取得費と譲渡費用を引いても、まだ大きなもうけが残ることがあります。そこから先は、特例で削れます。使えれば税額がゼロになることも珍しくありません。
ただし、特例にはほぼ全部に期限があります。しかも数え方が独特で、住まなくなってから3年、相続してから3年が期限になります。この期限を1日でも過ぎると、何千万円ぶんの控除がまるごと消えます。
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1. 使えるかもしれない特例は4つある
売却で使える特例は数多くあるように見えます。個人の不動産オーナーが実際に使える特例は、次の4つに絞られます。
マイホームの3,000万円控除を使う

自分が住んでいた家を売ったら、もうけから最大3,000万円を引けます
やり方所有期間の長さは問われません(租税特別措置法35条1項)。
注意住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ります(2章)。
空き家の3,000万円控除を使う

親が一人で住んでいた実家を相続して売ったら、3,000万円を引けます
やり方同じ35条の3項です。条件が6つあります(3章)。
10年超のマイホームの軽減税率を使う

税率そのものが下がります
やり方3,000万円控除と重ねて使えます(同31条の3)。
相続税の取得費加算を使う

払った相続税の一部を、取得費に足せます
やり方相続の申告期限の翌日から3年以内に売ります(同39条)。
2. マイホームの3,000万円控除は、住まなくなってから3年以内に使う
期限の数え方に注意してください。「3年」で切れるのではありません。
マイホームの3,000万円控除には期限がある(租税特別措置法35条1項)
ほかにも条件があります。売った相手が親子や夫婦など特別な関係でないこと、前年・前々年にこの特例や買換えの特例を使っていないことです。家を取り壊して土地だけを売るなら、取り壊しから1年以内に契約し、その間に他に貸していないことです。
3. 空き家の3,000万円控除は、条件が6つある
親が一人で住んでいた実家を相続し、それを売ったときにも3,000万円を引ける特例があります(同35条3項)。条件が多いので、表で確かめます。
| 条件 | 中身 |
|---|---|
| 建築時期 | 昭和56年5月31日以前に建築された家屋(旧耐震) |
| 住んでいた人 | 亡くなる直前まで、被相続人が一人で住んでいたこと(老人ホーム入所は一定の要件で可) |
| その後の使い方 | 相続してから売るまで、誰も住まず、貸さず、事業にも使っていないこと |
| 売り方 | 耐震改修して売るか、取り壊して土地として売ること |
| 金額 | 売却代金が1億円以下 |
| 期限 | 相続の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること |
2024年1月1日以後の売却からは、買主が引き渡しの後、翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しをした場合でも認められる改正があり、売主が先に工事をしなくてもよくなりました。一方で、同じ改正により、相続人が3人以上いる場合の控除額は1人あたり2,000万円に下がりました。兄弟3人で共有相続した実家を売るなら、3,000万円ではなく2,000万円ずつです。この特例の適用期限は、2027年(令和9年)12月31日までです。
4. 所有10年超のマイホームは、税率も下がる
売った年の1月1日で所有期間が10年を超えるマイホームなら、税率そのものが下がります(同31条の3)。3,000万円控除と重ねて使えます。
税率が2段になる

控除後のもうけのうち、6,000万円以下の部分が14.21%になります
やり方6,000万円を超える部分は20.315%です。所得税、復興特別所得税、住民税を合わせた率です。
3,000万円控除と重ねられる

先に3,000万円を引き、残りに軽い税率をかけます
やり方10年は、買った日からではなく、売った年の1月1日時点から数えます。
注意年末に売るか年明けまで待つかで、使えるかどうかが変わることがあります。
【モデル事例】12年住んだ自宅を売り、もうけが4,000万円出ました。3,000万円控除で1,000万円まで下がり、さらに軽減税率14.21%が使えて、税額はおよそ142万円になりました。控除も軽減税率もなければ、約813万円でした。人物と金額は架空です。
5. 相続した実家は、どちらか一方しか使えない
相続した実家を売るとき、空き家の3,000万円控除と相続税の取得費加算は、どちらか一方だけ使えます。売る前に、この2つと期限を最初に確かめます。
金額を試算してから選ぶ

空き家の3,000万円控除と、取得費加算を比べます
やり方両方で税額を出して、有利なほうを選びます。取得費加算の期限は、相続税の申告期限の翌日から3年以内、相続開始から数えると3年10か月です。
注意相続した不動産をどう分けるかで、使える特例も人数も変わります(「不動産は切って分けられない。分け方は4つある」)。
確認書は、市区町村からもらう

空き家の控除には、被相続人居住用家屋等確認書が要ります
やり方物件のある市区町村が出します。取得に時間がかかるので、売却の日程と並行して動きます。
注意売れてから申請すると、申告に間に合わないことがあります。
まとめ
- 使える特例は4つあり、3,000万円控除が2種類、軽減税率、相続税の取得費加算があります
- マイホームの3,000万円控除は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに使います
- 空き家の3,000万円控除は条件が6つあり、相続人3人以上なら1人2,000万円、期限は2027年末になります
- 所有10年超のマイホームは軽減税率14.21%になり、3,000万円控除と重ねられます
- 相続した実家では、空き家控除と取得費加算のどちらか一方を選びます
まず、今日できること
- その家に住まなくなった日を書き出し、3年後の年の12月31日を出します
- 相続した実家なら、亡くなった日と、家が建てられた年を登記事項証明書で確かめます
- 売った年の1月1日で所有期間が10年を超えるかを、登記の日付から数えます
出典
- 租税特別措置法35条1項(居住用財産の譲渡所得の特別控除)、同3項(被相続人の居住用財産に係る特例)
- 租税特別措置法31条の3(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)
- 租税特別措置法39条(相続財産に係る譲渡所得の課税の特例)
- 令和5年度税制改正(空き家特例の期限延長・買主による工事の容認・相続人3人以上の控除額)
※確認日:2026年9月3日。特例には適用期限があり、改正で条件が変わります。使う年の要件を必ず確認してください。試算の税額は概算です。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務相談ではありません。どの特例を使うかは、売る前に税理士にご確認ください。
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