不動産売却前に絶対に知っておくべきこと~媒介契約や業者選びの注意点~

不動産

不動産売却の一連の流れと注意点: 査定依頼から確定申告まで

まずは全体像が分からないとイメージがつかないので、まずはどのような流れで不動産の売買取引が行われるのかを知りましょう。不動産売却の流れと各ステップで注意すべきポイントをわかりやすく解説します。

1.売りたい不動産の査定依頼

不動産売却を検討している際には、まずは不動産会社に査定を依頼します。査定や相談は基本的に無料で行ってくれます。

2.不動産仲介業者に買い手探しを依頼する(媒介契約)

査定依頼を経て売却を決定したら、不動産仲介業者に不動産の買い手を探してもらう契約(媒介契約と呼びます)を結びます。

3.仲介業者による売却活動のスタート

媒介契約を結んだら、不動産会社が売却活動を開始します。不動産仲介業者は広告掲載や内覧調整、買い手からの質問対応などを代行してくれます。

4.買い手が見つかったら売買契約

買い手が見つかったら、売買契約を結びます。一般的に不動産の買い手は銀行からの融資を受けて、不動産を買いますので、契約を先に行い後日銀行の融資を受けて代金の支払いと不動産の権利移転を行うことが一般的です。

5.代金決済と物件引渡

契約した内容に基づき、決済と物件の引渡しが行われます。司法書士が間に入り、売買代金の振込と引き換えに当日中に物件の所有権を移転します。この時、物件の状態確認や鍵の引き渡しなども同時に行います。

6.不動産売却により利益が出ていたら確定申告

忘れてはならないのが不動産売却によって得た所得についての確定申告です。売却益が出た場合、利益に対して所得税と住民税の支払いが必要となるため、自分で確定申告します。確定申告が必要なのか、各種税金の有利な特例を使えないかは必ず確認します。


以上が不動産売却の一連の流れです。

不動産仲介業者と売買の仕組み

不動産仲介業者の役割や媒介契約の種類、仲介業者に支払う報酬の内容と仕組みについて説明します。

不動産仲介業者とは?

不動産仲介は不動産を売る人または買う人の代わりに相手探し・マッチングや契約手続きを代行する仕事です。不動産仲介については免許制になっており、国から許可を受けた業者しか行うことは禁止されています。具体的な役割には、不動産の査定、販売広告の作成と掲載、買主の募集、内見の調整、売買契約書の作成と説明、引渡し手続きなどがあります。仲介業者なしでも不動産売買はできますが、身内や知り合いとの取引でない限り、自分で不動産を売るのはやめたほうがよいでしょう。様々なトラブルが起きる可能性があり、金額が大きい不動産取引のトラブルはリスクが大きすぎるからです。

媒介契約の種類

不動産売買における媒介契約には大きく分けて一般媒介契約と専任媒介契約の二つのタイプがあります。一般媒介契約では、売主は複数の仲介業者に売却を依頼できます。一方、専任媒介契約では、1つの不動産会社にのみ売却の依頼をすることができます。不動産会社側からすると専任媒介契約であれば不動産は買い手を探せばかならず報酬をもらえますが、一般媒介契約の場合買い手を見つけても他の不動産会社に行ってしまい、報酬をもらえないことがあるということです。したがって、不動産会社は売れる物件に関しては専任媒介契約をしてもらいたいのです。

基本的にどの仲介業者でも支払う報酬の限度額は同じ

不動産売却における仲介業者の報酬は、物件価格の3%+6万円が上限とされています。報酬は、売買が成立し、代金の支払いと引渡しが行われた時に支払われます。この限度額は免許制のために定められており、売主と買主がそれぞれこの額を負担する形で設定されています。

両手仲介と片手仲介:どちらを選ぶべき?

不動産売買において、仲介業者が売主と買主の両方を探してくる「両手仲介」と、売主または買主のいずれか一方だけを代表する「片手仲介」があります。

両手仲介のメリットとデメリットメリット

メリット:両手仲介では、仲介業者が売主と買主の両方の意見を聞いて、スムーズに取引を進めることができます。すべてのコミュニケーションが一つの業者を通じて行われるため、情報の伝達が早くなることもあります。
デメリット:しかし、その一方で、仲介業者が売主と買主の両方を代表するため、どちらかに寄りすぎる取引になるか、どっちつかずの取引になる可能性もあります。

片手仲介のメリットとデメリット

メリット:片手仲介では、一方の売主または買主の利益に特化したサポートが受けられます。売主の場合、業者は買主を見つけ出すために、売主の利益を最大化することに集中します。買主の場合、業者は最適な物件を探し出すために、買主の利益を最大化することに集中します。
デメリット:しかし、片手仲介では、相手方の利益を考慮せず、一方的な交渉が行われる可能性があります。また、売主と買主がそれぞれ異なる代理人を立てる場合、スムーズなコミュニケーションが難しくなることもあります。


これらのメリットとデメリットを理解した上で、自分の状況や要望に最も適した形態を選ぶことが重要です。

仲介業者との付き合い方

不動産会社も営利企業である以上、できれば専任媒介契約を結んでもらい、両手仲介をしたいのが本音です。仲介業者は信頼を置いて頼る一方で、こちらの利益や主張をしっかりと伝えて代弁してもらう必要があります。本記事を読み、前提知識を付けたうえでうまく付き合っていきましょう。

成功する不動産売買のための知識武装と準備

仲介業者と話す前に事前に知識を知っておくと自分の利益や主張をしっかりと伝えられるうえに、仲介業者選びにも役立ちます。特に次の注意点はしっかりと理解して不動産売却をに臨みましょう。

媒介契約の種類と注意点

一般媒介契約
メリット:複数の不動産会社に依頼でき、買主を広く探してもらえる。
注意点:不動産会社が全力で買い手探しをしてくれない、または仕事を受けてくれない可能性もある。専任媒介契約
メリット:自分で買主を探すことができ、信頼できる不動産会社に専任で任せることができる。
注意点:取引を任せる不動産会社が一社に限定されるため、しっかりと決めてから契約し、比較できずに一社にいいように扱われるのは避けましょう。専属専任媒介契約メリット:信頼できる不動産会社に全面的に任せることができる。注意点:他の不動産会社に行けなくなる上に、自分で買い手を探しても、仲介手数料を払わないと契約できないため。依頼する会社や期間をしっかりと決めてから契約することが重要です。
専任媒介契約も専属専任媒介契約3か月間なので、3カ月待てば契約は終わらせて自由に動くことはできます。しかし、3カ月間他の不動産に行けなくなるのは大きな制限です。専任媒介契約をするのは依頼する会社をしっかりと決めてからにしましょう。
おすすめは一般媒介契約で複数社に動いてもらい、その中からよい買い手を探すというものです。しかし、それではしっかりと動いてくれない・そもそも仕事を受けてくれない不動産会社も多いです。不動産会社を比較したうえで、信頼を置ける不動産会社に専任で任せるのもよいでしょう。いきなり専任媒介契約をして、比較できずに1社にいいように扱われるのは避けましょう。

一般媒介契約専任媒介契約専任専任媒介契約
契約できる不動産会社複数の不動産会社に依頼できる1社だけに縛られる1社だけに縛られる
レインズへの登録義務不動産会社の任意契約後7日以内契約後5日以内
活動状況報告報告義務なし2週間以内に1回以上1週間以内に1回以上
売主が自ら発見した買主との売買契約できる契約できる買主も仲介してもらわなければできない
契約有効期間制限なし3か月以内3か月以内

不動産の値段を知ってから行く

不動産の価格設定は専門知識を持ったプロでも難しい作業であり、一般の方にとっては尚更です。したがって、不動産業者の意見を聞いて値段を決めるのが一般的です。一方で、今の時代では基本的な情報を調査することも比較的容易になっています。事前に最低限の情報を知っておくことで不動産業者が提案する価格が適切かどうか自身でも評価することが可能になります。下記のような数字は不動産会社も参考にしています。価格を知るために自分でも調べておきましょう。

・公示価格: 国が公表している土地価格の基準指標です。場所によっては情報が少ないですが、物件価格の参考にしてください。
・路線価: 相続税で不動産を評価するための価格です。国が公表しているもので、信頼性があります。時価の7割を基準に評価されているので、時価を考えるときは70で割って100をかけてみましょう。
・現行の市場価格: SUUMOや楽待・マンション比較サイトなどの不動産情報サイトを利用することで、近隣地域で現在売り出されている物件の価格を確認することができます。
これらの情報を収集し、自身で価格のイメージを持った上で、不動産業者の査定価格とその根拠や意見を聞いてみてください。このような事前調査と業者のアドバイスを組み合わせることで、適正な不動産価格を見つけることができます。

想定される買い手や売り方を考える

不動産取引は物件の個性が大きく出るため、物件の特性や立地条件により、最も適した買い手の層は異なります。
例えば、駅から近い物件は通勤や通学に便利なため、ファミリーや若者に向けた販売が効果的かもしれません。
また、静かな住宅街に位置する物件は、高齢者やリタイアした方々にとって魅力的かもしれません。
建物が建てられる地域の山や畑なら開発業者に売るのが適切でしょう。
具体的なイメージまでは難しいでしょうが、どんな買い手がどのような値段で買ってくれるのかをイメージしておくことも業者選びや交渉の役に立ちます。
物件の特性と市場状況を踏まえて、最も適した買い手と売り方を考えることが重要です。

不動産売買には交渉が付き物です。価格、引き渡し日、修繕範囲など、売主と買主が交渉を行う項目は数多くあります。そのため、交渉の基本を理解し、自分の要求を明確に伝えることも大事なことです。
不動産売買は適切な知識と準備を持って取引をスムーズに進めましょう。

信頼できる仲介業者の見つけ方

不動産売買において仲介業者は大変重要な役割を果たします。仲介業者は売主と買主の間に立ち、交渉を円滑に進める役割を担当します。適切な仲介業者を見つけることは、成功的な不動産取引の鍵となります。以下に、仲介業者探しに関するポイントを説明します。

1. 複数の業者に話を持っていく

初めから1つの業者に決めるのではなく、複数の業者の査定や担当者の対応を見てから業者を決めましょう。これにより、物件の市場価値をより正確に把握することができます。不動産は地域特性のコネクションや知識によって契約が決まることもあります。不動産会社によっては思いもよらない知見や紹介を提供してもらえることもあります 。

2. どんな不動産業者がいいのか

担当者の誠実さと熱意がある

実際に動いてくれるのは担当者であることが多いです。担当者と相性が良ければ売主は安心して売却活動を進められます。口コミやレビューをチェックする、面談で直接対話をするなどして、担当者の人柄や姿勢を確認しましょう。礼儀や誠実さは話していれば出てくるものです。相性のいい営業マンは人によって違います。気持ちのいい取引を進めるためにも自分の直観も大切にしましょう。

業歴が長い

絶対ではありませんが基本的に長くやっているほど、信用が積みあがっていてよい仕事をする会社である傾向は強いです。行歴の長さは不動産会社の免許番号の間にある()内の数字をみればわかります。不動産会社の更新は5年に一度で、()内の数字は更新をした数に1を足した数字ですので、(3)なら15年以上はやっている会社ということになります。

大手か中小か

大手の不動産会社大手の不動産会社は広告が強く、幅広い買い手探しに強いことや、細かい部分の法律順守の意識が強いところも大手の強みではあります。逆に地域の情報に強いわけではありませんので、郊外や田舎地域となると地場の業者のほうが良い買い手を見つけられる可能性があります。地域に根差した不動産会社地域の中小業者は地域の知識やコネクションが強いことが一番の強みです。大手では届かないコネクションで買い手を見つけてくれる可能性もあります。一方で、自分たちの枠内で(悪く言うと都合のいいように)契約を完結させてしまうような場合もあるので、一長一短です。

買い手探しの能力がある

仲介業者の重要な役割の一つは、適切な買い手を見つけることです。買い手を見つけるためのネットワークや戦略、販売の知識と経験は、業者選びの重要な基準となります。どんな広告をしているのか、独特のコネクションがありそうか、専門的な知識をしっかりと持っているか、を意識してみましょう

売却物件に対して専門性をもっている

不動産業者なのだから専門的な知識をもっているのは当たり前と思いますが、必ずしもそうではありません。不動産は範囲が広く、賃貸・売買・更地・マンション・戸建・事業用・居住用など、業者によって得意分野も異なっています。どのような物件や業務を中心に扱っているのか、どんなサポートが受けられそうかを聞いてみるとよいでしょう。


信頼できる仲介業者を見つけることは、不動産売買の成功において大変重要です。仲介業者は売主と買主をつなぐ重要な役割を果たしますので、信頼でき、実績のある業者を選ぶことをお勧めします。また、業者選びは急ぐべきではありません。慎重に業者を比較し、自身の不動産売買に最適なパートナーを見つけることが大切です。

不動産売買の価格設定と契約条件について

大きい金額が動く不動産売買における価格設定と契約条件は、しっかりと納得して決めるべきです。後々のトラブルに巻き込まれないように契約内容や条件をしっかりと理解して進めましょう。この章ではそのなかでも重要なことを挙げていきます。

不動産売買の指値とは

    不動産売買における指値とは、売りだしている値段より低い値段で買わせてくれないかという交渉用の値段を言います。例えば1,000万円の物件に対し、900万円の指値なら買いますよという感じです。一般的には、物件の値段は、交渉により価格は下がることがありますが、基本的には値上がりすることはありません。したがって、売主は適切な値段を設定することが重要で、指値を受けた場合にどうするかを考えておく必要があります。

契約不適合責任とは

契約不適合責任という言葉は難しそうですが、シンプルに説明すると、これは買い手が家や土地などの欠陥を見つけたときの責任を指します。例えば、あなたが家を買った後で、隠れた問題、例えば屋根の漏れやシロアリを見つけた・買った土地に廃材がうまっているといった問題を見つけた場合、基本的にはそれを直す費用は売り手の負担になります。この契約不適合責任は契約書によって、その責任を負う期間はもちろん、まったく責任を負わない契約を結ぶこともできます。契約を結ぶときはしっかりと責任範囲を確認して、理解しましょう。

以上のポイントを念頭に置きつつ、不動産の価格設定と契約条件を決定することで、スムーズで公正な取引を実現することができます。不動産売買は大きな取引ですので、しっかりと知識を持ったうえで、成功させましょう。

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