- 011. 線は「売るために直接かかったか」
- 022. 入るもの・入らないもの
- 033. 間違えやすい3つ
- 044. 領収書は5年、できれば7年
- 05まとめ
- 06出典
取得費の次に引けるのが譲渡費用です。取得費ほど大きくはありませんが、100万円単位で効きます。そして入れてはいけないものを入れると、あとで否認されます。
譲渡費用は「売るために直接かかった費用」だけです。持っている間にかかった費用と、売った後の自分の都合でかかった費用は入りません。この線が引ければ、ほとんど迷いません。
※本記事の人物・金額はすべて架空のモデル事例です。一般的な仕組みを解説するもので、個別の税務・法務相談ではありません。
→ 全体の流れは 不動産売却の全体像。この記事は章6「譲渡費用を数える」の解説です。
この記事でわかること
- 譲渡費用の定義は「売るために直接要した費用」だけ
- 入るもの・入らないものの一覧
- 間違えやすい3つ(抵当権抹消・修繕費・固定資産税)
- 領収書の残し方と、いつまで保存するか
1. 線は「売るために直接かかったか」
譲渡費用は、資産を譲渡するために直接要した費用とされています(所得税基本通達33-7)。判断は2つの問いで足ります。
- その売買がなければ、かからなかった費用か
- 持っている間の維持・管理のための費用ではないか
維持管理のための費用は、売る売らないにかかわらず発生します。だから譲渡費用にはなりません。この一点で、迷うものの大半は片付きます。
2. 入るもの・入らないもの
| 入る(譲渡費用) | 入らない |
|---|---|
| 売却時の仲介手数料 | 売る前にした修繕・リフォーム代 |
| 売買契約書の印紙税(売主負担分) | 固定資産税・都市計画税(日割り精算分を含む) |
| 貸していた人に払った立退料 | 抵当権抹消の登記費用 |
| 土地を売るための建物の取壊し費用と取壊し損失 | 引っ越し代・仮住まいの家賃 |
| 売るために行った測量費 | 遺産分割のためにかかった費用 |
| より有利な条件で売るために解除した契約の違約金 | 売却代金の取立てにかかった費用 |
| 借地権を売るときの地主への名義書換料 | 売却を頼んだ税理士への申告報酬 |
3. 間違えやすい3つ
抵当権抹消の費用。買主に渡すには抵当権を消す必要があるので、売却のためだと思いがちです。しかし、これは自分の借金を返して自分の権利関係をきれいにする費用であって、譲渡のために直接要した費用にはあたらないとされています。金額は小さいので、無理に入れないでください。
売る前のリフォーム代。見栄えをよくして高く売るために直したとしても、建物の維持や改良のための費用です。譲渡費用ではありません。ただし、その支出が建物の価値を高めるものなら、取得費(資本的支出)として計上できることがあります。捨てる前に、取得費側で拾えないかを確認します。→ 構築物・附属設備・修繕費の分け方
固定資産税の日割り精算。決済日に買主から受け取る精算金は、費用ではなく売買代金の一部として扱います。つまり譲渡収入に足す側です。引く側ではありません。ここを逆にすると、収入も費用も両方ずれます。
【モデル事例】 山本さん(仮)は2,500万円で自宅を売却。仲介手数料89万円(税込)、印紙税1万円、境界確定の測量費35万円で、譲渡費用は125万円。一方、売却前に張り替えた壁紙18万円と、抵当権抹消の登記費用2万円は譲渡費用に入れられなかった。
4. 領収書は5年、できれば7年
譲渡費用は、支払った証拠がなければ引けません。決済のあと、次のものを1つの封筒にまとめておきます。
- 売買契約書(印紙が貼られたもの)の写し
- 仲介手数料の領収書
- 測量・取壊し・立退きの請求書と振込控え
- 司法書士からの精算書
確定申告の書類は原則5年間保存です。税務署から問い合わせが来るのは、申告の1〜2年後が多いので、少なくともそこまでは確実に残します。取得費の資料とあわせて、同じ封筒に入れておくのが確実です。
まとめ
- 譲渡費用は「売るために直接かかった費用」だけ。維持管理の費用は入らない
- 入るのは仲介手数料・印紙税・立退料・取壊し費用・測量費など
- 抵当権抹消費用・売る前のリフォーム代・固定資産税は入らない
- 固定資産税の日割り精算金は、引く側ではなく収入に足す側
→ 次に読む:特例を確かめる(章7)/不動産売却の譲渡所得税──分離課税の仕組み
出典
- 所得税法33条3項(譲渡所得の金額)
- 所得税基本通達33-7(譲渡費用の範囲)、33-8(借入金利子等)
- 国税庁タックスアンサー No.3255(譲渡費用となるもの)
- 国税通則法70条(更正・決定等の期間制限)
※確認日:2026年8月7日。個別の費用が譲渡費用になるかは、契約の内容によって判断が分かれることがあります。金額が大きいものは事前にご相談ください。
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