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売った翌年の確定申告──分離課税の書き方・添付書類・納付と、忘れがちな住民税

公開 2026.08.07 不動産売却 筆者:宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・大家)

引き渡しが終わっても、売却は終わりません。最後に、翌年の確定申告が残っています。ここまでに積み上げた取得費・譲渡費用・特例を、紙の上で形にする作業です。

期限は売った年の翌年2月16日から3月15日まで。使うのは「申告書第三表(分離課税用)」と「譲渡所得の内訳書」の2つです。特例を使うなら、その特例ごとに添付書類がつきます。

※本記事の人物・金額はすべて架空のモデル事例です。一般的な仕組みを解説するもので、個別の税務・法務相談ではありません。

→ 全体の流れは 不動産売却の全体像。この記事は章8「申告して納める」の解説です。

この記事でわかること


1. 売却のもうけは、給与と合算しない

不動産の譲渡所得は、給与や事業の所得と合算せず、別枠で税率をかけます(分離課税。租税特別措置法31条・32条)。だから、給与が高い人でも売却益の税率は変わりませんし、逆に売却益が出ても給与の税率は上がりません。

所有期間(売った年の1月1日時点) 税率
5年以下(短期譲渡所得) 39.63%(所得税30% + 復興特別所得税 + 住民税9%)
5年超(長期譲渡所得) 20.315%(所得税15% + 復興特別所得税 + 住民税5%)

不動産売却の譲渡所得税──分離課税の仕組みと、税率が2倍変わる「5年」の判定

2. 用紙は2つ、添付書類は特例ごと

提出するのは次のとおりです。

これに、次の資料を添えます。

使う特例 おもな添付書類
共通 売買契約書の写し(購入時・売却時)、仲介手数料などの領収書の写し
マイホーム3,000万円控除 売った家屋の登記事項証明書。住民票の住所が違う場合は戸籍の附票など
空き家の3,000万円控除 被相続人居住用家屋等確認書(市区町村が発行)、耐震基準適合証明書など
10年超の軽減税率 登記事項証明書(所有期間の確認)
相続税の取得費加算 相続税の申告書の写し、取得費加算の計算明細書

市区町村が出す確認書は、申請から交付まで数週間かかることがあります。3月に入ってから動くと間に合いません。

3. 税額がゼロでも、申告はする

特例を使って税額がゼロになる場合でも、申告しなければ特例は適用されません。「払う税金がないから出さなくていい」は、この場面では通りません。

【モデル事例】 高橋さん(仮)は自宅を売り、もうけが2,400万円。3,000万円控除で税額はゼロになると聞いて申告しなかった。翌年、税務署からお尋ねが届き、期限後に申告することに。特例自体は使えたが、手間と不安が残った。

税務署は、法務局からの情報で「誰が不動産を売ったか」を把握しています。申告しないと、まずお尋ねが届きます。

4. 納付と、そのあとに来るもの

忘れやすいのが、住民税の時期です。3月に所得税を納めて終わったつもりでいると、6月に大きな納付書が来て慌てます。売却代金は使い切らず、税金分を先に別口座へ寄せておくのが安全です。

もうけが出ると、翌年の次のものにも響きます。

とくに保険料と窓口負担は、高齢の親が実家を売ったときに効いてきます。税額だけを見て判断しないでください。

5. 損が出たときは

売って損が出ても、原則としてその損を給与など他の所得と通算することはできません。ただしマイホームを売って損が出た場合には例外があり、一定の要件を満たせば給与所得などと通算し、翌年以後3年間くり越せます(租税特別措置法41条の5、41条の5の2)。この場合も申告が必要です。

まとめ

→ 次に読む:大家の所得税──不動産所得の計算から確定申告までの基本賃貸経営の全体像(売らずに貸し続ける道)


出典

※確認日:2026年8月7日。保険料や窓口負担の基準は制度改正で変わります。高齢の方の売却は、事前に影響を確認してください。

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宍倉奎次郎
税理士・宅地建物取引士・大家
宍倉 奎次郎

税理士・宅地建物取引士。自身も賃貸物件を持つ大家の立場から、法人化・相続・不動産管理まわりの税務を、制度と判例にもとづいて解説しています。記事内の事例はすべて架空のモデルケースです。制度・税率・判例は年度で変わります。個別具体的な判断は、不動産税務に強い税理士へご確認ください。

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