売ろうと思って最初にやることは、不動産会社に連絡することではありません。自分で相場の見当をつけておくことです。それがないと、出てきた査定額が高いのか安いのか判断できません。
相場は3方向から挟みます。実際に売れた価格、国が公表している価格、不動産会社の査定。この3つがそろって初めて、売り出す値段を自分で決められます。
※本記事の人物・金額はすべて架空のモデル事例です。一般的な仕組みを解説するもので、個別の税務・法務相談ではありません。
→ 全体の流れは 不動産売却の全体像。この記事は章1「いくらで売れるかを知る」の解説です。
この記事でわかること
- 売り出し価格ではなく成約価格を見る理由と、無料で見られる場所
- 手元の書類から相場を逆算する方法(路線価 ÷ 0.8)
- 査定は3社以上。高い査定額に飛びついてはいけない理由
- 相場を知ることが、そのまま税金の見積りにつながる
1. 売り出し価格ではなく、成約価格を見る
不動産のポータルサイトに並んでいるのは、売り出し価格です。売主の希望額であって、その値段で売れた証拠ではありません。相場として見るべきなのは、実際に取引が成立した成約価格です。
| 調べる場所 | わかること | 費用 |
|---|---|---|
| レインズ・マーケット・インフォメーション | マンション・戸建ての成約価格(面積・築年・最寄駅つき) | 無料 |
| 国土交通省 不動産情報ライブラリ | 実際の取引価格。地図から地域を選んで見られる | 無料 |
| 不動産ポータルサイト | いま出ている売り出し価格(=上限の目安) | 無料 |
成約価格は、同じ地域・同じくらいの面積・近い築年数で3〜5件そろえます。1件だけ見ると、事情のある取引に引っ張られます。
2. 手元の書類から逆算する
公的な価格からも見当がつきます。土地には、目的の違う価格が何種類かあり、おおよその関係がわかっているからです。
- 公示地価……国が毎年発表する標準地の価格。時価の目安そのもの
- 相続税路線価……公示地価のおおむね80%。路線価 ÷ 0.8 でおおよその時価が出ます
- 固定資産税評価額……公示地価のおおむね70%。毎年届く納税通知書に載っています
【モデル事例】 路線価が1㎡あたり16万円、土地が150㎡。16万円 ÷ 0.8 × 150㎡ = おおよそ3,000万円が土地の時価の目安になります。
これはあくまで机上の目安です。角地か、間口が狭いか、道路付けはどうかで実際の値段は動きます。それでも、桁を間違えないための物差しにはなります。→ 実家の土地は相続税でいくら?路線価方式と倍率方式の基本
3. 査定は3社以上に頼む
自分の見当ができたら、不動産会社に査定を頼みます。査定には2種類あります。
- 机上査定……資料だけで出す概算。早い。まず数を集めるとき向き
- 訪問査定……現地を見て出す。日当たり、傷み具合、越境の有無まで見る
高い査定額を出した会社が、高く売ってくれる会社とは限りません。媒介契約をとるために高めの数字を出し、あとから値下げを提案されることがあります。査定書をもらったら、金額そのものより「なぜその額なのか」の根拠(比較した成約事例)を見ます。根拠を出せない査定は、参考になりません。
→ 不動産売却前の準備──売却の流れ・媒介契約の選び方・仲介手数料の上限
4. 相場がわかると、税金の見積りもできる
相場を出す作業は、そのまま税金の準備になります。売却でかかる税金は、売った値段そのものではなくもうけ(譲渡所得)にかかるからです。
譲渡所得 = 売った金額 −(取得費 + 譲渡費用)
売れそうな金額の見当がついたら、買ったときの契約書を探します。取得費がわからないと、売った金額の5%しか引けず、税額が跳ね上がります。相場を調べるのと同じタイミングで、購入時の書類を探し始めてください。ここがいちばん取り返しのつかない場所です。
→ 不動産売却の手取り計算──譲渡収入から税金まで電卓を叩く順に試算する
まとめ
- 相場は成約価格・公的価格・査定の3方向から挟む。売り出し価格は上限の目安でしかない
- 路線価 ÷ 0.8、固定資産税評価額 ÷ 0.7 で、おおよその時価が逆算できる
- 査定は3社以上。金額より「なぜその額か」の根拠を見る
- 相場が見えたら、すぐ購入時の契約書を探す。取得費は後から作れない
→ 次に読む:不動産売却の譲渡所得税──税率が2倍変わる「5年」の判定(章2)
出典
- 地価公示法2条(標準地の価格の判定等)
- 国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」(路線価は公示価格水準のおおむね80%)
- 地方税法341条・388条(固定資産評価基準。評価替えは3年ごと)
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」、不動産流通機構「レインズ・マーケット・インフォメーション」
※確認日:2026年8月7日。価格の水準関係は目安であり、個別の土地では差が出ます。売り出し価格の決定は不動産会社とご相談ください。
「不動産売却」の入口は2つあります
