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売買契約から決済・引き渡しまで──手付金・契約不適合責任・当日に用意する書類

公開 2026.08.07 不動産売却 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)

買いたい人が現れると、売却は一気に進みます。契約から決済・引き渡しまでは、だいたい1か月から2か月。この短い間に、あとで揉めるかどうかが決まります。

売主がやることは大きく2つ。契約の前に「物件の状態を正直に書いた紙」を作ること。決済の日までに「抵当権を消す段取り」と「書類」をそろえることです。この2つを外さなければ、引き渡しは通ります。

※本記事の人物・金額はすべて架空のモデル事例です。一般的な仕組みを解説するもので、個別の税務・法務相談ではありません。

→ 全体の流れは 不動産売却の全体像。この記事は章4「引き渡しまで通す」の解説です。

この記事でわかること


1. 契約日——手付金と、やめられる期限

売買契約では、買主から売主へ手付金が渡されます。売買代金の5〜10%が一般的です。この手付金には、契約をやめるための値段という意味があります(解約手付。民法557条1項)。

ただし、これができるのは相手が契約の履行に着手するまでです。買主が残代金を用意して手続きを始めたあとでは、手付でやめることはできません。「もっと高く買う人が現れた」と後から言っても、遅いということです。

あわせて確認しておく条項が2つあります。ローン特約(買主の融資が通らなかったら白紙解除。手付は返す)と、引き渡しの期日です。買い替えを予定しているなら、次の家の日程と必ずつなげておきます。

2. 売主が書く「物件状況等報告書」

買主には不動産会社から重要事項説明があります。売主が用意するのは、その材料です。主に2枚あります。

書類 書く中身
物件状況等報告書(告知書) 雨漏り、シロアリ、給排水の不具合、境界の争い、近隣の状況、過去の修繕
付帯設備表 エアコン・給湯器・照明などを置いていくか、その設備が動くか

ここは正直に書くほど売主が守られます。「雨漏りがあった」と書いて売れば、買主は承知のうえで買ったことになります。書かずに引き渡して後から見つかると、修理代や損害賠償の話になります。

3. 契約不適合責任——特約で全部は消せない

引き渡した物に、契約の内容と違うところ(雨漏り、シロアリ、設備の故障など)があった場合、売主は責任を負います。これを契約不適合責任といいます(民法562条〜566条)。買主は、修補・代金の減額・損害賠償・解除を求められます。

個人が売主の中古住宅では、責任を負う期間を引き渡しから3か月などに短くする特約が一般的です。ただし、売主が知っていて告げなかったことについては、特約があっても免れません(民法572条)。隠しても意味がない、ということです。

【モデル事例】 鈴木さん(仮)は、10年前に一度あった雨漏りを「直したから」と報告書に書かずに売却した。引き渡し半年後に同じ場所から雨漏りが再発。知っていて書かなかったため、免責の特約は使えず、補修費を負担することになった。

4. 決済日にやること

決済は、銀行の一室で1時間ほどかけて行われます。お金・登記・鍵が同時に動きます。順番は決まっています。

売主が当日そろえるのは、登記識別情報(権利証)・実印・印鑑証明書(3か月以内)・固定資産税納税通知書・本人確認書類・建築確認済証や検査済証などの物件資料です。権利証と印鑑証明が抜けると、その日は決済できません。不動産の書類整理──残す書類・集める書類と「1物件1ファイル」の型

なお、賃貸中の物件を売る場合は、敷金の引き継ぎと入居者への通知も同時に進めます。個人がマイホームを売るときの建物には消費税はかかりませんが、事業として貸していた建物の売却は課税の対象になります。→ 大家の消費税──店舗・駐車場・建物売却で課税になる境目

5. 引き渡しが終わると、値段はもう動かせない

決済が終われば、売値は確定します。ここから先、手取りを増やす手段は引く側——取得費・譲渡費用・特例——しか残っていません。

だから、決済でもらった書類は1つの封筒にまとめて保管します。売買契約書、仲介手数料の領収書、司法書士への支払、印紙、測量費の請求書。翌年の確定申告で、これがそのまま税額を下げる材料になります。

まとめ

→ 次に読む:取得費を確定する(章5)


出典

※確認日:2026年8月7日。契約条項の解釈や登記の手続きは弁護士・司法書士の領域です。税務の影響とあわせて、着手前に専門家へご確認ください。

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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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