「管理料は家賃の20%までなら大丈夫」──そう聞いて、あるいはそう書いてある節税本を読んで、同族の資産管理会社に高めの管理料を払っている地主の方は少なくありません。ですが、その“何%まで安全”という発想こそが、税務調査で否認される人の共通点です。
私は税理士であり宅地建物取引士でもあり、そして自分で賃貸物件の賃貸物件を自主管理している“現役の大家”です。だからこそ断言できます。税務署が本当に見ているのは、料率の数字ではなく「その管理業務を、法人が本当にやっているか」という実態です。実際、当初申告で30〜60%を取っていた管理料が、裁判や国税不服審判所の裁決で4〜10%まで切り下げられた事例は数多くあります。一方で、20%が認められた裁決もあります。この落差の正体を、判例と“現場のエビデンス”の両面から、正直にお話しします。
この記事でわかること
- 管理料に税法上の「適正率」が存在しないという大前提(国税庁の内部指示 課所6-46)
- 請求30〜60%が4〜10%に否認された判例の実リストと、その読み方
- なぜ「20%はフリーパスではない」のか──認容裁決と否認判例の分かれ目
- 税務署が求める“実態のエビデンス”4点セット(契約書・業務日誌・入退去/修繕記録・入出金通帳)
- 何%で設定し、どう証跡を残すか──否認されない現場の作り方チェックリスト
※2026年時点の情報です。管理料の相場・裁判例・税制改正は年度で変わります。個別具体的な判断は不動産税務に強い税理士へご確認ください。
なお本記事は、法人化の3方式のうち「管理委託方式」の“管理料%”を深掘りする子記事です。3方式全体の位置づけや法人化そのものの是非は、親記事の不動産の法人化とは──全体像と判断基準からご覧いただくと迷いません。
- 結論:管理料に「法定の適正率」は存在しない──だから%だけ追う人が否認される
- なぜ同族会社の管理料が狙われるのか──所得税法157条という“伝家の宝刀”
- 【判例水準表】請求30〜60%が4〜10%に切り下げられた──否認された料率の実リスト
- では20%は認められている──裁決H10.2.26・H19.6.19の“認容例”と否認例の分かれ目
- 17年間、会計処理だけで済ませた賃貸料が丸ごと否認された裁決(平成24年12月4日)
- 【本記事の核心】税務署が見るのは“実態”──自社管理の不動産会社経営の「これがエビデンスです」
- 否認されると“二重に”損をする──過大管理料の落とし穴と対応的調整の限界
- 実務の落としどころ──何%で設定し、どう証跡を残すか(否認されない現場の作り方)
- まとめ──管理料は“%”ではなく“実態”で決まる
結論:管理料に「法定の適正率」は存在しない──だから%だけ追う人が否認される
最初に、この記事でいちばん持ち帰ってほしい結論を3つ、先に言います。
- 管理料に「家賃の何%までなら安全」という法定の適正率は存在しない。
- 否認判例は、請求30〜60%が4〜10%に切り下げられている。
- 否認されるかどうかの分かれ目は、料率ではなく“実態の証跡(エビデンス)”である。
「適正率は存在しない」というのは、私の私見ではありません。国税庁の内部指示である平成12年9月6日 課所6-46でも、管理料には「目安となる適正額等はない」と明言されています。つまり、税法のどこを探しても「家賃の◯%まではOK」という数字は書かれていない。にもかかわらず、多くの節税本やネット記事は「相場は20%」「10%までなら平気」と“数字”ばかりを語ります。
そして皮肉なことに、その数字だけを気にして高率に設定した人ほど、税務調査で否認されています。税務署が管理料を否認するとき、彼らが持ち出すのは「あなたの20%は相場より高い」という単純な話ではありません。「そもそもその管理業務を、法人が本当に行っているのですか?」という実態への問いです。
料率は入口にすぎません。ここを取り違えると、いくら“相場内”に見える数字で設定しても足をすくわれます。まずはこの前提を押さえたうえで、なぜ同族会社の管理料が狙われるのか、その仕組みから見ていきましょう。
なぜ同族会社の管理料が狙われるのか──所得税法157条という“伝家の宝刀”
過大な管理料は「所得税法157条」で否認される
個人オーナーが同族の資産管理会社に管理料を払うと、その分だけ個人の不動産所得が圧縮され、法人へ所得が移ります。これが「所得分散」による節税の入口です。ところが管理料が不相当に高額だと、その超過部分は必要経費として認められません。根拠となるのが、所得税法157条(同族会社等の行為又は計算の否認)です。
かみ砕くと、こういう規定です。同族会社との取引は、身内どうしなので税金を減らす方向に価格を自由に動かせてしまう。そこで税務署長に、「税負担を不当に減少させる不自然・不合理な取引を、通常の取引に引き直して課税してよい」という強い権限が与えられている。これが、実務家が“伝家の宝刀”と呼ぶゆえんです。しかも、経費性そのものは所得税法37条で判断されるため、157条と37条の両面から詰められます。
この“宝刀”の怖いところは、租税回避の目的がなくても適用されうる点です。「節税のつもりはなかった」という主観は関係なく、取引が独立した第三者どうしの通常取引と食い違っていれば否認の対象になります。この不当性の判断基準を示したリーディングケースが、法人税法132条をめぐるIBM事件(最高裁 平成28年2月/東京高裁 平成27年3月25日)で、「独立当事者間の通常取引と異なり、経済的・実質的に不合理・不自然か」という客観基準が確立しました。同じ条文構造を持つ所得税法157条の解釈にも、この客観基準が効いてきます。
適正額はどう決まるのか──「倍半基準」で比べられる
では、税務署は「適正な管理料」をどうやって算定するのか。答えは、比準同業者(同族関係のない管理会社)の平均管理料です。
その同業者を選ぶときに使われるのが「倍半基準」という手法です。これは、比較対象を、規模など(家賃収入や物件数)が本人のおおむね0.5倍〜2倍のレンジに収まる非同族の管理会社から抽出し、その平均と照らし合わせるやり方です。つまり、「よその管理会社なら、この規模でいくら取っているか」という現実の相場に引き戻される。身内価格が通用しない世界に連れて行かれるわけです。
管理料否認は“否認の四天王”の第2位
同族会社ならではの税務否認リスクは、実務では“否認の四天王”として整理できます。
- 同族会社の行為計算否認(法法132・所法157・相法64/IBM事件 最判平28.2)──伝家の宝刀そのもの
- 過大管理料の否認(所法157)──本記事のテーマ
- 過大役員報酬の否認(法法34②/残波事件=最高裁 平成30年1月25日上告不受理で確定)──定期同額給与の形式を満たしても、類似法人の最高額超過部分は否認された
- 留保金課税(特定同族会社の特別税率/資本金1億円以下は原則適用除外)
管理料はこの四天王の第2位。つまり、税務調査で真っ先に狙われる“主戦場”のひとつです。役員報酬や留保金課税を含めた否認リスクの全体像は、法人化のデメリット・向かない人で詳しく扱っていますので、あわせてご覧ください。
【判例水準表】請求30〜60%が4〜10%に切り下げられた──否認された料率の実リスト
ここが本記事の証拠パートです。「否認されると、どこまで切り下げられるのか」を、実際の判例・裁決で見ていきましょう。数字を眺めるだけで、“高率設定の危うさ”が肌でわかるはずです。
| 事案 | 方式 | 当初の割合 | 認定された適正水準 |
|---|---|---|---|
| 東京地裁 平6.1.28 | 管理委託 | 34〜37% | 約4.9%(役員=養子夫婦の行為は「協力扶助義務の履行にすぎない」) |
| 名古屋地裁 平9.1.31 ほか | 管理委託 | 賃料と同額 | 3.89〜4.41%(「特段ノウハウや手間がかからず」) |
| 最高裁 平6.6.21 | ─ | 30% | 5〜9% |
| 審判所 平12.1.31 | ─ | 40%超 | 8〜9% |
| 東京地裁 平13.1.30 | 転貸 | 約60% | 約10% |
| 審判所 平14.4.24 | ─ | 33〜35% | 3〜4% |
| 福岡地裁 平4.5.14 ほか | 転貸 | 30〜34% | 建物6%・駐車場9%(比準同業者から算定) |
| 千葉地裁 平8.9.20 ほか | 転貸 | 38.77〜49.95% | 転借人に管理を任せた建物は適正管理料ゼロ |
| 浦和地裁 平4.5.25 ほか | 転貸 | 固都税相当で借り正常賃料で転貸 | 「独立対等な当事者間では通常行われない取引」として賃料収入は本人帰属 |
いくつか、読み解きのポイントを補足します。
「身内だから」は理由にならない。 東京地裁 平6.1.28は、役員が養子夫婦でした。裁判所は「その行為は夫婦・親族としての協力扶助義務の履行にすぎない」と判断し、34〜37%取っていた管理料を約4.9%まで否認しました。家族が名目上の役員に入っているだけでは、管理業務の対価とは認められないのです。
「手間がかかっていない」と見られたら終わり。 名古屋地裁 平9.1.31は、「特段のノウハウや手間がかからず」として3.89〜4.41%まで切り下げました。管理料は“手間とノウハウの対価”であり、それが乏しければ数%しか残らない、という冷徹な論理です。
転貸(サブリース)は特に厳しい。 千葉地裁 平8.9.20では、転借人に管理を丸投げしていた建物について適正管理料はゼロと認定されました。浦和地裁 平4.5.25に至っては、賃料収入そのものが本人(個人)帰属とされ、法人へ移したはずの家賃が個人の所得に戻されています。
こうした事案を横断して、山本氏(『相続対策の方程式』)は「当初申告30〜61%が、適正管理料はおおむね4.5〜7%(多くは5〜6%前後)まで否認された」とまとめています。さらに、青木ほか編『会社活用と税務』は裁判例24件・裁決9件を「賃貸方式/収入/支払額/管理度合い/適正割合」で一覧化したうえで、編者自ら「収入の何%なら否認されないというルールは発見できない」と明言しています。
つまり、判例を集めれば集めるほど、「安全な料率」という答えは出てこない。むしろ「実態が伴わなければ、何%だろうと削られる」という結論に収束するのです。
では20%は認められている──裁決H10.2.26・H19.6.19の“認容例”と否認例の分かれ目
ここまで否認判例ばかり並べましたが、話はそう単純ではありません。否認一色ではないのです。
国税不服審判所は、管理委託方式で20%を認容した裁決(平成10年2月26日/平成19年6月19日)を出しています。片や東京地裁 平6.1.28では34〜37%が4.9%に否認され、片や別の事案では20%が通っている。この落差こそ、「%では決まらない」ことの何よりの証拠です。もし「20%は高すぎるから否認」という単純なルールなら、20%が認容されることは絶対にありえません。
では、何が分かれ目だったのか。答えは、業務実態が伴っていたかどうかです。20%が通った事案では、法人が現実に管理業務を担っていたと考えられます。一方、4.9%に落とされた事案では、養子夫婦が名前を貸していたにすぎなかった。数字の高低ではなく、実態の有無が結論を分けたのです。
この点について、東京高裁は決定的な一言を残しています。「20%以内であればフリーパスということではなく、建物の規模・地域性・管理業務の内容等に即して個別判断される」(KACHIEL)。
読者の皆さんへの翻訳はこうです。
- 低くても、実態がなければ否認される。 5%でも、法人が何もしていなければ削られます。
- 高くても、実態が伴えば争える。 20%でも、業務日誌や契約が現実を裏づけていれば通ることがあります。
料率は“入口”にすぎません。「管理料20%取っても大丈夫ですか?」という質問に私が常々お答えしているのも、まさにこれです──規模・地域・業務内容次第。実態が伴わなければ5%でも否認、伴えば争える。証拠がすべて、と。
17年間、会計処理だけで済ませた賃貸料が丸ごと否認された裁決(平成24年12月4日)
料率の議論よりも、もっと手前の“%以前の問題”を突きつける裁決があります。平成24年12月4日裁決です。
この事案では、17年間にわたって、賃貸料を同族会社の会計処理だけで法人へ付け替えていました。帳簿の上では、確かに法人が賃料を受け取っていることになっている。ところが審判所は、その賃貸料を丸ごと否認し、収益は個人に帰属すると判断しました。
決め手は、次の3点が未了だったことです。
- 所有権移転登記が行われていない
- 賃貸借契約書の変更がなされていない
- 賃料振込口座の変更がなされていない
つまり、契約・登記・お金の流れという「外形」が個人のまま放置されていた。これでは、いくら帳簿で法人の売上に計上しても、所得移転は成立していないとされたのです。
ここから得られる教訓は重いものです。帳簿上だけで法人へ付け替える“形だけの移転”は通用しない。 契約書があり、登記が動き、お金が法人名義の口座を通って流れる──この三位一体の外形が伴って初めて、所得が個人から法人へ移ったと認められます。
前の見出しで見た判例群が「料率の否認(高すぎる%を削る)」だったのに対し、この裁決は「実態そのものの否認(移転が成立していないとする)」です。両者を重ね合わせると、本記事の背骨が見えてきます──実態がなければ、何%でもゼロ。管理料の設定を考える前に、まず“移転が本当に成立しているか”を疑ってかかるべきなのです。
【本記事の核心】税務署が見るのは“実態”──自社管理の不動産会社経営の「これがエビデンスです」
さて、ここからが、私が他の発信者とはっきり違う話ができる部分です。
私は税理士として理屈を語れるだけでなく、宅建士として現場を知り、そして自分で賃貸物件の賃貸物件を自主管理しています。だから、否認判例が求める「実態の証跡」を、机上の理屈としてではなく、実物としてお見せできる立場にあります。
机上のスキームは教えます。でも、税務署が見るのは“現場”です。
否認回避の核心は、ただ一点。募集・集金・清掃・入居者対応・修繕発注といった管理業務を、法人が現実に行い、それを書面で裏づけること。これに尽きます。では、税務調査で「これが実態のエビデンスです」と胸を張って出せるものは何か。私が実際に整えている“実物4点セット”を挙げます。
否認されない現場の“実物4点セット”
- 管理委託契約書 ── 誰が何を負担するのかの費用負担区分、料率、そして毎年見直す条項を明記します。物件の規模や業務量が変われば料率も動く、という前提を契約に織り込んでおくことが、後の説明力になります。
- 業務日誌/業務日報 ── いつ、どの物件で、誰が、何をしたか。清掃、巡回、クレーム対応、立会い。日々の実働の記録こそが、「特段の手間がかかっていない」という否認理由への最強の反証です。
- 入退去・修繕手配の記録 ── 入居者の募集から契約、退去時の原状回復、修繕業者の手配・発注。管理会社が現実に賃貸経営の実務を回している証拠になります。
- 入出金通帳 ── 法人名義の口座での賃料入金と経費支払。お金が法人を通って流れている外形です。平成24年12月4日裁決が示したとおり、この“お金の流れ”が個人のままだと、すべてが崩れます。
「外注の上乗せ」には要注意
もうひとつ、実務で見落とされがちな落とし穴があります。管理業務の一部を第三者へ外注し、その外注費に利益を乗せてオーナーへ請求する“上乗せ”です。これは過大認定されやすい。「結局その業務、外注に丸投げしていますよね。法人の付加価値はどこですか?」と問われると答えに窮するからです。自社(法人)が付加している価値がどこにあるのかを、常に説明できる状態にしておく必要があります。
この「実態の証跡整備」こそが、料率の議論よりもはるかに重要な、否認回避の本丸です。そして正直に申し上げれば、この4点セットを毎年きちんと回すのは、それなりに手間がかかります。だからこそ、「%で悩み続けるくらいなら、いっそ建物ごと法人へ移して管理料問題を消す」という選択肢も現実的です。その全手順は建物だけ簿価で移す不動産所有方式で解説しています。
否認されると“二重に”損をする──過大管理料の落とし穴と対応的調整の限界
「もし否認されても、払いすぎた分を戻せばいいだけでは?」──そう考える方がいますが、ここに大きな誤解があります。過大管理料の否認は、単に経費が消えるだけでは終わりません。
山本氏(『相続対策の方程式』)は、こう警告しています。管理料が否認されても、法人が受け取った管理料(すでに役員報酬などに回した分)は、法人側で別個の所得として課税されたままです。つまり、個人側では経費が否認されて所得税が増え、法人側では受け取った収入がそのまま課税されている。結果として、過大管理料はかえって二重に税負担が増えるという最悪の事態になりうるのです。
「対応的調整」はあるが、自動的な救済ではない
「個人で否認されたなら、法人側の税金を減らしてくれるのでは?」という疑問には、制度上の答えがあります。対応的調整(所法157③・法法132③)です。これは平成18年度改正で明文化された仕組みで、管理料否認で個人の所得税が増額されたことに対応して、法人税を減額しうる、というものです。
ただし、ここに落とし穴があります。審判所は、法人税の減額更正を“義務付け”とはしない立場をとっています。つまり、対応的調整は自動的に受けられる救済ではない。「増えた個人税は取るが、法人税を必ず戻すとは限らない」という非対称が残るのです。
消費税は連動しない
さらに厄介なのが消費税です。消費税には、そもそも行為計算否認の規定がありません。したがって、店舗・事務所・駐車場など課税売上のある物件で管理料が否認されても、消費税の側では対応的調整が働かない。ここでも税負担が取り残されます。
こうして見ると、結論はひとつです。「否認されてから直す」のではなく、最初から実態と証跡で固めておくのが、いちばん安上がり。 事後の対応的調整に期待するのは、非常に分の悪い賭けなのです。
実務の落としどころ──何%で設定し、どう証跡を残すか(否認されない現場の作り方)
ここまで「%では決まらない」と繰り返してきました。とはいえ、「では、いくらに設定すればいいのか」という実務の指針がなければ動けません。あくまで“入口の目安”として、料率の相場を示します。
料率の目安(入口にすぎない)
- 管理委託方式:家賃の3〜8%。ここでいう家賃は集金額ベースで、礼金・共益費・水道光熱費は除いて計算します。
- サブリース(一括転貸)方式:借上げ差益10〜15%(=借上料は満室賃料の85〜90%)。法人が空室リスクを実際に負担する分、管理委託より高い率が正当化されやすい構造です。
サブリースの借上げ率の考え方は、3方式の選び方で差益10〜15%の根拠とともに整理しています。
設定の考え方
- 比準同業者(非同族の管理会社)の水準に収める ── 倍半基準で選ばれる同業者の相場から大きく外れないこと。
- 契約書に「費用負担区分・料率・毎年見直し条項」を明記 ── 業務量の変化に応じて料率を見直す前提を契約に埋め込む。
- 料率は業務量に見合わせる ── 手間の多い物件は高め、手間の少ない物件は低め。一律◯%は「特段の手間がかからず」と突かれる元です。
証跡整備チェックリスト(本記事の実行TODO)
否認されない現場は、次の5点を回し続けることで作られます。今日から着手できる実行リストです。
- [ ] 管理委託契約書(費用負担区分・料率・毎年見直し条項を明記)
- [ ] 業務日誌・業務日報(日々の実働を記録)
- [ ] 入退去・修繕手配の記録(募集から原状回復・発注まで)
- [ ] 法人名義口座での入出金(賃料入金と経費支払をすべて法人口座で)
- [ ] 税理士の意見メモ(料率の根拠と実態の確認を書面で残す)
最後に、時間軸の注意をひとつ。木下氏(『不動産法人化に関する実務論点整理』)は、管理料否認は「2006年(平成18年)の裁決以降さらに厳格化している」と指摘しています。過去に高率で設定したまま放置している方は、今のうちに料率と実態の両方を見直すことを強くおすすめします。調査が入ってからでは、もう証跡は作れません。
そして、これは発信上の約束でもありますが──料率も判例も税制改正も年度で変わります。「これで絶対に安全」という断定は、この分野には存在しません。個別の判断は、必ず不動産税務に強い税理士とともに行ってください。
まとめ──管理料は“%”ではなく“実態”で決まる
長くなりましたので、3行で振り返ります。
- 管理料に法定の適正率は存在しない(国税庁 課所6-46「目安となる適正額等はない」)。
- 否認判例は請求30〜60%が4〜10%に切り下げられている。20%を認容した裁決もあるが、東京高裁は「フリーパスではない」と明言している。
- 勝負を分けるのは、実物のエビデンス。 契約書・業務日誌・入退去/修繕記録・法人名義口座での入出金──この“現場の証跡”がすべてです。
「何%なら安全か」という問いは、実は間違った問いなのです。正しい問いは「うちの法人は、その管理業務を本当にやっているか。それを実物で証明できるか」。この問いに胸を張ってYESと言えるなら、料率はあとからついてきます。
次に読む
- 法人化そのものの是非と全体像 → 不動産の法人化とは(親記事・全体像と判断基準)
- 管理委託・サブリース・不動産所有の違いを俯瞰したい → 法人化3方式の選び方
- そもそも管理料問題を消したい → 建物だけ簿価で移す(不動産所有方式)
- 役員報酬・留保金課税など他の否認リスクも知りたい → 法人化のデメリット・向かない人
ご相談・さらに深く知りたい方へ
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※2026年時点の情報です。管理料の相場・裁判例・税制改正は年度で変わります。個別具体的な判断は、必ず不動産税務に強い税理士へご確認ください。
この記事を書いた人
税理士 × 宅地建物取引士 × 自社で賃貸管理を行う現役の実務家。「机上のスキーム」ではなく、自分で賃貸経営を回し、税務署が実際に何を見るかを現場で知る立場から、地主・不動産オーナーの法人化と相続を一人称で解説しています。管理料否認や小規模宅地特例の実態要件のように「本当に管理業務をやっているか」が争点になる論点では、業務日誌・入退去/修繕手配・入出金通帳という“実物のエビデンス”を示せることを強みにしています。買い煽らず、見送るべき方には正直に見送りをお伝えするのが信条です。

