管理会社に毎月払っている管理料を、自分でやれば浮くのではないか、と一度は考えます。買った人も、建てた人も、相続した人も、同じところで迷います。
管理料5%は、高いか安いかでは決まりません。浮く5%と、代わりに自分がやることになる手間を、手取りと時間の両方で並べて比べます。そして多くの場合、答えは全部任せるでも全部自分でもなく、その間のどこかにあります。
- 01
- 02
- 03
- 04
- 05
1. 管理料5%で、何をやってもらえるか
まず、払っているお金が何の対価かをはっきりさせます。委託料は家賃収入のおおむね5%前後で、地域・会社・物件の規模によって3〜8%程度まで開きます。管理戸数が少ないと、1戸あたり月いくらの定額にする会社もあります。
お金の出入りを扱う

家賃を集めて、オーナーに送金します
やり方家賃の集金、入金の確認と消込、オーナーへの送金をします。滞納があれば督促と催告もします。
入居者と契約に対応する

入居者からの連絡を受け、契約の手続きをします
やり方設備の故障、騒音、ゴミの相談を一次で受け、問い合わせの窓口になります。契約更新の案内と手続き、解約の受付もします。
空室と退去に対応する

部屋が空いたときに、募集と精算をします
やり方募集と客付け、募集条件の調整、内見の対応をします。退去のときは立会い、敷金の精算、原状回復の業者手配と見積り取りまでです。
業務の範囲は契約書で決まります。契約書での線引きが大事です。集金と送金だけで募集は別料金という契約もあれば、退去の立会いまで丸ごと含む契約もあります。国土交通省の「賃貸住宅標準管理委託契約書」が、範囲を確かめるときの基準になります。
なお、入居者の募集を仲介会社に頼む場合、契約時の重要事項説明は仲介会社が入居者に対して行います。自ら貸主になるオーナー自身には、宅建業法上の重要事項説明の義務はありません(宅地建物取引業法2条2号)。
2. 自主管理にすると、年24万円が浮く
自分でやると手取りがいくら変わるかを、架空のモデルで見ます。
【モデル事例】家賃が月40万円のアパート1棟を持つ佐藤さんは、年間の家賃収入が480万円です。管理会社に管理料5%で任せていて、年間の委託料は 480万円 × 5% = 24万円になります。人物と金額は架空です。
管理料だけを取り出すと、こう変わります
管理委託のまま
年間家賃収入480万円
管理委託料(5%)−24万円
差し引いた残り456万円
自主管理にする
年間家賃収入480万円
管理委託料0円
差し引いた残り480万円
差し引き、自主管理で年24万円が浮きます。ただし、この差し引きだけで止めると判断を誤ります。浮いた24万円の代わりに、1章の仕事を全部自分がやることになるからです。
3. 浮いた24万円は、まるごと残らない
浮いた24万円が、そのまま手元に増えるわけではありません。減るところが2つあります。
税金がつく

経費が減ると、課税される所得が増えます
やり方管理委託料は不動産所得の必要経費です。払わなくなると経費が24万円減り、課税される所得が24万円増えます。
例所得税と住民税の合計税率を仮に20%とすると、税負担が約4.8万円増え、手取りの増加は約19万円にとどまります。
注意浮いた5%は、税引き後の金額で見ます。
仕事を全部自分がやることになる

突発の対応は読めません
問題毎月の入金確認と消込、滞納の督促、設備故障の一次対応、退去のたびの立会いと原状回復の手配、空室が出たときの客付けが自分に戻ります。
注意平常月の入金確認は月1〜2時間で済みます。退去とトラブルと空室が重なった月は、負担が膨らみます。しかも、いつ来るかは読めません。
解決自主管理でも記帳と申告は要ります。管理報告書が無くなるぶん、帳簿の型を先に用意しておきます(「自主管理の帳簿づけ」)。
4. 二択で決めない。苦手な工程だけ外に出す
委託は楽ですが5%が惜しく、でも全部を自分でやる自信はありません。そのときは、管理の仕事をばらして一部だけ頼めます。
集金代行だけ頼む

いちばん気の重い部分を、人に渡します
やり方毎月の入金管理と督促だけを任せ、募集と更新は自分でやります。
客付けだけ頼む

空室が出たときだけ、本気で動いてもらいます
やり方普段は自主管理で、部屋が空いたときに仲介会社へ募集を出します。
5. 任せるなら、この順で乗り換える
任せる、あるいは乗り換えると決めたら、会社選びで結果の大半が決まります。問い合わせへの返信の速さ、求めなくても届く報告、空室が出たときの動き、データを添えた提案の4つを見ます。
管理会社を乗り換える手順
先にいまの管理委託契約の解約予告期間を、契約書で確かめます(1〜3か月前などが一般的)
敷金の預り金と滞納の状況は抜けやすいところです。前の会社が預かっている敷金の扱いと、督促の進み具合は、書面で確かめます。ここが雑だと、入金の行き違いがそのまま残ります。
とくに空室のときに差が出ます。募集に出しました、で止まる会社と、反響と内見の件数、決まらない理由まで返す会社では、埋まる速さが変わります(「空室が埋まらない原因は3つ。家賃を下げるのは最後」)。
まとめ
- 管理委託料は家賃収入のおおむね5%前後になり、何をどこまでやるかは管理受託契約書で決まります
- 家賃収入が年480万円なら委託料は年24万円になり、自主管理にすれば、これが浮きます
- 浮いた24万円は経費が減るぶん所得が増え、税率20%なら手取りの増加は約19万円になります
- 浮くお金を自分の時給で割った時間で判断し、時給3,000円なら年80時間ぶんになります
- 二択で決めず、集金代行だけ、客付けだけの部分委託で、苦手な工程を外に出します
まず、今日できること
- いまの管理委託契約書を開いて、5%に含まれる仕事と、別料金の仕事を分けて書き出します
- 去年1年に払った管理委託料の合計を出し、自分の時給で割って何時間ぶんかを見ます
- 直近3か月の管理報告書に、入金・滞納・クレームの記録が載っているかを確かめます
出典
- 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号)(管理業者の登録、管理受託契約の重要事項説明)
- 宅地建物取引業法2条2号(宅地建物取引業の定義。自ら行う貸借は含まれず、自ら貸主に重要事項説明の義務はない)
- 国土交通省「賃貸住宅標準管理委託契約書」(管理業務の範囲の参考)
- 所得税法26条(不動産所得)、157条(同族会社等の行為計算の否認)、法人税法132条(同族会社等の行為計算の否認)
※確認日:2026年9月3日。管理委託料の相場(5%前後、3〜8%程度)と解約予告期間(1〜3か月前など)は、地域・会社・契約によって幅があります。本記事の金額は架空のモデルです。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務相談ではありません。法人へ払う管理料が相当かどうかは、個別の事情で判断が分かれます。契約の変更や法人化を考えるときは、契約書を用意したうえで税理士にご確認ください。
この記事は 相続手続き STEP 8「名義を変えて、経営を引き継ぐ」 でも紹介しています。
12工程の全体像を見る「賃貸経営」の入口は2つあります
筆者(宍倉)が、オンライン90分の無料モニターを募集中です。事前のヒアリングをもとに資料をこちらで用意し、当日は一緒に眺めながら話します。
参加費は無料です。枠が埋まり次第、受付を終了します。
