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認知症のリスクを考える──対策できるのは、判断できるうちだけ

公開 2026.08.04 / 更新 2026.08.07 相続対策 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)

相続対策には期限があります。多くの人が思い浮かべる「亡くなる日」ではありません。親が認知症などで、物事を判断できなくなる日です。

判断できなくなると、遺言も、贈与も、不動産の売買も、法律上できなくなります。そして、その日がいつ来るかは誰にもわかりません。

※本記事の人物・金額はすべて架空のモデル事例です。一般的な仕組みを解説するもので、個別の税務・法務相談ではありません。

→ 全体の流れは 相続対策の全体像。この記事は章2「認知症のリスクを考える」の解説です。

この記事でわかること


1. なぜ止まるのか──意思能力のルール

契約や遺言などの法律行為は、自分のしていることの意味を理解できる力(意思能力)があって初めて有効です。意思能力を欠いた状態でした法律行為は、無効と民法にはっきり書かれています(民法3条の2)。

だから、認知症が進んだあとに書いた遺言や結んだ契約は、あとから無効を争われます。銀行も、本人の判断力に疑いが出ると、本人を守るために口座の取引を止めます。

これは遠い話ではありません。厚生労働省の研究班の推計では、65歳以上のおよそ4人に1人が、認知症またはその前段階(軽度認知障害)とされています。

2. 何が止まるか

相続対策で使う手段は、ほぼすべてが法律行為です。つまり、ほぼすべてが止まります。

賃貸物件を持つ家庭では、対策が止まるだけでなく、経営そのものが止まるのが重いところです。

3. 成年後見をつけても、対策はできない

判断できなくなった後の受け皿として、家庭裁判所が代わりの人を選ぶ制度(成年後見制度)があります(民法7条・843条)。ただし、この制度の目的は本人の財産を守ることです。

つまり成年後見は「困ってから何とかする制度」であって、「相続対策を続けるための制度」ではありません。

4. 元気なうちに結べる備え

備えは、判断できるうちにしか作れません。代表的な選択肢は次のとおりです。

備え できること
遺言書 亡くなった後の分け方を決めておく。→ 財産の分け方を考える
生前贈与 元気なうちに財産を渡し始める。→ 生前贈与加算のルール
任意後見契約 判断できなくなったときの代理人を、自分で選んで公正証書で決めておく
家族信託 財産の管理・処分を家族に託す契約。アパートの経営を子に引き継ぐ設計もできる

どれを使うかは、財産の中身と家族の事情で変わります。任意後見や家族信託の組成・手続きは弁護士・司法書士の領域です。税務への影響(贈与税・不動産の名義・損益の帰属)とあわせて、着手前に専門家へ確認してください

まとめ

→ 次に読む:親が認知症になると、相続対策も資産も止まる──凍結を防ぐ備え財産の分け方を考える(章3)


出典

※確認日:2026年8月4日。成年後見・任意後見・家族信託・遺言の組成や手続きは弁護士・司法書士の領域です。本記事は制度の概要と税務上の位置づけを整理したものです。

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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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