入居が決まって家賃が入り始めると、次に連絡が来ます。上の階がうるさい、エアコンが動かない、消防の点検の案内が届いた。たいてい、大家はこの場面で次の一歩に迷います。
買った人も、建てた人も、相続した人も、入居中の連絡は同じ形で来ます。どの連絡でも、先に記録を残します。そして直したあとに、その費用がその年の経費になるか、何十年もかけて落とすことになるかが決まります。
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1. 入居中に来る連絡は、大きく3つに分かれる
これは直す話か、伝える話か、届け出る話か。先に仕分けると動けます。
入居者どうしのトラブルに対応する

騒音、ゴミ出し、ペット、駐車などがあります
やり方記録を残し、まず全体に注意を促し、収まらなければ個別に申し入れます(3章)。
設備の故障を直す

給湯器、エアコン、水漏れ、鍵などがあります
やり方貸している側に直す義務があります(民法606条1項)。連絡を受けたら、その日のうちに業者を手配します。
建物の法定点検をする

消防設備、貯水槽、エレベーターなどがあります
やり方期限どおりに点検し、結果を行政へ報告します(4章)。
2. 設備を直さない間は、家賃が当然に減る
2020年4月からの民法では、入居者のせいでなく設備が使えなくなったとき、使えなくなった部分の割合に応じて家賃が当然に減ります(民法611条1項)。以前は「減額を請求できる」でしたが、いまは請求を待たずに減ります。
連絡を受けてから手配するまでの日数が、そのまま収入の差になります

後回しにした止まっている日数の分、家賃が減る
風呂の使えない部屋を貸していた状態が続きます。減った分は、あとから精算の話になります

その日に手配した止まっている日数が短く済む
業者への連絡日、訪問日、完了日を記録しておくと、あとで金額の話になったときに揉めません
管理会社に任せている場合も、報告のタイミングだけは先に決めておきます。連絡が大家まで上がってこないと、日数だけが積み上がります(「管理を任せるか自分でやるかは、手取りで比べる」)。
【モデル事例】真夏に給湯器が止まったと連絡を受けた大家の田村さんが、業者の手配を後回しにして、直るまで10日かかりました。この10日は風呂の使えない部屋を貸していたことになり、その分の家賃は減る前提で精算しました。人物と日数は架空です。
3. クレームは、解決の前に記録を残す
騒音やゴミのクレームで、いきなり相手の部屋に言いに行くと危険です。事実がはっきりしないうちに個人を決めつけて動くと、こちらが加害者になりかねません。
クレームを受けたときの順番
先に、いつ起きたかを聞く。曜日と時間帯まで聞き取る
この記録は、契約を続けるかどうかを決めるときの材料にもなります。手順のくわしい中身は「騒音・ゴミのトラブル対応」で説明しています。
4. 法定点検は、点検して終わりではない
建物には、法律で決まった点検があります。点検の実施と、行政への報告は別の作業です。
期限どおりに点検する

消防用設備等は、定期に点検する
やり方点検業者に頼み、実施した日と結果を控えで残します(消防法17条の3の3)。
5. 直した費用は、修繕費か資本的支出かで分かれる
ここが税金の話です。同じ「直した」でも、その年に全額が経費になるものと、資産に計上して何年もかけて落とすものに分かれます。
修繕費になる

元の状態に戻すための支出になります。その年に全額が経費になります
例壊れた給湯器の交換、退去のあとの壁紙の張り替えなど、元どおりにする工事です。
資本的支出になる

価値を高める、使える期間を延ばす支出になります。資産に計上します
例全室の間取りの変更、外壁の全面改修など。耐用年数で分けて経費にします。
まとめ
- 入居中の連絡は、入居者どうしのトラブル、設備の故障、法定点検の3つに仕分けます
- 設備を直さない間は、家賃が当然に減ります。手配までの日数がそのまま収入の差になります
- クレームは、記録、全体への告知、個別の申し入れの順で進めます。いきなり個人に当たりません
- 法定点検は、点検の実施と行政への報告が別の作業になります。報告だけが抜けやすいです
- 費用は修繕費か資本的支出かに分かれます。20万円未満、3年以内の周期、60万円未満が目安になります
まず、今日できること
- 設備の連絡を受けた日、業者に電話した日、直った日を書く記録の形を決めます
- 物件ごとに、消防設備などの点検をいつ行い、いつ報告したかを確かめます
- 今年払った修繕の請求書を並べ、1件20万円以上のものに印を付けます
出典
- 民法606条1項(賃貸人の修繕義務)、611条1項(賃借物の一部滅失等による賃料の減額)
- 消防法17条の3の3(消防用設備等の点検及び報告)
- 所得税基本通達37-10〜37-14(資本的支出と修繕費)
- 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)
※確認日:2026年9月3日。本記事は一般的な仕組みを説明するもので、個別の税務・法務相談ではありません。契約解除や明渡しの手続きは弁護士の領域です。修繕費と資本的支出の区分は工事の中身で結論が変わるため、金額の大きい工事は着手の前に税理士にご確認ください。
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