身内の資産管理会社に管理料を払うとき、いちばん多い質問は「何%までなら認められるか」です。税法には、管理料の率を定めた条文がありません。
率ではなく、会社が実際にその管理の仕事をしているかが見られます。公表されている裁決では、家賃の10%という決して高くない設定でも、経費に入る金額はゼロとされました。
- 01
- 02
- 03
- 04
- 05
1. 税法に「何%まで」という定めはない
「家賃の20%までは認められる」「10%なら問題ない」という言い方は、条文の裏づけを持たない目安です。実際には、次の2つの条文が使われます。どちらにも率は出てきません。
所得税法37条(必要経費)

その支出は、仕事の対価か
やり方不動産所得を生む業務について生じた費用といえるかを見ます。業務の対価といえない部分は、そもそも経費になりません。
所得税法157条(同族会社の行為計算の否認)

税負担を不当に減らす取引は、計算し直されます
やり方同族会社との取引が所得税の負担を不当に減らす結果になっていれば、税務署長がその金額にかかわらず所得を計算し直せます。
注意条文は結果を問題にしています。「そんな意図はなかった」は、反論になりにくいです。
2. 率が低くても、実態がなければ経費にならない
10%でもゼロにされた例(国税不服審判所 平成18年6月13日裁決)

入居者から見た連絡先は、別の会社でした
例アパートやマンションを持つ個人が、家賃の10%を管理料として同族会社に払う契約を結びました。ところが、募集も清掃も点検も外部の管理会社が行い、看板の連絡先も外部の会社、家賃は本人の口座に振り込まれ、同族会社の業務の記録は設立以来まったくありませんでした。
注意審判所は、同族会社に委託する客観的な必要性も、実際に行った証拠も認められないとして、経費に入る金額をゼロとしました(所得税法37条)。率は最初の目安にすぎません。
【モデル事例】木下さんは、自宅のとなりにアパート2棟を持っています。数年前に資産管理会社を作り、家賃収入1,200万円のうち8%の96万円を管理料として払う契約を結びました。ところが実務は、以前から付き合いのある地元の管理会社が回しています。入居者の連絡先はその管理会社、家賃の振込先は木下さん個人の口座、修繕の発注も木下さん名義のままでした。この場合、8%が高いか低いかより前に、その96万円が何の対価なのかを説明できません。人物と金額は架空です。
3. 適正な額は、よその会社ならいくらか、で決まる
同族でない会社と比べる

同じ業務を、同族でない相手に頼んだときの水準に引き直します
やり方裁判所は、業務の内容・規模・収入が近い同業者が、同族でない管理会社に払っている委託料の割合に比準させる方法を最も合理的としました(福岡地裁 平成4年2月20日判決)。
例別の裁決で選ばれた比較先の管理料の割合は、3年分で3.68%、3.92%、3.79%でした(平成14年4月24日裁決)。ただしその事案の数字で、自分の物件にそのまま当てはめるものではありません。
業務の範囲で、額は変わる

どこまで引き受け、どちらが費用を負担するかで、適正な額は違います
理由その裁決では、同族会社が火災保険料や修繕費など比較先が負担していない費用まで持っていたので、その分を平均に足し戻して適正な額を出しています。率だけ並べても答えは出ません。
解決手元の目安がほしければ、同じ規模の物件を外部の管理会社に頼んだらいくらかを見積りで取り、書面で残します。
4. 契約、窓口、お金の3つで実態を作る
実態を会社へ寄せる順番
どれか1つが個人のまま残っていると、そこを起点に全体が崩れます
そのうえで、いつ、どの物件で、誰が、何をしたかを日付つきで残します(5章)。
契約

業務の範囲と費用の負担を書いた契約書があります
注意契約書がない、または雛形のままで実際の業務と中身が違うと、説明しにくくなります。
窓口

募集、入居者対応、修繕手配の連絡先が会社になっています
注意連絡先がオーナー個人か外部の管理会社のままで、会社名が決算書にしか出てこないと、説明しにくくなります。
お金

家賃が会社名義の口座に入り、経費も会社が払っています
注意家賃は個人口座に入ったままで、帳簿の上だけ会社の売上にしていると、説明しにくくなります。
5. 記録は4種類ある。あとから作れない
残すもの

契約書、業務の記録、入退去と修繕の記録、会社名義の口座と請求書を残します
やり方手書きのノートでも、表計算の1行でもかまいません。日付と物件名と作業内容が並んでいれば足ります。毎月の作業として回します。
注意調査の連絡が来てから数年分の業務日誌を用意するのは無理があります。平成18年の裁決では、記録がまったくなかったことが決め手の1つになりました。
否認されたら

個人の所得税と住民税が増え、加算税と延滞税も乗ります
注意会社はすでに管理料を収入に計上し、役員報酬を払っています。個人で増えた税額と同じだけ会社の税金が自動で戻る仕組みではありません。
解決料率で悩み続けるなら、建物そのものを会社へ移す道もあります。家賃は最初から会社の収入になり、管理料をいくらにするかという論点自体がなくなります(「法人に移すのは建物だけ。土地は個人に残す」)。
まとめ
- 税法に管理料の率を定めた条文はありません。仕事の対価か(37条)と、不当に減らしていないか(157条)が見られます
- 10%でも、会社が動いた証拠がなければ経費はゼロです。率は最初の目安になります
- 適正な額は、同族でない相手に頼んだときの水準に引き直されます。業務の範囲と費用の負担まで見られます
- 実態は、契約、窓口、お金を会社へ寄せて作ります
- 記録は契約書、業務の記録、入退去と修繕の記録、会社名義の口座の4つです。調査が始まってからは作れません
まず、今日できること
- 管理委託契約書を読み返し、業務の範囲・費用の負担・金額が今の実態と合っているかを見ます
- 直近1年で会社が実際にやったことを書き出し、外部の管理会社に頼んでいる分と重なっていないかを見ます
- 通帳を見て、家賃がどの口座に入り、経費がどの口座から出ているかを確かめます
出典
- 所得税法37条(必要経費)、157条(同族会社等の行為又は計算の否認等)、法人税法132条
- 国税不服審判所 平成18年6月13日裁決(裁決事例集No.71・205頁。同族の管理会社への管理料の必要経費算入額を零とした事例)
- 国税不服審判所 平成14年4月24日裁決(裁決事例集No.63・171頁。比準同業者の平均管理料割合3.68%・3.92%・3.79%)
- 福岡地方裁判所 平成4年2月20日判決(平成1(行ウ)19。同業者比準方式が最も合理的とされた事例)
※確認日:2026年9月3日。本記事は一般的な仕組みと、公開されている裁決・判決に基づく説明で、個別の税務相談ではありません。管理料が認められるかは、物件の規模・地域・委託した業務の中身・費用の負担区分で分かれます。引用した割合は、その事案の比較先の数字であり、目安として使えるものではありません。料率の設定と記録の作り方は、税理士にご確認ください。
「不動産法人化」の入口は2つあります
筆者(宍倉)が、オンライン90分の無料モニターを募集中です。事前のヒアリングをもとに資料をこちらで用意し、当日は一緒に眺めながら話します。
参加費は無料です。枠が埋まり次第、受付を終了します。