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相続対策とは何か──やることは3つ、順番が決まっている

公開 2026.08.04 / 更新 2026.08.20 相続対策 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)

相続対策というと、まず節税の話になりがちです。ですが、相続で家族が実際に困るのは、税額そのものではありません。財産を分けられないこと、税金を現金で払えないこと、そして相続人どうしが揉めることです。

相続対策とは、この3つの困りごとに先回りして備えることです。やることは「分け方を決める」「納税資金を用意する」「税金を減らす」の3つで、この順番に意味があります。

※本記事の人物・金額はすべて架空のモデル事例です。一般的な仕組みを解説するもので、個別の税務・法務相談ではありません。

→ 全体の流れは 相続対策の全体像。この記事は章0「相続対策とは何か」の解説です。

この記事でわかること


1. 相続対策は3つに分かれる

相続対策は、防ぎたい困りごとごとに3つに分かれます。

対策 防ぐ困りごと
分割対策(分け方を決める) 誰が何を取るかで揉める。不動産が分けられない
納税資金対策(払えるようにする) 財産はあるのに、納税する現金がない
節税対策(税額を減らす) 相続税そのものが重い

3つのうち、節税だけが「税金の話」です。残り2つが防ぐ困りごとは、税額がゼロの家庭でも起きます。

実際、家庭裁判所の遺産分割の争いは、遺産が多い家庭だけのものではありません。司法統計では、調停などになった遺産分割事件のおよそ3分の1が、遺産1,000万円以下の家庭です。相続税がかからない規模でも、分け方では揉めます。

2. 順番は「分け方 → 納税資金 → 節税」

順番を逆にした失敗の典型が、節税から入るケースです。

【モデル事例】 田中さん(仮)は、相続税を減らすために手元の現金でアパートを建てました。たしかに相続税の計算上の評価額は下がります。ですが亡くなったあと、子ども3人はそのアパートを切り分けられません。売って分けようにも、すぐには売れません。納税のための現金も、アパートに変わってしまいました。

節税策の多くは、現金を不動産などの「分けにくい財産」に換えることで評価額を下げます。分け方と納税資金を決める前にやると、揉める原因と払えない原因を自分で作ることになります。

だから順番は、分け方 → 納税資金 → 節税です。分け方が決まり、払える見通しが立って、それでも税額が重いときに、初めて節税を考えます。

3. 対策の前に、2つ数える

3つの対策に入る前に、現状を数えます。数えるのは2つです。

基礎控除の範囲におさまるなら、節税対策は不要です。それでも、分け方の備え(遺言書と生命保険)は必要です。ここが相続対策のわかりにくいところで、「相続税がかからない家」にも相続対策はあります

4. 期限は、判断できなくなる日

相続対策には期限があります。亡くなる日ではありません。親が認知症などで判断できなくなる日です。

判断できなくなると、遺言を書くことも、贈与も、不動産の売買も、法律上できなくなります(民法3条の2)。つまり、ここまでに挙げた対策のすべてが止まります。

いつ来るかは誰にもわかりません。だから相続対策は、思い立った時点が始めどきになります。→ 認知症のリスクを考える──対策できるのは、判断できるうちだけ

まとめ

→ 次に読む:相続人を知る──法定相続人の数え方と法定相続分(章1)


出典

※確認日:2026年8月4日。遺言・成年後見などの手続きは弁護士・司法書士の領域です。税務の影響とあわせて、着手前に専門家へご確認ください。

「相続対策」の入口は2つあります

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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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