚貼られている線画

自分の借金を返し、権利関係をきれいにします

問題買主に渡すには抵当権を消す必要があるので、売却のための費用だと思いがちです。

理由譲渡のために直接要した費用にはあたらないとされています。金額も小さいので、無理に入れません。

売る前にリフォーム代がかかる

布を入れたブリキのバケツと、立てかけた丸めた壁紙の線画

見栄えをよくして高く売るためでも、建物を維持・改良します

問題高く売るために直したのだから譲渡費用だ、とは扱われません。

解決その支出が建物の価値を高めるものなら、取得費(資本的支出)として計上できることがあります。捨てる前に、取得費の側で拾えないかを確かめます(「構築物・附属設備・修繕費の分け方」)。

4. 固定資産税の精算金は、引く側ではなく足す側になる

決済日に、買主から固定資産税と都市計画税の日割り分を受け取ります。これは売買代金の一部として扱い、費用にはしません。

受け取った精算金を、どちらに置くか

並んだ2つの木箱のうち、左の箱に硬貨をひと山入れている手元の線画

よくある間違い引く側に入れる

譲渡費用として引いてしまいます。収入も費用も、両方ずれます

並んだ2つの木箱のうち、縁が金茶の右の箱に硬貨をひと山入れている手元の線画

正しい扱い譲渡収入に足す

売買代金の一部として、売った金額に加えます

毎年の固定資産税そのものも、譲渡費用にはなりません。持っている間の維持・管理の費用だからです。日割りの精算金だけが、収入に足す側に入ります。

【モデル事例】山本さんは2,500万円で自宅を売りました。仲介手数料89万円(税込)、印紙税1万円、境界確定の測量費35万円で、譲渡費用は125万円になりました。一方、売却前に張り替えた壁紙18万円と、抵当権抹消の登記費用2万円は譲渡費用に入れられませんでした。人物と金額は架空です。

入るものと入らないものは、同じ売却の中で混ざって出てきます。支払った順に並べず、入る・入らないで分けてから合計します。

5. 領収書は7年残す

譲渡費用は、支払った証拠がなければ引けません。決済が終わったら、その日のうちにまとめます。

1つの封筒にまとめる

口の縁が金茶の大きな封筒に、契約書と領収書を数枚まとめて入れている手元の線画

売買契約書、領収書、請求書、精算書を1か所にまとめます

やり方印紙を貼った売買契約書の写し、仲介手数料の領収書、測量・取壊し・立退きの請求書と振込控え、司法書士からの精算書を入れます。

解決取得費の資料も同じ封筒に入れておくと、翌年の申告で探さずに済みます。

7年分を残す

棚に無地の書類箱が7つ並び、いちばん右の1つだけが金茶の線画

申告の書類は原則5年保存し、7年残せば、どちらの期間にも届きます

やり方税務署が申告内容を更正・決定できる期間は原則5年、偽りその他不正の行為があった場合は7年です(国税通則法70条1項・5項)。

注意問い合わせは申告の1〜2年後に来ることが多いです。そこまでで捨てないようにします。

領収書がそろっていれば、税務署から問い合わせが来ても、その場で示せます。そろっていなければ、実際に払った費用でも引けません。決済の日のうち、記憶が新しいうちに集めれば、いちばん楽です。

まとめ

要点

まず、今日できること

  1. 売却で支払った領収書と請求書を集め、1つの封筒に入れる
  2. その1枚ずつに「その売買がなければ、かからなかったか」を当ててみる
  3. 入らないと分かった支出は、取得費の側で拾えないかを確かめてから外す

次に読む:売却の特例は4つあり、3,000万円控除には3年の期限がある不動産を売った税金は、給与と別に計算し、5年で税率が2倍変わる

出典

※確認日:2026年9月3日。個別の費用が譲渡費用になるかは、契約の内容によって判断が分かれることがあります。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務相談ではありません。金額の大きい支出は、申告の前に税理士にご確認ください。

公開 2026.08.07 / 更新 2026.09.07 不動産売却 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)

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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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