相続税の10か月は知られています。その手前に4か月の期限があります。亡くなった人のその年の所得税を、相続人が代わりに申告する準確定申告です。
家賃収入があった人は、ほぼ対象です。期限、家賃と控除の区切り方、いちばん落としやすい青色申告の引き継ぎを順に説明します。
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1. 期限は4か月で、相続税より先に来る
亡くなったあとの、税金の期限
1月1日から3月15日までに亡くなり、前年分の申告がまだなら、前年分も同じ4か月以内です。2月10日に亡くなれば、前年分と、1月1日から2月10日までの分の2回分を、6月10日までに出します。
誰が出すか

相続人全員が連署して、1通出します
やり方付表に各人の氏名・住所・相続分を書きます。提出先は、亡くなった人の納税地の税務署です(所得税法124条・125条)。納める税金は、相続分に応じて負担します。
注意別々に出すこともできます。その場合は、ほかの相続人に申告の内容を知らせます。
出す必要がある人

家賃収入があった人は、ほぼ対象になります
やり方事業所得か不動産所得があった。給与を2か所以上から受けていた。給与が2,000万円を超えていた。年金が400万円を超えていた。不動産や株を売った。どれかに当てはまれば出します。
注意年金だけで額が小さければ、不要なこともあります。医療費控除で還付になるなら、出したほうが得です。
2. 亡くなった年の所得は、死亡日で2つに分かれる
亡くなった年の所得税は、死亡日で分かれます

1月1日〜死亡日亡くなった人の分になります
相続人が代わりに準確定申告をします。期限は4か月以内になります

死亡日の翌日〜12月31日引き継いだ人の分になります
相続人自身が確定申告をします。期限は翌年3月15日になります
家賃は、支払期日で分けます。死亡日までに期日が来た家賃は、入金がまだでも亡くなった人の収入です。死亡後に期日が来る家賃は、相続人の不動産所得です。どこで区切ったか、あとで説明できるようにしておきます。
3. 控除と経費は、死亡日で区切る
医療費・保険料

死亡日までに払った分だけが対象になります
やり方医療費控除、社会保険料・生命保険料・地震保険料の控除は、死亡日までに払った分が対象です。
注意死亡後に相続人が払った入院費は、ここには入りません。そのかわり、相続税の計算で債務として引けます(相続税法13条)。どちらで引くかは、払った時期で決まります。
配偶者控除・扶養控除・基礎控除

死亡日の状態で判定します。基礎控除は満額になります
やり方配偶者控除と扶養控除は、死亡日の現況で判定します。基礎控除は月割りせず、満額です。
例青色申告特別控除も、要件を満たしていれば使えます。
建物の減価償却

1月1日から死亡日までを月割りします
やり方亡くなった人の分は、死亡日までの月数で計上します。相続人は、相続した日から自分の不動産所得で続けます。
注意亡くなった人の取得価額、未償却残高、経過年数を引き継ぎます(所得税法施行令126条2項)。相続税評価額で買い直したことにはなりません。
4. 青色申告は引き継がれない。相続人が期限内に申請する
青色申告の引き継ぎは、賃貸物件の相続でいちばん金額に影響します。亡くなった人が青色申告でも、相続人には自動で引き継がれません。相続人が自分で「所得税の青色申告承認申請書」を出します(所得税法144条)。出さなければ白色申告です。65万円(または55万円)の青色申告特別控除も、専従者給与も使えません。
相続人の青色申告承認申請は、いつまでか
死亡日が1月1日〜8月31日なら、死亡日から4か月以内
年の後半に亡くなった場合は、期限が短くなります
亡くなった人が白色申告だった場合や、相続人がすでにほかの事業を営んでいた場合は、原則どおりの期限(業務を始めた日から2か月以内、またはその年の3月15日)です。
5. 消費税の期限も4か月で、納めた税と戻った税は扱いが違う
消費税も4か月以内に申告する

店舗や駐車場の収入が多かった家は、対象になります
やり方亡くなった人が消費税の課税事業者だったなら、消費税の準確定申告も4か月以内です(消費税法45条2項・3項)。
注意引き継いだ相続人が課税事業者になるかは、亡くなった人の基準期間の課税売上高で判定します(消費税法10条)。自分の売上が小さくても、引き継いだ年から課税事業者になることがあります。
納めた税と、戻った税は扱いが違う

納めた税は債務になり、戻った税は財産になります
やり方準確定申告で納めた所得税と住民税は、亡くなった人の債務として、相続税の計算で引けます。還付された所得税は、相続財産として相続税の対象です。
注意還付金に付く還付加算金は、相続財産ではなく、受け取った相続人の雑所得です。還付金は遺産分割の対象にもなるので、小さくても漏らさないようにします。
まとめ
- 準確定申告は、相続を知った日の翌日から4か月以内に行い、相続税の10か月より先に来る
- 相続人全員が連署して1通出し、1〜3月の死亡なら前年分も出す
- 家賃も控除も、死亡日で区切る
- 青色申告は引き継がれず、相続人が死亡日で決まる期限内に申請する
- 納めた税は債務控除になり、還付金は相続財産になる
まず、今日できること
- 亡くなった日の翌日から4か月後の日付を書く。1〜3月なら、前年分の申告が済んでいるかも確かめる
- 家賃の支払期日と入金を、死亡日の前後で分けて表にする
- 相続人の青色申告承認申請書の期限を、死亡日から出す。開業届もあわせて出す
出典
- 所得税法124条・125条(準確定申告)、144条(青色申告の承認の申請)、所得税基本通達144-1(相続で業務を引き継いだ場合の申請期限)
- 所得税法施行令126条2項(相続で取得した減価償却資産の取得価額の引継ぎ)
- 消費税法45条2項・3項(死亡の場合の確定申告)、10条(相続があった場合の納税義務の免除の特例)
- 相続税法13条(債務控除)
※確認日:2026年9月3日。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務相談ではありません。控除の区切りや青色申告の期限は、亡くなった日と相続人の状況で変わります。財産の一覧と亡くなった人の前年の申告書を用意したうえで、税理士にご確認ください。
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