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売買契約から引き渡しまで、売主が確かめること

買いたい人が現れると、売却は一気に進みます。売買契約から引き渡しまでは、だいたい1か月から2か月です。この短い間に、あとで揉めるかどうかが決まります。

売主がやることは2つです。物件の状態を正直に書いた紙を作ることと、決済の日までに抵当権を消す段取りと書類をそろえることです。この2つを外さなければ、引き渡しは通ります。

この記事でわかること
  1. 01
    契約から引き渡しまでは、3つの日で決まる
  2. 02
    手付金は、契約をやめるときの値段になる
  3. 03
    物件の不具合は、報告書に書いてから渡す
  4. 04
    知っていて黙った不具合は、特約でも消せない
  5. 05
    決済日は、お金と登記と鍵を同時に受け渡す

1. 契約から引き渡しまでは、3つの日で決まる

手続きは長く見えます。売主にとっての節目は3つです。日ごとに、やることが違います。

売主から見て、契約のあとはこう進む

かかる期間は契約から引き渡しまで、だいたい1か月から2か月です

1契約日を迎える手付金を受け取り、物件状況等報告書と付帯設備表を渡す
2決済日を迎える残代金を受け取り、抵当権を消し、登記を移し、鍵を渡す
3引き渡しが終わる領収書を集めて、翌年の確定申告に備える

引き渡しが終われば、売値はもう変わりません。そこから手取りを増やす手立ては、取得費・譲渡費用・特例という引く側に残っています。

2. 手付金は、契約をやめるときの値段になる

売買契約では、買主から売主へ手付金が渡されます。売買代金の5〜10%が一般的です。この手付金には、契約をやめるための値段という意味があります(解約手付。民法557条1項)。

買主がやめるとき

机に置き去りにされた、帯で束ねた紙幣の束と鍵が1本ある線画

払った手付金を置いていきます

やり方買主は手付金を放棄すれば、契約をやめられます。売主は受け取った手付金をそのまま持ちます。

売主がやめるとき

同じ大きさの紙幣の束を2つ重ねて差し出している手元の線画

受け取った手付金の倍額を返します

やり方受け取った額に同じ額を足して買主へ返します。手元から出ていくお金があります。

注意「もっと高く買う人が現れた」と思っても、やめる方法はこれです。

買主の融資が通らなかったとき

開いた契約書の1行に金茶の下線が引かれ、脇に小さな銀行の建物の模型がある線画

ローン特約があれば、契約は白紙に戻ります

やり方買主の融資が通らなかったときに契約を解除する条項です。受け取った手付金は買主に返します。

注意期限と対象の金融機関が書かれています。署名の前に、引き渡しの期日とあわせて読みます。

手付では、相手が契約の履行に着手するまでやめられます。買主が残代金を用意して手続きを始めたあとでは、手付金を放棄してもやめられません。買い替えを予定しているなら、次の家の日程と引き渡しの期日を必ずつなげておきます。

3. 物件の不具合は、報告書に書いてから渡す

買主には、不動産会社から重要事項説明があります(宅地建物取引業法35条)。売主は、その材料になる2枚の紙を用意します。

物件状況等報告書を用意する

罫線とチェック欄だけの報告用紙に万年筆が置かれ、ペン先だけが金茶の線画

雨漏り、シロアリ、給排水の不具合、境界の争いを書きます

やり方近隣の状況と、過去にした修繕も書きます。告知書と呼ばれることもあります。

理由「雨漏りがあった」と書いて売れば、買主は承知のうえで買ったことになります。正直に書くほど、売主が守られます。

付帯設備表を用意する

エアコンの室内機と給湯器と照明器具が横一列に並び、照明器具だけが金茶の線画

エアコンや給湯器を置いていくか、それが動くかを書きます

やり方照明や物置も1つずつ書きます。動かない設備は、動かないと書きます。

注意「たぶん動く」で残した設備は、引き渡しの後に直す話になります。

4. 知っていて黙った不具合は、特約でも消せない

引き渡した物に契約の内容と違うところがあると、売主は責任を負います。これを契約不適合責任といいます(民法562条〜566条)。買主は、修補、代金の減額、損害賠償、解除を求められます。

責任の期間を区切る特約は、どこまで有効か

個人が売主の中古住宅では、引き渡しから3か月などに期間を区切る特約が一般的です

その不具合を、売主は……

知っていて、告げなかった特約があっても責任を免れない民法572条。期間を区切っても、この部分だけは残る
知らなかった特約の期間で区切れる報告書に書いて渡していれば、買主は承知のうえで買ったことになる

隠しても、期間の特約では消えません。書いて渡すほうが、売主にとって安全です。

【モデル事例】鈴木さんは、10年前に一度あった雨漏りを「直したから」と考え、物件状況等報告書に書かずに売りました。引き渡しの半年後、同じ場所から雨漏りが再発しました。知っていて書かなかったため期間の特約は使えず、補修費を負担することになりました。人物は架空です。

5. 決済日は、お金と登記と鍵を同時に受け渡す

決済は、銀行の一室で1時間ほどかけて行われます。買主が残代金を振り込み、売主はローンを一括返済して抵当権抹消の書類を受け取ります。司法書士が所有権移転登記を申請し、固定資産税と都市計画税を引き渡し日で日割り精算し、最後に鍵と書類を渡します(日割りの起算は、関東は1月1日、関西は4月1日が慣行です)。

売主が当日そろえるもの抜けるとどうなるか
登記識別情報(権利証)所有権を移す登記ができない
実印と、3か月以内の印鑑証明書登記の書類に押せない
固定資産税の納税通知書日割りの精算額を出せない
本人確認書類司法書士の本人確認が終わらない
建築確認済証・検査済証などの資料買主に引き継げない
権利証と印鑑証明書が抜けると、その日は決済できません。賃貸中の物件を売るなら、敷金の引き継ぎと入居者への通知も同時に進めます。事業として貸していた建物の売却は、消費税の課税の対象になります(「大家の消費税」)。決済で受け取った書類と領収書は、1つの封筒にまとめて残します(「物件の書類は、1物件1ファイルにまとめて残す」)。

まとめ

要点

まず、今日できること

  1. 売買契約書のローン特約と引き渡しの期日を読み、次の住まいの予定と日付を合わせる
  2. 雨漏り、シロアリ、給排水の不具合、境界の争いを、思い出せるだけ紙に書き出す
  3. 権利証の在りかを確かめる。印鑑証明書は、決済日から3か月以内のものを取る

次に読む:買った値段がわからないと、取得費は売値の5%になる/売却の手取りは、売値から取得費、費用、税金、残債を引いた残り

出典

※確認日:2026年9月3日。契約条項の解釈と登記の手続きは、弁護士・司法書士の領域です。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務相談ではありません。手付金の額も責任の期間も契約ごとに違うので、署名の前に契約書の文言をご確認ください。

公開 2026.08.07 / 更新 2026.09.07 不動産売却 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)

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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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