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入居中のトラブルは、記録を残してから直す。直した費用は経費とは限らない

入居が決まって家賃が入り始めると、次に連絡が来ます。上の階がうるさい、エアコンが動かない、消防の点検の案内が届いた。たいてい、大家はこの場面で次の一歩に迷います。

買った人も、建てた人も、相続した人も、入居中の連絡は同じ形で来ます。どの連絡でも、先に記録を残します。そして直したあとに、その費用がその年の経費になるか、何十年もかけて落とすことになるかが決まります。

この記事でわかること
  1. 01
    入居中に来る連絡は、大きく3つに分かれる
  2. 02
    設備を直さない間は、家賃が当然に減る
  3. 03
    クレームは、解決の前に記録を残す
  4. 04
    法定点検は、点検して終わりではない
  5. 05
    直した費用は、修繕費か資本的支出かで分かれる

1. 入居中に来る連絡は、大きく3つに分かれる

これは直す話か、伝える話か、届け出る話か。先に仕分けると動けます。

入居者どうしのトラブルに対応する

アパートの模型の上下2部屋の間に、金茶の細い波線が1本引かれている線画

騒音、ゴミ出し、ペット、駐車などがあります

やり方記録を残し、まず全体に注意を促し、収まらなければ個別に申し入れます(3章)。

設備の故障を直す

レンチとドライバー、その横に置かれた水道の蛇口の線画

給湯器、エアコン、水漏れ、鍵などがあります

やり方貸している側に直す義務があります(民法606条1項)。連絡を受けたら、その日のうちに業者を手配します。

建物の法定点検をする

壁ぎわに置かれた金茶の消火器と、その脇に下がる無地の点検票の線画

消防設備、貯水槽、エレベーターなどがあります

やり方期限どおりに点検し、結果を行政へ報告します(4章)。

2. 設備を直さない間は、家賃が当然に減る

2020年4月からの民法では、入居者のせいでなく設備が使えなくなったとき、使えなくなった部分の割合に応じて家賃が当然に減ります(民法611条1項)。以前は「減額を請求できる」でしたが、いまは請求を待たずに減ります。

連絡を受けてから手配するまでの日数が、そのまま収入の差になります

壁に取り付けられた給湯器の下に、金茶の縁の空の洗面器が置かれている線画

後回しにした止まっている日数の分、家賃が減る

風呂の使えない部屋を貸していた状態が続きます。減った分は、あとから精算の話になります

蓋を開けた工具箱と、その横で受話器を取り上げた固定電話の線画

その日に手配した止まっている日数が短く済む

業者への連絡日、訪問日、完了日を記録しておくと、あとで金額の話になったときに揉めません

管理会社に任せている場合も、報告のタイミングだけは先に決めておきます。連絡が大家まで上がってこないと、日数だけが積み上がります(「管理を任せるか自分でやるかは、手取りで比べる」)。

【モデル事例】真夏に給湯器が止まったと連絡を受けた大家の田村さんが、業者の手配を後回しにして、直るまで10日かかりました。この10日は風呂の使えない部屋を貸していたことになり、その分の家賃は減る前提で精算しました。人物と日数は架空です。

3. クレームは、解決の前に記録を残す

騒音やゴミのクレームで、いきなり相手の部屋に言いに行くと危険です。事実がはっきりしないうちに個人を決めつけて動くと、こちらが加害者になりかねません。

クレームを受けたときの順番

先に、いつ起きたかを聞く。曜日と時間帯まで聞き取る

1記録する受けた日時、誰から、何が、いつ起きたかを書き留める
2全体に伝える掲示や全戸配布で、名指しせずに注意を促す。これで収まることが多い
3個別に申し入れる収まらず、相手が特定できたときだけ。書面で残す

この記録は、契約を続けるかどうかを決めるときの材料にもなります。手順のくわしい中身は「騒音・ゴミのトラブル対応」で説明しています。

4. 法定点検は、点検して終わりではない

建物には、法律で決まった点検があります。点検の実施と、行政への報告は別の作業です。

期限どおりに点検する

日付欄のマス目がある業務日誌と万年筆の線画

消防用設備等は、定期に点検する

やり方点検業者に頼み、実施した日と結果を控えで残します(消防法17条の3の3)。

結果を消防署へ報告する

木の郵便受けに無地の封筒を1通差し入れている手元の線画

共同住宅は、報告の周期が決まっている

注意業者に頼んで終わりと思っていると、報告だけが抜けます。周期と提出先は「賃貸物件と消防法」で説明しています。

5. 直した費用は、修繕費か資本的支出かで分かれる

ここが税金の話です。同じ「直した」でも、その年に全額が経費になるものと、資産に計上して何年もかけて落とすものに分かれます。

修繕費になる

無地の請求書と、その横の硬貨3枚の線画

元の状態に戻すための支出になります。その年に全額が経費になります

壊れた給湯器の交換、退去のあとの壁紙の張り替えなど、元どおりにする工事です。

資本的支出になる

無地の帳簿のページが10枚、扇のように広がっている線画

価値を高める、使える期間を延ばす支出になります。資産に計上します

全室の間取りの変更、外壁の全面改修など。耐用年数で分けて経費にします。

迷ったときの目安が通達に置かれています(所得税基本通達37-12、37-13ほか)。1回の金額が20万円未満なら修繕費でよい。おおむね3年以内の周期で繰り返す修理なら修繕費でよい。どちらとも決めがたいときは、60万円未満、またはその資産の前年末取得価額のおおむね10%以下なら修繕費として差し支えありません。大規模修繕のように金額が大きいものは、まず資本的支出を疑ってかかります。見積書を「元に戻す部分」と「良くした部分」に分けて書いてもらうと、判断が楽になります(「構築物・附属設備・修繕費の分け方」)。

まとめ

要点

まず、今日できること

  1. 設備の連絡を受けた日、業者に電話した日、直った日を書く記録の形を決めます
  2. 物件ごとに、消防設備などの点検をいつ行い、いつ報告したかを確かめます
  3. 今年払った修繕の請求書を並べ、1件20万円以上のものに印を付けます

次に読む:敷金は、退去の立会いから返還まで6つの手順で精算する構築物・附属設備・修繕費の分け方

出典

※確認日:2026年9月3日。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務・法務相談ではありません。契約解除や明渡しの手続きは弁護士の領域です。修繕費と資本的支出の区分は工事の中身で結論が変わるため、金額の大きい工事は着手の前に税理士にご確認ください。

公開 2026.08.07 / 更新 2026.09.07 賃貸経営 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)

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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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