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土地の課税を届出で防ぐ──「土地の無償返還に関する届出書」を出さないと何が起きるか

公開 2026.08.07 不動産法人化 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)

建物だけを法人に移すと、土地は個人、建物は法人という形になります。このとき法人は、個人の土地を借りて建物を建てている状態です。ここで手を打たないと、お金を1円も動かしていないのに、法人に多額の課税が起きます

これを止める方法は3つあり、同族の資産管理会社でいちばん使われるのが「土地の無償返還に関する届出書」です。紙1枚ですが、出し忘れると後から取り返しがつきません。

※本記事の人物・金額はすべて架空のモデル事例です。一般的な仕組みを解説するもので、個別の税務・法務相談ではありません。

→ 全体の流れは 不動産法人化の全体像。この記事は章5「土地の課税を届出で防ぐ」の解説です。

この記事でわかること


1. 何もしないと、法人に「もらった」課税が起きる

権利金を払って土地を借りるのが慣行になっている地域では、権利金を払わずに借りると、その分をタダでもらったものとして扱われます。法人が借りた側なら、借地権相当額を受贈益として法人の利益に加えるのが原則です(法人税法22条2項、法人税基本通達13-1-3)。これを権利金の認定課税、または借地権の認定課税と呼びます。

【モデル事例】 田中さん(仮)は、自分の土地の上にあるアパートの建物だけを、自分が作った資産管理会社に移しました。土地はそのまま個人名義で、会社から地代を受け取ることにしました。権利金のやりとりはありません。
この土地の更地価額が6,000万円、その地域の借地権割合が60%だとすると、法人は3,600万円をタダでもらったとみなされ、その分に法人税がかかる可能性があります。

現金は1円も動いていません。それでも税金だけが出ていく——これが、建物を移したあとで最初に踏む地雷です。

2. 止める方法は3つ

方法 中身 同族会社での使いやすさ
権利金を払う 相場どおりの権利金を法人から個人へ実際に支払う 法人に多額の現金が要る。個人側に譲渡所得が出る
相当の地代を払う 土地の更地価額のおおむね年6%の地代を払う(法人税基本通達13-1-2) 地代が高くなりすぎて、法人の利益を圧迫しやすい
無償返還の届出書を出す 「将来、土地は無償で返す」と契約書に書き、税務署へ届け出る 現金の負担がなく、地代も自由に決められる

3つとも認定課税は起きません。ただし、権利金は法人にまとまった現金が要り、相当の地代は毎年の負担が重くなります。親族間で作った資産管理会社では、3つ目の届出書がほぼ標準です。

3. 届出書の出し方——連名で、法人の税務署へ

正式には「土地の無償返還に関する届出書」といいます(法人税基本通達13-1-7)。手順は次のとおりです。

後から思い出して出しても、その年より前にさかのぼって効かせることはできません。建物を移す段取りの中に、届出書を組み込んでおくのが実務です。→ なぜ建物だけを法人へ移すのか

4. 地代を安くしすぎない

届出書を出せば地代はいくらでもよい、というわけではありません。地代が安すぎて使用貸借(ただ貸し)とみなされると、相続のときの評価が変わってしまうからです。

目安になるのが固定資産税です。固定資産税・都市計画税と同額程度しか受け取っていないと、賃貸借ではなく使用貸借と見られやすくなります。それを明確に超える地代を決め、契約書どおりに毎月きちんと動かすことが必要です。地代の入金がない、金額が毎年ばらばら、という状態は避けます。

地代は個人の不動産所得になります。取りすぎれば個人の所得税が増え、少なすぎれば評価が使えない。この幅の中で決める話です。

5. 相続のときに効く——土地は8割評価になる

届出書を出して賃貸借にしておくと、相続税の計算でその土地は自用地としての価額の80%で評価されます(昭和60年6月5日付 直資2-58)。残りの20%は、借りている法人側の価値として、その法人の株式の評価(純資産価額)に加えます。

家族全体で見れば合計100%で、消えてなくなるわけではありません。ただし20%ぶんが「土地」から「株式」に移るので、株式のほうで評価を下げる工夫(役員退職金や含み損など)が効く形になります。ここが、法人化が相続に効くと言われる仕組みの一つです。→ 資産管理会社の株をどう子へ渡すか

逆に、使用貸借のままだと土地は100%評価で、20%の圧縮も株式への付け替えも起きません。届出書と地代は、セットで初めて効きます。

まとめ

→ 次に読む:法人化と融資(章6)


出典

※確認日:2026年8月7日。契約書の作成や登記は司法書士・弁護士の領域です。税務の影響とあわせて、着手前に専門家へご確認ください。

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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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