法人化すると決めたあと、次は会社の形を選びます。株式会社にするか、合同会社にするかです。
先に結論を書きます。この選択で税額は変わりません。設立にかかるお金、毎年の運営の手間、次の世代への渡しやすさの3つで差が出ます。順に見ていきます。
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1. 税率は同じで、費用、運営、承継の3つで選ぶ
株式会社も合同会社も、法人税法では同じ普通法人で、同じ税率表が使われます。出資した人の責任も、どちらも出資額までです。役員報酬で所得を分ける仕組みも同じです。つまり「どちらが節税になるか」という問いには、答えがありません。
設立にお金がかかる

合同会社のほうが安い
理由登録免許税の下限が低く、定款の認証が要りません(2章)。
毎年、運営の手間がかかる

合同会社のほうが軽いです
理由役員の任期がなく、決算公告の義務もありません(3章)。
次の世代への渡しやすさが変わる

株式会社のほうが自由です
理由株式は当然に相続財産になり、種類株式も使えます。合同会社は定款の定めが要ります(4章)。
2. 設立にかかるお金は、合同会社のほうが安い
登録免許税がかかる

株式会社15万円、合同会社6万円が下限です
やり方税率は資本金の0.7%で、下限に届かなければ下限額です(登録免許税法別表第一)。資産管理会社の資本金なら、下限額と考えておきます。
例市区町村の特定創業支援等事業の証明書があれば、半額(7万5,000円・3万円)になります。
定款の認証が要る

株式会社だけに要ります
やり方株式会社の定款は公証人の認証が要ります(会社法30条)。手数料は資本金100万円未満で3万円、300万円以上で5万円です(公証人手数料令35条)。
例発起人が3人以下の個人だけで、株式を全部引き受け、取締役会を置かないなら1万5,000円です。家族だけの会社はこれに当てはまることが多いです。
定款に印紙税がかかる

紙なら4万円、電子定款なら0円です
やり方紙の定款の原本には4万円の印紙税がかかります。電子データで作った定款にはかかりません(印紙税法2条・別表第一)。
理由実際には、自分で電子署名の環境をそろえるより、司法書士に電子定款で頼むほうが早いです。
3. 毎年の運営では3か所で差がつく
役員に任期がある

株式会社は任期があり、満了のたびに登記します
やり方取締役の任期は原則2年で、非公開会社なら定款で10年まで伸ばせます(会社法332条)。同じ人が続けても登記が要り、登録免許税は1万円です。合同会社にはこの任期がありません。
注意最後の登記から12年たつと休眠会社として扱われ、届出をしないと解散したものとみなされます(会社法472条)。
決算公告が要る

株式会社は、毎年貸借対照表を公告します
やり方定時株主総会のあと、遅滞なく公告します(会社法440条)。方法は定款で決めます。ただし、手間と費用が毎年かかります。合同会社にはこの義務がありません。
均等割がかかる

会社の形では変わりません。資本金で決まります
やり方資本金等の額が1,000万円以下なら年7万円、1,000万円超1億円以下なら年18万円が標準税率です(地方税法52条・312条)。
注意判定は資本金と資本準備金の合計でも行われます。資本準備金を含めて1,000万円未満に収めます。
4. 合同会社は、社員が亡くなると退社になる
【モデル事例】田中さんは、自分だけが社員の合同会社を作り、アパートの建物を移しました。定款には持分の承継について何も書いていません。田中さんが亡くなると、社員が1人もいない状態になります。子は、会社の建物ではなく、払戻しを請求する権利を引き継ぎます。人物は架空です。
定款の一文で防ぐ

「社員が死亡したら、相続人が持分を承継する」と書きます
やり方この定めがあれば、相続人は持分を承継した時に社員になり、払戻しも起きません(会社法608条)。
注意設立のときに定款に入れておけば確実です。社員が亡くなったあとでは間に合いません。定款案にこの条項があるかを、設立前に必ず確かめます。
株式会社だけの道具がある

種類株式で、決定権と取り分を分けて渡せます
やり方経営を任せたい子には議決権のある株を、そうでない子には議決権のない代わりに配当を優先する株を、と分けて渡せます(会社法108条)。
理由合同会社の業務は、定款に定めがなければ社員の頭数の過半数で決めます(会社法590条)。出資の割合と決定権が連動しません。
渡し方と株価の下げ方は「会社の株は、株価が下がった年に子へ渡す」で説明しています。
5. 資本金と決算月を決め、設立後の届出を期限内に出す
資本金を決める

1,000万円未満にします
理由1,000万円以上だと、売上の実績がない第1期・第2期から消費税を納める側になります(消費税法12条の2)。均等割の線も同じ1,000万円です。
注意極端に少ないと、口座の開設や融資の審査で見劣りします。
決算月を決める

設立月の直前の月末に置きます
理由消費税の免税は「2事業年度分」です。4月に設立するなら3月決算にすると、第1期を12か月近く確保できます。
注意住宅の家賃は非課税なので、居住用アパートだけの会社では効果があまり出ません。店舗や駐車場の賃料があるなら、2期目の特定期間の判定も見ます(消費税法9条の2)。
| 設立後の届出 | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険の新規適用届 | 年金事務所 | 5日以内 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 1か月以内 |
| 法人設立届出書 | 税務署 | 2か月以内 |
| 青色申告の承認申請書 | 税務署 | 設立から3か月と第1期末の早いほうの前日まで |
| 法人設立・設置届 | 都道府県・市区町村 | 自治体の条例による |
まとめ
- 株式会社も合同会社も税率は同じで、費用、運営、承継の3つで選びます
- 設立の登録免許税は株式会社15万円、合同会社6万円で、定款の認証は株式会社だけに要り、電子定款なら印紙税4万円もかかりません
- 株式会社には役員の任期と重任登記、決算公告がありますが、均等割は会社の形で変わりません
- 合同会社は社員の死亡が退社事由になり、定款に承継の一文を入れないと持分は相続されません
- 資本金は1,000万円未満にし、決算月は設立月の直前の月末に置き、青色申告の申請は期限を落としません
まず、今日できること
- 会社を継ぐ子が何人いるか、決定権を誰に集めたいかを書きます。1人なら合同会社でも足りることが多いです
- 合同会社にするなら、定款案に「社員が死亡したら相続人が持分を承継する」の一文があるか確かめます
- 設立月を決め、決算月をその直前の月末に置きます。青色申告の申請期限をカレンダーに書きます
出典
- 会社法30条(定款の認証)、108条(種類株式)、332条(取締役の任期)、440条(計算書類の公告)、472条(休眠会社のみなし解散)、590条(業務の執行)、607条・608条・611条(法定退社・相続の特則・持分の払戻し)、641条(解散の事由)
- 登録免許税法別表第一(会社の商業登記)、公証人手数料令35条、印紙税法2条・別表第一第6号
- 法人税法57条(欠損金の繰越し)、122条(青色申告の承認の申請)、148条(設立の届出)
- 消費税法9条の2(特定期間)、12条の2(新設法人の納税義務の免除の特例)
- 地方税法52条・312条(法人住民税の均等割)、厚生年金保険法施行規則13条・15条
- 中小企業庁「会社設立時の登録免許税の軽減について」
※確認日:2026年9月3日。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務・法務相談ではありません。均等割の税率と地方の設立届の期限は自治体で異なります。会社の形、資本金、決算月、定款の条項は、設立の前に税理士と司法書士にご確認ください。
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