買いたい人が現れると、売却は一気に進みます。売買契約から引き渡しまでは、だいたい1か月から2か月です。この短い間に、あとで揉めるかどうかが決まります。
売主がやることは2つです。物件の状態を正直に書いた紙を作ることと、決済の日までに抵当権を消す段取りと書類をそろえることです。この2つを外さなければ、引き渡しは通ります。
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1. 契約から引き渡しまでは、3つの日で決まる
手続きは長く見えます。売主にとっての節目は3つです。日ごとに、やることが違います。
売主から見て、契約のあとはこう進む
かかる期間は契約から引き渡しまで、だいたい1か月から2か月です
引き渡しが終われば、売値はもう変わりません。そこから手取りを増やす手立ては、取得費・譲渡費用・特例という引く側に残っています。
2. 手付金は、契約をやめるときの値段になる
売買契約では、買主から売主へ手付金が渡されます。売買代金の5〜10%が一般的です。この手付金には、契約をやめるための値段という意味があります(解約手付。民法557条1項)。
買主がやめるとき

払った手付金を置いていきます
やり方買主は手付金を放棄すれば、契約をやめられます。売主は受け取った手付金をそのまま持ちます。
売主がやめるとき

受け取った手付金の倍額を返します
やり方受け取った額に同じ額を足して買主へ返します。手元から出ていくお金があります。
注意「もっと高く買う人が現れた」と思っても、やめる方法はこれです。
買主の融資が通らなかったとき

ローン特約があれば、契約は白紙に戻ります
やり方買主の融資が通らなかったときに契約を解除する条項です。受け取った手付金は買主に返します。
注意期限と対象の金融機関が書かれています。署名の前に、引き渡しの期日とあわせて読みます。
手付では、相手が契約の履行に着手するまでやめられます。買主が残代金を用意して手続きを始めたあとでは、手付金を放棄してもやめられません。買い替えを予定しているなら、次の家の日程と引き渡しの期日を必ずつなげておきます。
3. 物件の不具合は、報告書に書いてから渡す
買主には、不動産会社から重要事項説明があります(宅地建物取引業法35条)。売主は、その材料になる2枚の紙を用意します。
物件状況等報告書を用意する

雨漏り、シロアリ、給排水の不具合、境界の争いを書きます
やり方近隣の状況と、過去にした修繕も書きます。告知書と呼ばれることもあります。
理由「雨漏りがあった」と書いて売れば、買主は承知のうえで買ったことになります。正直に書くほど、売主が守られます。
付帯設備表を用意する

エアコンや給湯器を置いていくか、それが動くかを書きます
やり方照明や物置も1つずつ書きます。動かない設備は、動かないと書きます。
注意「たぶん動く」で残した設備は、引き渡しの後に直す話になります。
4. 知っていて黙った不具合は、特約でも消せない
引き渡した物に契約の内容と違うところがあると、売主は責任を負います。これを契約不適合責任といいます(民法562条〜566条)。買主は、修補、代金の減額、損害賠償、解除を求められます。
責任の期間を区切る特約は、どこまで有効か
個人が売主の中古住宅では、引き渡しから3か月などに期間を区切る特約が一般的です
その不具合を、売主は……
隠しても、期間の特約では消えません。書いて渡すほうが、売主にとって安全です。
【モデル事例】鈴木さんは、10年前に一度あった雨漏りを「直したから」と考え、物件状況等報告書に書かずに売りました。引き渡しの半年後、同じ場所から雨漏りが再発しました。知っていて書かなかったため期間の特約は使えず、補修費を負担することになりました。人物は架空です。
5. 決済日は、お金と登記と鍵を同時に受け渡す
決済は、銀行の一室で1時間ほどかけて行われます。買主が残代金を振り込み、売主はローンを一括返済して抵当権抹消の書類を受け取ります。司法書士が所有権移転登記を申請し、固定資産税と都市計画税を引き渡し日で日割り精算し、最後に鍵と書類を渡します(日割りの起算は、関東は1月1日、関西は4月1日が慣行です)。
| 売主が当日そろえるもの | 抜けるとどうなるか |
|---|---|
| 登記識別情報(権利証) | 所有権を移す登記ができない |
| 実印と、3か月以内の印鑑証明書 | 登記の書類に押せない |
| 固定資産税の納税通知書 | 日割りの精算額を出せない |
| 本人確認書類 | 司法書士の本人確認が終わらない |
| 建築確認済証・検査済証などの資料 | 買主に引き継げない |
まとめ
- 契約から引き渡しまでは1か月から2か月で、節目は契約日、決済日、引き渡しの後にあります
- 手付は相手が契約の履行に着手するまでにやめられ、売主がやめるなら倍額を返します
- 物件状況等報告書と付帯設備表は、正直に書くほど売主が守られます
- 知っていて告げなかった不具合は、期間を区切る特約があっても責任が残ります
- 決済日は権利証と印鑑証明書が要ります。抜けると、その日は決済できません
まず、今日できること
- 売買契約書のローン特約と引き渡しの期日を読み、次の住まいの予定と日付を合わせる
- 雨漏り、シロアリ、給排水の不具合、境界の争いを、思い出せるだけ紙に書き出す
- 権利証の在りかを確かめる。印鑑証明書は、決済日から3か月以内のものを取る
次に読む:買った値段がわからないと、取得費は売値の5%になる/売却の手取りは、売値から取得費、費用、税金、残債を引いた残り
出典
- 民法557条1項(手付)、562条〜566条(契約不適合責任)、572条(担保責任を負わない旨の特約)
- 宅地建物取引業法35条(重要事項の説明)、37条(書面の交付)、39条(手付の額の制限等)
- 不動産登記法22条(登記識別情報の提供)
- 消費税法6条・別表第二(土地の譲渡は非課税)
※確認日:2026年9月3日。契約条項の解釈と登記の手続きは、弁護士・司法書士の領域です。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務相談ではありません。手付金の額も責任の期間も契約ごとに違うので、署名の前に契約書の文言をご確認ください。
「不動産売却」の入口は2つあります
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