相続対策には、期限があります。亡くなる日ではありません。親が認知症などで、物事を判断できなくなる日です。
判断できなくなると、遺言も、贈与も、不動産の売買も、法律上できなくなります。その日がいつ来るかは、誰にもわかりません。
- 01
- 02
- 03
- 04
1. 判断できなくなると、遺言も贈与も売買もできなくなる
契約や遺言は、自分のしていることの意味がわかる力(意思能力)があって、初めて有効です。その力がない状態でしたことは、無効だと法律に書かれています(民法3条の2)。
相続対策で使う手段は、ほぼすべてが契約や遺言です。だから、ほぼすべてが止まります。
遺言は、判断できるうちに書く

書くことも、書き直すこともできなくなります
問題遺言にも、判断する力が要ります(民法963条)。認知症が進んだあとに書いた遺言は、あとから無効を争われます。
解決決めた分け方は、元気なうちに遺言書にしておきます。
贈与は、判断できるうちに始める

少しずつ渡す対策が、途中で止まります
問題贈与は契約なので、あげる側の意思が要ります。判断できなくなった日から、渡せなくなります。
解決渡すなら、判断できるうちに始めます。
不動産の売買も、判断できるうちに済ませる

売ることも、買うことも、建て替えもできなくなります
問題売買の契約も、登記もできません。銀行も、本人の判断力に疑いが出ると、口座の取引を止めます。
解決売る予定や建て替える予定があるなら、先に動きます。
2. 成年後見をつけても、相続対策はできない
判断できなくなったときに備えて、家庭裁判所が代わりの人を選ぶ制度があります(成年後見制度。民法7条・843条)。ただし、この制度の目的は、本人の財産を守ることです。
成年後見は、守る制度です

財産を守る制度で、相続対策を続ける制度ではありません
問題節税のための贈与は、本人の財産を減らす行為なのでできません。相続対策のための不動産の売却や買い換えも、原則できません。
注意弁護士などの専門職が後見人に選ばれると、報酬の支払いが亡くなるまで続きます。一度始まると、原則として途中でやめられません。
解決対策は、後見が始まる前、判断できるうちに終えておきます。
3. 備えは、元気なうちにしか結べない
備えの選択肢は4つあります。どれも、判断できるうちだけ作れます。
遺言書は、元気なうちに書く

亡くなったあとの分け方を、決めておきます
解決誰に何を残すかを書面にします。相続人の話し合いそのものが、要らなくなります。
注意書くには、判断する力が要ります(民法963条)。
くわしくは「誰に何を残すか、どう決めるか」
生前贈与は、元気なうちに始める

元気なうちに、財産を渡し始めます
解決年110万円までの贈与には、贈与税がかかりません。時間をかけて渡します。
注意亡くなる前7年以内の贈与は、相続財産に足し戻されます。
くわしくは「生前贈与加算が3年から7年に」
任意後見契約は、判断できるうちに結ぶ

判断できなくなったときの代理人を、自分で選んでおきます
解決誰に何を任せるかを、公正証書で決めておきます(任意後見契約に関する法律)。家庭裁判所が選ぶ後見人と違い、自分で人を選べます。
注意判断できるうちだけ、結べます。
家族信託は、判断できるうちに契約する

財産の管理や処分を、家族に託します
解決アパートの経営を子に引き継ぐ形も作れます。親が判断できなくなっても、子が修繕や建て替えを進められます。
注意組み立ては弁護士・司法書士の領域です。贈与税や不動産の名義、損益の帰属など、税金への影響もあわせて、着手前に専門家へ確かめます。
どれを使うかは、財産の中身と家族の事情で変わります。
4. 判断できる間だけ、対策できる
この期間だけ、対策できる
期限は、真ん中の日です。いつ来るかは誰にもわかりません。思い立ったときが始めどきです。
判断できなくなったあとに、資産がどう止まるかは「親が認知症になると、相続対策も資産も止まる」でくわしく説明しています。
まとめ
- 相続対策の期限は判断できなくなる日で、いつ来るかはわかりません
- 遺言、贈与、売買は、判断する力がないと無効になります(民法3条の2)
- 成年後見は財産を守る制度で、対策のための贈与や売却はできません
- 遺言書、生前贈与、任意後見、家族信託の備えも、元気なうちだけ結べます
まず、今日できること
- 親の財産と、アパートの経営で「本人にしか決められないこと」を書き出します
- 誰に何を残すかを、親が元気なうちに家族で話す日を決めます
- 任意後見や家族信託が要りそうなら、弁護士・司法書士に相談する日を決めます
次に読む:誰に何を残すか、どう決めるか(章3)
出典
- 民法3条の2(意思能力)、7条・843条(後見開始の審判・成年後見人の選任)、963条(遺言能力)
- 任意後見契約に関する法律
- 厚生労働省研究班「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」(令和5年度)
※確認日:2026年9月2日。本記事の人物・金額は架空のモデル事例で、個別の税務・法務相談ではありません。成年後見・任意後見・家族信託・遺言の手続きは、弁護士・司法書士の領域です。
「相続対策」の入口は2つあります
筆者(宍倉)が、オンライン90分の無料モニターを募集中です。事前のヒアリングをもとに資料をこちらで用意し、当日は一緒に眺めながら話します。
参加費は無料です。枠が埋まり次第、受付を終了します。